1958年、21歳で写真の仕事をはじめた立木義浩氏だが、事実上のデビュー作といえば「舌出し天使」。1965年、和田誠の写真構成、寺山修司の詩、草森紳一の解説という錚々たるメンバーで写真雑誌『カメラ毎日』に56ページにわたり掲載された作品。

 ここから立木氏の名は一気に広まり、以来、夏目雅子や大原麗子、勝新太郎、本木雅弘などの俳優やタレント、小説家、政治家などの著名人を数多く撮影。広告やファッション、ポートレートなどの分野で、日本を代表する写真家としての地位を確立する。また、'70年代のはじめには、老若男女に愛された歌番組「夜のヒットスタジオ」に毎週出演。タレントやミュージシャンの撮り下ろしを披露するコーナーがあった。当時、日本で一番有名なカメラマンといえば、立木氏であったにちがいない。

日本を代表する写真家・立木義浩が切り取った世界

©立木義浩
©立木義浩

 いくつもの時代を重ね、活動を続けてきた立木氏の基軸といわれるのが、女優や著名人たちのポートレート。その一方で、立木氏が「抽斗にしまってある大切なもの……」と表現するジャンルがある。それは、日本の町や村、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、さまざまな国と地域で、そこにある日常、光と影を切りとってきたスナップだ。

 そうした活動を象徴するように、会場は、1Fが著名人たちのポートレート、2Fがスナップ、というふたつの世界に分かれて構成されている。展示される写真は、なんと数百点。だが、立木氏にとって、この写真展は60年を超える活動の集大成ではない。ただの通過点だという。

©立木義浩

 最近、「舌出し天使」は写真集にまとめられ、そのモダンな表現が改めて衝撃を与え、再び注目を集めている立木義浩氏。これまでを知る世代はもちろん、雑誌メンズプレシャスの連載でその名前を知ったという人たちにこそ、足を運んでほしいイベント。時代の一瞬を切り取った写真群は、胸に深く残る。

「時代 − 立木義浩 写真展 1959-2019 −」

  • 開催日程:2019年5月23日(木)~6月9日(日)※会期中無休
    開館時間:10:00〜17:00 ※金曜日は20:00まで会館、入場は閉館30分前まで
    開催会場:上野の森美術館
  • 住所:東京都台東区上野公園1-2
  • チケットなどの写真展の詳細は立木義浩写真展ホームページでご確認を
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この記事の執筆者
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。