雑誌『Precious』2010年4月号から7年間にわたって続いた長寿連載「グルメ探偵がゆく」では、名店の名皿を探し続けた「グルメ探偵」たち。

連載終了から早2年、「令和」という新しい時代を迎え、ついに再結集する運びに。すでに厳選された「平成」のアーカイブをさらに厳選。そして「令和」元年の今だからこそ行きたい新店も、もちろん追加で取材。大人が本当に楽しめるレストランだけ、ジャンルごとにご紹介します。

第2回目のジャンルは「鮨」。

そこに名店がある限り、食いしん坊たちの「グルメ道」探求は永遠に続くのです。

使い勝手も素晴らしい! 間違いのない「鮨」の名店

E(ミーハー編集者) 鮨屋のオープンはいろいろ聞きますが、印象深かったのは?

I(レストランジャーナリスト) 2018年10月「アマン東京」が4年かけて青山「武蔵」を口説いて迎え入れたのには驚いたわ。

T(食べすぎ系ライター) 二者の名を冠した鮨店。だから「武蔵 by アマン」ですね。

I 孤高の職人と快適なホテル環境がそろって、コース2万5000円はリーズナブルだと思う。

E ホテルならわかります。でも、もう少しリーズナブルな店が増えてくれるとうれしいです。

I 新宿御苑にできた「西」は、目の前の「匠 達広」の3号店。昼のにぎりは1万2000円。ここは貸し切りもOKなのがいいの。

E 昼に友達と会うとき、自然派ワインとお鮨なんていいですね。

T 子供からお年寄りまで、日本人はやっぱり鮨が好き。だからこそ知っておきたいのが老舗の味。入りやすいところはありますか?

I 私は「㐂(き)寿司」がおすすめ。なにしろ建物に風情が。昨年代替わりしたけれど、基本は変わらない。その仕事をぜひ一度は味わって!

■1:東京のど真ん中にあるラグジュアリーホテルから世界に発信する江戸前鮨の粋「武蔵 by アマン」

左上から反時計回りに/「大イサキ、貝柱、鳥貝、春子鯛、煮白魚、赤貝」。春のおまかせより
左上から反時計回りに/「大イサキ、貝柱、鳥貝、春子鯛、煮白魚、赤貝」。春のおまかせより

「アマン東京」はアマン初の都市型ホテル。その34階に昨年10月、「武蔵 by アマン」がオープン。「本物の江戸前鮨職人を迎えたい」という願いのもと、4年かけてたどり着いたのが武蔵弘幸氏です。武蔵氏は山梨県中央市の実家の鮨屋を12年守った後、「東京で勝負したい」と37歳で上京し、2006年に青山に店を構え、多くの顧客の心をつかんでいる。

その卓越した技術は、ネタとシャリがハラリと口の中でほどける、繊細なにぎりで味わえる。奇をてらうことなく、丁寧な仕事を施した正統派の江戸前鮨は、まさに世界に誇りたいマスターピース。

「武蔵 by アマン」の店内
「武蔵 by アマン」の店内

問い合わせ先

  • 武蔵 by アマン 
  • 営業時間/17:30~21:00(L.O.)
  • 定休日/日曜・祝日
  • 料金/おまかせ¥25,000
  • TEL:03-5224-3339
  • 住所/東京都千代田区大手町1-5-6 大手町タワー アマン東京34F

■2:ヴァン・ナチュールと昼鮨のマリアージュ、新しい試みに挑戦し続ける鮨職人の最新店「西」

左上から反時計回りに/「ヅケ、カスゴ、車海老、穴子、コハダ、真鯛」。昼にぎりより
左上から反時計回りに/「ヅケ、カスゴ、車海老、穴子、コハダ、真鯛」。昼にぎりより

2012年、ここ新宿御苑前にオープンした「匠 達広」は、つまみ10種と、にぎり12種の組み合わせがあれこれ楽しめるとあって、すぐに予約で満席の人気店になった。2017年には、すぐ近くに「鮨ばんど」をオープン。昼5,800円~、夜13,000円というリーズナブルな価格で、本店で腕を磨いた若手職人がにぎる。

そして2019年2月、本店の目の前にできたこちらは「昼にきちんと鮨を食べたいという方や、家族で貸し切りたいという方のためにつくりました」。ワインはヴァン・ナチュール(自然派)をそろえているのも時代のニーズに敏感な西氏ならでは。

「西」の店内
「西」の店内

問い合わせ先

  • 西 
  • 営業時間/12:00~15:00(土日~17:00)、夜は貸し切りのみ営業
  • 定休日/不定休
  • 料金/昼にぎり¥12,000~
  • TEL:03-5925-8225
  • 住所/東京都新宿区新宿1-12-15 東洋ビル1F

■3:4代目に代替わりして、受け継がれる技術と、ゆるぎない老舗のスタイル「㐂(き)寿司」

左上から反時計回りに/「ヒラメ、車海老、穴子、シンコ(コハダの子)、新イカ(スミイカの子)」。夏のおまかせより
左上から反時計回りに/「ヒラメ、車海老、穴子、シンコ(コハダの子)、新イカ(スミイカの子)」。夏のおまかせより

1923(大正12)年創業。江戸前鮨といえば、一番に名前が拳がる名店だ。ここ数年で、急速に変化する人形町のなかで、ひときわ目を引く置屋造りのたたずまいは、すでに築60年。存在そのものが歴史的遺産といえます。店内の壁にはその日に仕込まれたネタが書かれた木札がズラリと並ぶ。この光景に改めてノスタルジーを感じます。

春は煮ハマグリ、赤貝、夏はシンコ、新イカ。ここで季節の移り変わりを学べます。2018年に3代目油井隆一氏が亡くなったが、父の下で20年近く修業してきた長男・一浩氏が4代目を継ぎ、次男・厚二さんとともに味を守っている。

「㐂寿司」の店内
「㐂寿司」の店内

問い合わせ先

  • 㐂寿司
  • 営業時間/11:45~14:30、17:00~21:30
  • 定休日/日曜・祝日
  • 料金/昼にぎり¥3,500、夜おまかせ¥15,750~(税込)
  • TEL:03-3666-1682
  • 住所/東京都中央区日本橋人形町 2-7-13

※掲載した商品は記載のない限り、すべて税抜です。

PHOTO :
田中 雅、馬場敬子、ハリー中西、福地彰子
EDIT&WRITING :
寺尾妙子、遠藤智子(Precious)
監修 :
犬養裕美子
TAGS: