「英国ロイヤルワラント」とは、英国王室御用達の認定証明書のことを指す。世界最大規模を誇る英国王室独自の制度であり、この認定を持つ個人や企業は、約850、商品点数は1000を超える。

英国のクラフツマンシップを守るロイヤルワラント

ロイヤルワラントの認定証にはどのロイヤルワラント授与資格者からの認定かを示す王家の紋章(ロイヤルアームス)、企業名、商品の種類が明記されている。認定証は左からエリザベス女王〝ベリー・ブラザーズ&ラッド〟、チャールズ皇太子〝ターンブル&アッサー〟、エジンバラ公〝ジェームズ ロック〟のもの
ロイヤルワラントの認定証にはどのロイヤルワラント授与資格者からの認定かを示す王家の紋章(ロイヤルアームス)、企業名、商品の種類が明記されている。認定証は左からエリザベス女王ベリー・ブラザーズ&ラッド、チャールズ皇太子ターンブル&アッサー、エジンバラ公ジェームズ ロック。

ロイヤルワラントを授与する資格のある者は、エリザベス女王Ⅱ(Her Majesty The Queen)、エジンバラ公(His Royal Highness The Duke of Edinburgh)、チャールズ皇太子(His Royal Highness The Prince of Wales)の3人。中でもチャールズ皇太子のワラントを受けるには、さらに環境に配慮した企業であることが条項として加えられている。

業種は多岐にわたり、女王の戴冠式の衣装からオートミールのような日常の生活必需品までと、王室の生活を維持する諸事全般に関わる業種が細かく指定されている。純粋に商業に限定され、銀行、政府機関やメディア、宿泊施設等はロイヤルワラントを授与されることはない。

サビルロウの老舗ショップ、ディージ&スキナー。ワラントホルダー同士の交流や王室メンバーとの縁も深い

ワラントを認定されるには王室メンバーからの推薦を受け、最低5年間、一定量の商品を納入していることが申請の条件となる。そして「ロイヤルワラント協会」を通して申請、王室メンバーの最終承認後、ロイヤルワラントホルダーとして認定される。認定後は製品、広告、建物などに「By Appointment」という銘を使用し、規定に基づき王家の紋章(ロイヤルアームス)を表示することが許される。

制度として重要なのがロイヤルワラントは永久ではないことだろう。5年毎に再審査・更新され、ロイヤルワラントを授かった個人及び企業の代表の死亡・倒産、ロイヤルファミリーが実際に使用している商品の口外、商品の品質が基準に満たないなどで、認可取り消しとなる場合もある。実に30前後のワラントが毎年認可取り消しとなっているという。長年にわたりロイヤルワラントを保持していくのは容易なことではなく、その為、ロイヤルワラントは製品のクオリティを物語る、歴史に培われた揺るぎない証ともいえる。

英国にはクラフツマンシップを保護する大規模な制度が無く、英国伝統のクラフツマンシップを現在に至るまで保護する役割を果たしてきたのが「英国ロイヤルワラント」なのである。

※本記事はMEN'S Precious2011年春号掲載時の情報です。

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