古来より肌を白くするという概念はあったものの、厚生労働省のお墨付きの美白コスメが出てきたのは、ここ60年。この短期間での革新的な発展を追っていきます。

1960年〜2019年の日本の美白変遷

【1960年代】「油容性ビタミンC」を有効成分として配合した、初の医薬部外品美白コスメが登場!

1966年に登場した「カネボウ化粧品」の『ソワドレーヌ』
1966年に登場した「カネボウ化粧品」の『ソワドレーヌ』

美白という言葉は、1966年に登場した「カネボウ化粧品」の『ソワドレーヌ』(写真上)という美白パウダーまで遡ります。でも、当時の流行は小麦色に日焼けした肌。まだこのときは、市場が活性化し、広がりを見せるまでにはいたらず、後を追って発売される美白商品はナシ。

【1966年ごろ】小麦色の健康的な肌がトレンド

小麦色に焼けた前田美波里さん。(写真:横須賀功光)
小麦色に焼けた前田美波里さん。(写真:横須賀功光)

資生堂「ビューティケイク」のポスター。「色白が美人」というそれまでの社会通念を覆し、小麦色に焼けた前田美波里さんのビジュアルが当時話題に!

【1970年代】夏は小麦肌、冬は白肌という時代に。美白化粧品がシリーズ化され、人気アイテムに

「アルビオン」から1974年に誕生した『ナチュラルシャイン』
「アルビオン」から1974年に誕生した『ナチュラルシャイン』

小麦色肌ブームはやや落ち着きを見せ、夏は小麦肌、冬は白肌が新たなトレンドとなります。美白の化粧水や乳液なども登場し、シリーズ化が進み、徐々に人気が広まります。シリーズとして初だったのは、「アルビオン」から1974年に誕生した『ナチュラルシャイン』(写真上)。

【1980年】美白=シミのない肌という概念が定着。1983年、「ビタミンC誘導体」が美白有効成分として認可!美白化粧品が続々と登場

「ビタミンC誘導体」という成分自体はその前からあったものの、美白有効成分として認可されたのは1983年。紫外線による肌への悪影響が取り沙汰され、UVカットや美白コスメへの関心が高まった時代。「資生堂」や「ポーラ」などから美白コスメが続々登場します。

【1980年代後半】「コウジ酸」「アルブチン」が相次いで認可され、 第一次美白ブーム、到来!

各社の美白研究が活発化するなか、「コーセー」から1985年に発売された『雪肌精』が大ヒット。また「エスティ ローダー」からは、外資系初となる美白コスメ『スイスホワイトニング』が登場し、本格的な美白時代の幕開けに。

【1990年】「アルブチン」を初配合した『 ホワイテスエッセンス』が「 資生堂」から発売。記録的な売り上げを達成!

アルブチンを配合した「資生堂」の『ホワイテスエッセンス』
アルブチンを配合した「資生堂」の『ホワイテスエッセンス』

'90年代に入ると、確実に色白肌への時代に突入。「資生堂」が長年の歳月をかけて開発した「アルブチン」を配合した美白コスメ『ホワイテスエッセンス』(写真上)が満を持して登場し、大ヒットを記録。美白市場は一気に拡大し、美白ブームに火がつきました。

【1990年代前半】我も我もと新規美白有効成分の開発競争が激化!

アルブチン配合の『ホワイテスエッセンス』の成功により、各社がオリジナルの美白有効成分の開発に勤しみ、その新成分を配合した美容液の発売ラッシュとなります。'90年代前半は美白美容液が主流となり、いつものケアに1品プラスするというスタイルが王道に。

【1990年代後半】国産メーカーだけでなく、外資系メーカーやセルフ系ブランドも美白コスメを導入し、第二次美白ブームが始まる

国産メーカーだけでなく、外資系メーカーやセルフ系の低価格ブランドも美白市場に参入し、一気に市場が拡大し、第二次美白ブームが到来。美容液以外の洗顔料や化粧水なども数多く登場し、手軽に取り入れられる価格帯ということもあり、一躍人気アイテムとなりました。

【2000年代】白肌伝説は継続中!アンチエイジングのニーズが高まり、加齢によるシミやくすみ対応の美白アイテムも増加!

メラノサイトに働きかける「点=シミ」へのアプローチが多かったものの、エイジングによる「面=くすみ」に着目する美白アイテムが登場。美白コスメが細分化され始めたのが、この時代から。

【2004年】「4MSK」など、美白有効成分の認可が相次ぐ。美白マスクやスポッツ美容液などのアイテムが増加

美白コスメは夏に使うものという概念から、通年使うものというトレンドへ。2000年代前半でメラニンの生成に関わる物質やルートが次々と明らかになり、新規成分が続々と誕生。また、アイテムとしても美白美容液だけでなく、マスクやスポッツ美容液など幅広く登場。

【2010年代】白肌ではなく、透明肌がキーワードに

『Precious』2012年4月号(撮影/KEI OGATA)
『Precious』2012年4月号(撮影/KEI OGATA)

『Precious』の表紙を飾っていた小雪さんは、当時の透明肌ランキングにて上位に。時代を象徴する肌の持ち主として憧れの的でした。

【2011年】外資系メーカー初の美白有効成分「TXC( ティーエックスシー)」が承認。全方位型の美白が導入される

欧米では「色白肌願望」がほぼないため、日本主導で繰り広げられてきた美白市場。でも、外資系メーカーの研究所が日本に開設され始め、研究開発が盛んに。外資系メーカーとして初めて、「シャネル」が9年かけて美白有効成分の開発に成功し、「TXC」が誕生します。

【2019年】約10年ぶりに美白有効成分「PCE-DP(ピースディーピー)」が認可!配合のローション&ミルクが誕生

「TXC」の認可以来、約10年ぶりに新規美白有効成分が今年、待望の誕生となりました。メラノサイトにアプローチするのではなく、表皮の細胞が自らの力で守れるように活性化するという、まったく新しい発想のもとに発見された成分。肌全体の調子が上向くと早くも話題に。

いかがでしたでしょうか?昭和、平成、そして令和へと進化し続ける、日本の美白変遷を振り返ってみました。次回は、今おすすめしたい最先端の美白化粧品をピックアップしてご紹介しますので、お楽しみに!

PHOTO :
宗高聡子(静物)
EDIT&WRITING :
長田和歌子、佐藤友貴絵(Precious)
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