LOEWE FOUNDATION(ロエベ財団)が、2016年にスタートし今年で3回目となる「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ2019」の受賞者を、東京・草月会館で発表。見事グランプリに輝いたのは、京都をベースに活動する日本人アーティスト、石塚源太さんの漆を用いた作品でした。
ロエベ ファンデーション クラフト プライズ の意義とは?
クラフトを「人間の自己表現における基本的なこと」と語るのは、LOEWE(ロエベ)のクリエイティブ ディレクターであるジョナサン・アンダーソン。
このプライズが目的とするのは、今日の文化におけるクラフト(工芸)の重要性を認知すること、そして未来の新たなスタンダードを創出する革新的な才能やヴィジョンをもつアーティストを評価することだといいます。
回を重ねるごとに成長しているというこのプライズ。今年は100か国以上から2,500点を超える応募があり、なかでも、日本人の応募者数が過去最多であったといいます。
「今年は始まる前から審査が厳しくなるであろうことを予想していた」とジョナサン。
そんな状況を通り抜け、グランプリを獲得した石塚さんの作品を「彼は、漆という歴史のあるクラフトの知識を使いながら次世代の作品をつくり上げた。漆という技術は何百年も歴史のあるものだが、彼が今回発表した形は、時代を感じさせないタイムレスな作品だった。どの時代に存在していてもおかしくないスタイルだからこそ、素晴らしい」と評価。
「若い世代の人たち求められることを上手く作品に落とし込んでいた」とコメントしました。
「1000年前でも、今でも、1000年後であったとしても、“素晴らしい”と思える」と高評価を得た、石塚源太さんの作品『Surface Tactility #11』
グランプリを獲得した石塚源太氏による作品『Surface Tactility #11』は、袋に入ったオレンジというシンプルなモチーフをスタート地点に、優れた漆使いの技術によって抽象的なフォルムの球体です。
何層にも重ねられた漆の艶が、どことなく官能的で、現代的なアプローチ。7〜8世紀に日本で生まれた技術ということが嘘のようなタイムレスな表現が、高く評価されたといいます。
特別賞を受賞した2作品ともに、抽象的な形が特徴的
■ハリー・モーガンさんの作品『'Untitled' from Dichotomy Series』
重力の法則を逆転させ、完全に反直感的な物体を生み出した、ハリー・モーガンさんの作品。
建築の残虐性とヴェネチアングラス製造の技術を参考にし、ガラス繊維のブロックの上に高密度のコンクリート塊を鎮座させ、独特な世界観を放ちます。対照的なふたつの素材を融合させ、ひとつの形状をつくり上げた発想力が、素材間に強力な関係性を築き上げたと評価されました。
■高樋 一人さんの作品『KADO(Angle)』
自身で栽培している有機物のみを使用した、高樋一人さんの作品。
枝や草などを縫い合わせ、素材の成長や変化に伴って移り変わるフォルムをアートに作品として完成させました。時間の経過とともに色彩など変化を感じさせるこの作品は、「虚無と個体」そして「光と影」を取り巻くアイディアが落とし込まれており、“フォルム”の厳しさが示されています。
ファイナリストに選出された26作品
※アルファベット順
「これまで3回とも応募してくれたクリエイターもいますし、今回受賞できなかった方にも、何度でも再チャレンジしてほしい」とジョナサン。「クラフトには十分なサポートがされておらず、ロエベがそのプラットフォームをつくっていくことが重要」だと、展望を語りました。
すべての物づくりに携わる人が憧れを抱くこの「ロエベ クラフト プライズ」は、可能性を秘めた素晴らしいクリエイターに光を当てるきっかけになることでしょう。
また、今回ファイナリストに選出された29作品は、2019年7月22日(月)まで、東京・草月会館で展示されます。毎週土曜日にはモデレータである川上典子さんと、スペシャル・ゲストによるトークセッションも開催されるので、興味のある方はぜひ訪れてみてください。
イベント詳細
場所/草月会館
期間/2019年6月26日(水)〜7月22日(月)※会期中無休
時間/10:00〜19:00(金曜のみ20:00まで) ※毎週土曜14:00~は、モデレータ川上典子さんと、スペシャル・ゲストによるトークセッションを開催。希望者は時間までに来場を(人数多数の場合は先着順)。
入場料/無料
住所/東京都港区赤坂7-2-21
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- 石原あや乃