美意識が高い人ほど白いシャツのディテールにこだわるのではないだろうか。パリ10区で誕生した白いシャツだけを取り扱うブランド「Bourrienne ParisX(ブリエンヌ パリ・ディス)」は、そんな考えを確信に変える。

実はこのブランド、ただ者ではない。

その真偽を確かめるべく、パリ10区にあるブティックを訪ねた。

男が求める理想の白シャツは「ブリエンヌ パリ・ディス」にある

繁華街のパリ10区にあるブティック。この裏手に邸宅が隠れているとは。
繁華街のパリ10区にあるブティック。この裏手に邸宅が隠れているとは。
手前にはヴィンテージのシャツ、奥にはメンズの「ブリエンヌ パリ・ディス」コレクションが並べられている。
手前にはヴィンテージのシャツ、奥にはメンズの「ブリエンヌ パリ・ディス」コレクションが並べられている。
右手にあるのは2019年からスタートしたウィメンズのコレクション。
右手にあるのは2019年からスタートしたウィメンズのコレクション。

このブランドの誕生のきっかけとなったのは、1787年から1788年にかけて建築された邸宅「 l’Hôtel de Bourrienne(オテル・ド・ブリエンヌ)」だ。オテルといっても、宿泊施設のホテルではなくて“邸宅”という意味。パリの中心地の裏に数百年もの間、豪奢な邸宅が残されているというのは今や奇跡に近い。

ブランド創業者のシャルル・ベグベデは投資家であり実業家でもある。カペー朝を開いたフランス王「ユーグ・カペー」の子孫で、フランス史に登場する名家の多くと親戚というゴージャスな一族の出身だ。弟はベストセラー作家で、夜の帝王としても知られるフレデリック・ベグベデ。

シャルル・ベグベデ氏はオテル・ド・ブリエンヌを購入したことで、インスピレーションが閃き、白いシャツのブランド「ブリエンヌ パリ・ディス」を創設した。デザインのベースとなっているのは、中世、男性が甲冑の下などに着用していた白いシャツだ。ポプリンのコットン、リネン素材を使い、ヴィンテージ・シャツのディテールを取り入れている。コンセプトに彼のロワイヤルな出自が影響を与えているのは想像に難くない。

中世に実際に着られていたヴィンテージのシャツ。ディテールに注目していただきたい。
中世に実際に着られていたヴィンテージのシャツ。ディテールに注目していただきたい。
かつて紳士が身につけたこのヴィンテージのつけ襟も着想源。
かつて紳士が身につけたこのヴィンテージのつけ襟も着想源。
ランゲットというディテールがついたモデルNo.3。ランゲットは前出のヴィンテージのシャツに見られるように、前部についてパンツを固定するものだったが、「ブリエンヌ」では飾りとして袖につけた。
ランゲットというディテールがついたモデルNo.3。ランゲットは前出のヴィンテージのシャツに見られるように、前部についてパンツを固定するものだったが、「ブリエンヌ」では飾りとして袖につけた。
それぞれのモデルごとにナンバーが振られており、シャツにそのナンバーが刺繍されている。
それぞれのモデルごとにナンバーが振られており、シャツにそのナンバーが刺繍されている。
こちらのモデルNo.8は、職人がハンドメイドでプリーツをつくり上げるという。
こちらのモデルNo.8は、職人がハンドメイドでプリーツをつくり上げるという。
お買い上げのシャツは、モデルごとにナンバーが入れられたこの書籍のような白い箱に入れられる。
お買い上げのシャツは、モデルごとにナンバーが入れられたこの書籍のような白い箱に入れられる。
書籍のような白い箱、白い布バッグに入れられるのはスペシャル感があって嬉しい。
書籍のような白い箱、白い布バッグに入れられるのはスペシャル感があって嬉しい。

ブランド創設のきっかけとなった「邸宅 オテル・ド・ブリエンヌ」

築およそ230年の邸宅オテル・ド・ブリエンヌは店の裏にある。

1階は現在修復中で職人たちが一心に作業を行なっている。いずれはイベント会場として貸し出されるそうだ。

2階にはオリヴィエ・ティスキンスが入居しているそうで、訪れた日はちょうど庭に面した一室でミーティングの最中だった。

1922年に出版された本「Les Vieux Hôtels de Paris(パリの古い邸宅)」に掲載されたオテル・ド・ブリエンヌ内部。修復後はこの姿になる。
1922年に出版された本「Les Vieux Hôtels de Paris(パリの古い邸宅)」に掲載されたオテル・ド・ブリエンヌ内部。修復後はこの姿になる。
こちらが邸宅の入り口。
こちらが邸宅の入り口。
修復工事がすでに終わったエントランスに足を踏み入れると、かなりカラフル。当時は本当にこの色に塗られていたそうだ。
修復工事がすでに終わったエントランスに足を踏み入れると、かなりカラフル。当時は本当にこの色に塗られていたそうだ。
ただいま修復の真っ最中。職人たちが黙々と作業に取り組んでいる。
ただいま修復の真っ最中。職人たちが黙々と作業に取り組んでいる。
細かい細工を均一につくり上げていく気が遠くなりそうな作業だ。
細かい細工を均一につくり上げていく気が遠くなりそうな作業だ。
壁の塗料を剥がしてみたら10層もあった。現在はレベル10の状態だが、レベル0の無塗料に戻すという。
壁の塗料を剥がしてみたら10層もあった。現在はレベル10の状態だが、レベル0の無塗料に戻すという。
裏庭から邸宅を見る。奥の部屋でオリヴィエ・ティスキンスがミーティング中。
裏庭から邸宅を見る。奥の部屋でオリヴィエ・ティスキンスがミーティング中。
裏庭に出ると、かつての印刷工場が隣接しているのが見える。これは、オテル・ド・ブリエンヌの元の所有者のひとりで、文豪オノレ・ド・バルザックが創設した印刷所を継承した人物が建てたものだそうだ。
裏庭に出ると、かつての印刷工場が隣接しているのが見える。これは、オテル・ド・ブリエンヌの元の所有者のひとりで、文豪オノレ・ド・バルザックが創設した印刷所を継承した人物が建てたものだそうだ。

邸宅ブリエンヌの修復は2019年9月に終了予定。

シャツを購入したゲストはこの邸宅を見学できる! 誕生秘話を思い出しつつ、訪れてみてはいかがだろう。

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この記事の執筆者
某女性誌編集者を経て2003年に渡仏。東京とパリを行き来しながら、食、旅、デザイン、モード、ビューティなどの広い分野を手掛ける。趣味は料理と健康とワイン。2013年南仏プロヴァンスのシャンブル・ドットのインテリアと暮らし方を取り上げた『憧れのプロヴァンス流インテリアスタイル』(講談社刊)の著者として、2016年から年1回、英語版東京シティガイドブック『Tokyo Now』(igrecca inc.刊)を主幹として上梓。
公式サイト:Tokyo Now