キリスト教徒・イスラム教徒・ユダヤ人の多様な影響により、三つの文化が深く絡み合う社会的かつ歴史的アイデンティティを持つスペインのトレドは、1986年にユネスコにより世界遺産に認定された都市である。

そんな類をみない社会的・建築的・歴史的多様性の集合体である都市の複雑性は、ロエベが理想とするイメージを色濃く反映している。

スペインのトレドにある歴史的場所として有名な「Piedra del Rey Moro」と「サンタ・クルス美術館」が舞台!

ルックブックのイメージの中に現れる白や黄色の奇妙なインフレータブルの物体の持つ抽象的なボリューム感は、自然と人工のセッティングが持つ石の質感を鋭く相殺していて、これらの物体の形状は、サイズ感や奥行きを生み出すことで、壁や岩の景色を再構築しながら、コレクションのアイテムに取り入れられているシルエットやカラーに対するぼんやりとした視覚的繋がりも生み出している。

ロエベが持つ特有のモダンさが、随所にちりばめられているコレクションは、われわれが普段から持っているファッションの感性だけでなく、世界観までも考えさせられる。

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WRITING :
河又雅俊