現在放送中の『連続ドラマW そして、生きる』(WOWOW)は、脚本を『ひよっこ』などで知られる岡田惠和さんが手がけ、有村架純さんと坂口健太郎さんを主演に迎えたヒューマンラブストーリーです。今回は主演のひとり、坂口健太郎さんにインタビュー。ドラマのことから俳優としてのアプローチ法、さらに坂口さんお気に入りのファッションまでたくさん伺いました。

『連続ドラマW そして、生きる』主演の坂口健太郎さんにインタビュー

坂口健太郎さん
坂口健太郎さん

——今回WOWOWのドラマに初めてご出演となりますが、いかがでしたか。

友達や先輩たちからWOWOWドラマはすごく丁寧につくっている、という話を聞いていたこともあったので、僕もやりたいなという思いはありました。

実際出演して思ったのはみなさんすごく寄り添ってくださったということ。監督やスタッフ、架純ちゃんとは何度も共演してますが彼女もそうだし、共演者の方々も。現場はクランクインしてみないとわからないところがあるんですが、とても豊かな環境だったと思います。

作品に対する熱量もみなさんすごく大きかったのも印象的です。宝物のような時間を過ごさせてもらいました。中身の濃い作品になっていると思います。

岡田惠和さんによる脚本の魅力とは?

「連続ドラマW そして、生きる」(WOWOW)
「連続ドラマW そして、生きる」(WOWOW)

——東北と東京を舞台に、過酷な運命に翻弄される瞳子と清隆の人生を描いたヒューマンラブストーリー。坂口さんは有村さん演じる瞳子と恋に落ちる、大学生の清隆を演じます。とはいえ、ふたりの恋と進路が複雑に絡み合ってはそう簡単には進みません。一難去ってまた一難。泣かせ所も多い脚本だと思いますが、岡田さんの脚本はいかがでしたか。

魅力的な本でした。脚本を読んだときに「女性が書いたんじゃないかな」と思うくらい母性を感じたんです。クランクインしたとき、全話があがっていたわけではなかったので、この後、清隆はどうなるんだろうと続きがすごく気になっていました。

それこそ、ドラマは続きが気にならないとダメだと思うんですが(笑)、この作品は清隆だけでなく、架純ちゃんが演じる瞳子やほかのキャラクター全員の「この後」が気になりました。

清隆は僕が送ってきた人生とまったく違うんですが、根本というか、外から見えない所にすごく共感したところはあります。

あと、演じていて難しく感じる箇所もありました。浮き沈みがある人生だから、すべてがスムーズにいく感情ではなく、お芝居をしながら清隆に「もういいんだよ」と言ってあげたくなりましたし、キツかったり悲しかったり。でも喜びもあり、全部を包括して満たされた時間を過ごしていたと思います。 

——そんな清隆というキャラクターはどこをポイントに組み立てていったんですか。

家で台本を読んでいても組み立てている感じはまったくありません。相手がきっとこう来るからこうしてみよう、というようなことはまったく考えてないかもしれないですね。

(ここで岡野真紀子プロデューサーから、坂口さんから月川監督への質問は「とても繊細だった」との証言が。「感覚というよりも考えていらっしゃるんだろうな、という印象でした」)

「連続ドラマW そして、生きる」(WOWOW)
「連続ドラマW そして、生きる」(WOWOW)

——坂口さんは作品に対してどのようなアプローチの仕方をされるのですか。

役に対するアプローチの仕方で影響を受けたのが、2016年のチェーホフの舞台『かもめ』です。

——どんな影響だったのでしょうか。

舞台ではテクニック的な芝居や空間を把握することが必要で、きちんと芝居を自分に落とし込んだほうがいいのかと思っていたのですが、演出家さんは、「まったくそんな必要はない。過去のものは見てもいいし見なくてもいい。舞台でお客様に向かって芝居することもいらない。だって、あなたはお客さんと芝居をしているわけじゃないでしょ。ニーナとの関係性のお芝居だから、こんな近くで大きな声を出す必要もない。声はマイクが拾うから」って。

そして、「あなたが本を読んで(坂口さんが演じた)トレープレフのことを考えて、トレープレフ自身をずっと頭に置いておきなさい」って言われたんです。

役を頭に置いておくことが、俳優としての転機に!

「連続ドラマW そして、生きる」(WOWOW)
「連続ドラマW そして、生きる」(WOWOW)

——「ずっと頭に置く」ですか?

そうなんです。コーヒーを飲んでいるときでもご飯を食べているときでも、友達といるときでも、どこかにトレープレフを置いておく。そうすると、セリフを覚えて舞台に立ってセリフを言うだけで、もうそれは僕なりの、僕がつくったトレープレフだから、何かをしたかったらすればいいし、したくなかったらしなくていいと。

キャラクターのことをただ頭に置いておけ、とだけ言われたんです。それは自分のやり方としてすごく心地よかった。そのとき、役に対してのアプローチの仕方が変わったなと思いました。

——転機になった作品ということですか。

そうかもしれません。と言うのは、やっぱりその舞台はすごく大変だったんですよ。稽古は毎日同じことはしないし、ゲネプロでもガラッと全部変わることもあって。

でもそれは、いろんなことを試したから最終的にこうやって完成するんだよ、という気もしました。それは役をずっと頭に置いておいたからこそできることだと思ったんです。だから、今はなるべく頭の中にキャラクターを置いておくことを心がけています。

1度に3つも4つもキャラクターをやっているときはそれがなかなかできませんが、『そして、生きる』では清隆というひとつの役に集中できるような状態でしたので、清隆を頭の中においておけたんだと思います。

「連続ドラマW そして、生きる」(WOWOW)
「連続ドラマW そして、生きる」(WOWOW)

——このドラマは「生きる」がテーマですが、坂口さんが「生きてるな」と実感するのはどんな時ですか。

普段は正直、考えてないです(笑)。もう当たり前すぎて。考えることもなく毎日が進んでいます。でも、「生きたなぁ」と感じることはあります。今回のドラマもそうです。「清隆を生きたなぁ」という感じはあります。

キャラクターを生きたーー。そう感じるのはシーンでのことなのか、クランクアップしたときなのか、色々なんですけど、「今、もしかしたら(役を)生きられたな」と思う瞬間が確かにある。そういう濃密な瞬間があると幸せですね。

——定番質問なんですが、坂口さんが最近購入したプレシャスな物とか、プレシャスな体験などはありますか。

うーん。最近でいうとこの作品しかないですね。すごい宣伝みたいになっちゃうんですけど(笑)。

洋服であれば、最近は今回のロケでフィリピンへ行ったんですが、行く前に空港で「東京」って書いてあるTシャツを買ったくらいです。面白いかなと思って買ったんですけど、着ませんでした(笑)。

「連続ドラマW そして、生きる」(WOWOW)
「連続ドラマW そして、生きる」(WOWOW)

——でも、坂口さんは元々モデルさんですし、ファションにこだわりがありそうですが。

こだわりと言えば、脱ぎ着しやすい服。モデルが長かったからか、ラフな格好しかしなくなっちゃいました。スーツやタキシードも着ないです。ドレスアップなんてないですね。小洒落た場所にもサンダルで行っちゃいますから(笑)。ただ、服はなんでもいいわけではなく、自分の感覚にフィットしたものが好きです。

——この夏に向けてのスタイルは?

Tシャツ(笑)。あ、でも色はこだわりがあるかもしれません。フィリピンのロケでも思いましたが、暑い国に行くとみんないろんな色を着ているんです。以前、台湾に行ったときにそれを感じて見ているだけで楽しかったんですよね。僕もこの夏はいろんな色を着て、楽しい気分になりたいと思います。


一つひとつの質問に丁寧に答えてくれただけでなく、過去の作品などにも話を広げてくれた坂口さん。いかに『そして、生きる』に全力投球だったかが言葉の端々に表れていました。好青年だった彼のお陰で、その日1日ハッピーな気持ちで過ごせたことを告白しておきます!

坂口健太郎さん
俳優
(さかぐち けんたろう)1991年7月11日生まれ、東京都出身。2010年、『MEN'S NON-NO』のモデルに合格。モデル活動をスタート。14年、映画『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』で俳優デビュー。15年『コウノドリ』で連続ドラマ初出演。17年、映画『ナラタージュ』で有村架純さんと共演。映画『64-ロクヨン-前編/後編』で第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。同年第41回エランドール賞・新人賞を受賞。18年『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジ系)でドラマ初主演。そのほか、『連続テレビ小説 とと姉ちゃん』(NHK)、『東京タラレバ娘』(日テレ系)、『イノセンス 冤罪弁護士』(日テレ系)、映画『今夜、ロマンス劇場で』『人形の眠る家』など出演作多数。
WOWOW「連続ドラマW そして、生きる」
8月4日から毎週日曜夜10時(全6話)放送中 ※8月11日(日・祝)午前8時より第一話リピート放送
東日本大震災後の2011年、被災地のボランティアで出会った瞳子と清隆を主人公に、過酷な運命に翻弄されながらも生きるふたりの人生を描くヒューマンラブストーリー。
出演:有村架純、坂口健太郎、知英、岡山天音、萩原聖人、光石 研、南 果歩ほか 監督:月川 翔 脚本:岡田惠和 音楽:村松崇継 
この記事の執筆者
生命保険会社のOLから編集者を経て、1995年からフリーランスライターに。映画をはじめ、芸能記事や人物インタビューを中心に執筆活動を行う。ミーハー視点で俳優記事を執筆することも多い。最近いちばんの興味は健康&美容。自身を実験台に体にイイコト試験中。主な媒体に『AERA』『週刊朝日』『朝日新聞』など。著書に『バラバの妻として』『佐川萌え』ほか。 好きなもの:温泉、銭湯、ルッコラ、トマト、イチゴ、桃、シャンパン、日本酒、豆腐、京都、聖書、アロマオイル、マッサージ、睡眠、クラシックバレエ、夏目漱石『門』、花見、チーズケーキ、『ゴッドファーザー』、『ギルバート・グレイプ』、海、田園風景、手紙、万年筆、カード、ぽち袋、鍛えられた筋肉