今年の夏、伝統的なスポットで繰り広げられる優雅なアートイルミネーションを鑑賞しに行きませんか?

目黒区にあるラグジュアリーホテル、ホテル雅叙園東京では、2019年9月1日(日)まで、館内にある東京都指定有形文化財「百段階段」で、『和のあかり×百段階段2019』を開催しています。

百段階段の各部屋に展示されるのは、あかり職人などによる多数の作家による、美しいアートイルミネーション作品たち。

その作品を手がけた、竹あかり作家・NITTAKEさんと錆和紙作家・伊藤咲穂さんに、今回の作品へのこだわりやポイントなどをうかがいました。

「和のあかり×百段階段2019」とは?

東京都指定有形文化財「百段階段」で行われている「和のあかり展」

「和のあかり展」は、累計来場者31万人を越える夏の人気企画。第5回目となる今年も、東京都指定有形文化財「百段階段」で開催されます。

「百段階段」とは、ホテル雅叙園東京の前身である「目黒雅叙園3号館」の通称で、1935(昭和10)年に建てられた木造建築のこと。7部屋が99段の長い階段廊下でつながれています。各部屋の天井や欄間(らんかん)には、当時屈指の著名な画家達がつくり上げた美の世界が描かれています。

あかり職人など多数の作家による、美しいアートイルミネーション

和のあかり展は、この百段階段の各部屋に空間インスタレーションや工芸品、提灯(ちょうちん)などのアート作品が夏のイルミネーションとして、きらびやかに展示される場。

空間インスタレーションや工芸品、提灯(ちょうちん)などのアート作品

そのなかでも今年初登場となる宮崎県日南市在住の竹あかり作家・NITTAKEさんによる幻想的な空間インスタレーションや、錆和紙作家の伊藤咲穂さんによる「錆和紙」を用いたアート作品は、特に注目を集めています。

そこで今回は、特別にふたりの作家の方にインタビューをしました。

竹あかり作家 NITTAKEさん

竹あかり作家・NITTAKEさんの「十畝の間」に施された作品は、今回の展示の目玉。

「都会の中に生まれたオアシス~夏の涼しさ~」をテーマとし、清涼感のあるBGMの流れる暗い部屋に、竹細工が一面に広がっています。その精巧なすき間からもれる光の美しさは、圧倒されるほど。

——特にこだわったところをお教えください。

NITTAKEさん「都会のオアシスをどう表現しようかと、まず柄や配置をかなり考えました。そして、部屋とのマッチを一番こだわりました」

——夏のイルミネーションは、冬のイルミネーションと比べて、どのような要素が必要だと思われますか?

NITTAKEさん「“柄”で見せるというのが一番多いので、夏だと今回のように金魚などを入れています。冬は和柄を用いることが多く、例えば“麻の葉”で雪の結晶のような感じに表現したりしています」

「十畝の間」

——竹という材質は、アートの造形物としては扱いやすいのですか?

NITTAKEさん「竹は扱いにくいです。今回の展示では、竹を四角の板にしていますが、竹は曲線なので四角にするために曲がってるところを切り落として全部くっつけるなど、とても作業が大変です。

そのままにしているとカビや虫がわいてくるので、下処理が必要ですし、3年間乾燥させるなど、いろんな段階を踏んで完成するので、管理も大変です」

——NITTAKEさんの作品を鑑賞する際に、お客さんに何を感じてもらいたいか教えてください。

NITTAKEさん「竹は、地方に行けば行くほど環境問題になっていますので、ちょっとでも興味をもってもらいたいです。作品としては、全体的に綺麗なアートだと感じていただければうれしいです」

錆和紙作家 伊藤咲穂さん

「錆和紙(さびわし)」

続いては、「錆和紙(さびわし)」という、和紙を手漉きする際に、金属の鉱物を混ぜ酸化反応させた和紙をはじめ、楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)、麻といった植物や、金属の錆について研究し、さまざまな作品を制作している伊藤咲穂さんにお話をうかがいました。

今回の展示でも、独特の世界観をもつ錆和紙の展示が、あかりと共に展開されました。

——特にこだわったところをお教えください。

伊藤さん「以前、日本橋コレドで開催された“東京キモノショー”に作品を出したときに観てくれた方から、『もっと暗い空間でやった方が合うんじゃないか』と言われて、このような古い建物の中で後ろから光を照らすというのをずっとやってみたかったんです。

ちょうど今回、出展されていた照明作家の弦間さんに協力してもらいました。弦間さんの工房を訪れた際に気に入った“太陽光に近いあかり”を使わせてもらったので、そこが一番のこだわりです」

——夏のイルミネーションは、冬のイルミネーションと比べて、どのような要素が必要だと思われますか?

伊藤さん「夏は体感的に暑いので、静けさとか冷やっとした感じを出せたらいいなぁと思いました」

伊藤咲穂さん

——伊藤さんは、幼少期の体験を基に、「錆和紙」をはじめとした、錆を研究したそうですが、幼少期のご体験とはどのようなことだったのでしょうか?

伊藤さん「子どものころ、季節が変わると葉っぱが紅葉して枯れて、バラバラに分解されて朽ちていく現象を見て、すごく興奮しました。老いるとか、死んでいくとか、朽ちていくという、その高揚感がずっと心の中にあり、これが自分の中の世界だとわかりました。

そこから美大に進学し、いろんなことをやっていくうちに和紙と出合い、素材の美しさに胸を打たれ、研究を続けました。たまたま、金属を入れたらどうなるかな? とやってみたときに、自分の当時の記憶にカチッと合った表現ができるようになり、錆びていく和紙をつくっていくようになりました」

——普段から、地元島根県や国産の原料を扱うことに重きを置いて制作しているそうですが、今回はどのような原料を使われているのですか?

伊藤さん「地元島根県は『石州和紙』が有名で、ユネスコの無形文化遺産に登録されています。歴史が古いというのもありますが、地域で原料の『コウゾ』を育て、和紙をつくっているというのが登録の理由のひとつであり、今回の和紙はそのコウゾをいただいてつくっています。

また、砂鉄も使っています。島根県は“たたら製鉄”という日本刀をつくるときに使う玉鋼づくりも盛んです。島根の日本海側はその原料の砂鉄がたくさん取れるんです。

自分の作品には、『土から生まれたものを土に返す』というのが重要で、どこかの国でつくられたものを使うのではなく、そこで生まれたものをそこで消化するというアートを目指しています」

——今回の伊藤さんの作品を鑑賞する際に、お客さんに何を感じてもらいたいか教えてください。

伊藤さん「静けさを感じてもらいです。空を見たりとか、月を見たりするときって黙ってしまうじゃないですか、そういう感覚にもなってほしいです。また、闇のなかに吸い込まれていくような感覚を味わっていただければと思います。自然界の狂気みたいな恐れみたいなものも感じてもらえたら」


「アートイルミネーション 和のあかり×百段階段2019~こころの色彩」は2019年9月1日(日)まで、と夏いっぱい開催されます。この夏にしかお目にかかれない、貴重な作家たちが手がけた作品群を、ぜひ堪能しましょう。

Information

『アートイルミネーション 和のあかり×百段階段2019~こころの色彩~』
日時/2019年7月6日(土)~9月1日(日)
場所/ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」

NITTAKEさん
竹あかり作家
(にったけ)周囲の樹木の健全な生育を阻害する環境問題である「放置竹林」を、デザイン、アートで解決しながら、竹で出来るエンターティメントの可能性を広げていく活動をしている。イベントやブライダルの空間演出、インテリアデザインを得意とする。宮崎県の日南市で、竹あかり、竹灯籠の空間プロデュース、ワークショップを行っている吉田周平さんがアートディレクターを務める。公式サイト
伊藤 咲穂さん
錆和紙作家
(いとう さくほ)幼少期の体験を基に研究の末、独自の漉き方で漉いた紙(手漉きする際に、金属の鉱物を混ぜ酸化反応させた)「錆和紙(さびわし)」をはじめ、楮や三椏、雁皮、麻、金属の錆について研究し、地元島根県や国産の原料を扱うことに重きを置いて制作している。公式サイト

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この記事の執筆者
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WRITING :
石原亜香利