リーダーの若返りは、政治の世界でも顕著だ。ましてやジェンダーレス、LGBTQが叫ばれる現代では、世界中に、若くて、時流を体現するような個性的なリーダーたちが、続々と登場している。

個性派リーダーが世の中を変える時代に。政界の若返りが話題

移民、同性愛者、授乳中の子育てママ、そして、国会議員であっても驚いてしまうぐらい、とびきり若い一国の大統領など、ダイバーシティーの流れを映し出すように、多彩な指導者たちがヨーロッパを中心に、目につく。

最近では、若手といわれる44歳のカナダのトルドー首相などを飛び越して、フランスのエマニュエル・マクロンは39歳で大統領に就任。さらに最年少では、30歳で就任したオーストリアのセバスチャン・クルツ(現在32歳)という、とびきりフレッシュな大統領が誕生している。

女性のトップも台頭著しい。ニュージーランド首相のジャシンダ・アーダーンは37歳。産休もとった。国連総会に生まれたばかりの娘を同行し、国連に乳幼児を連れてきた初のケースになった。「前例にない」という扉が、次々に開いているのだ。

女性の政界進出も!ついに41歳の美人首相が誕生

41歳で首相に就任した、メッテ・フレデリクセン
41歳で首相に就任した、メッテ・フレデリクセン

そして今年2019年のホットニュースは、何と言ってもデンマーク王国。社会民主党が政権を奪還し、デンマーク史上最も若い首相メッテ・フレデリクセン、41歳が誕生した。女性党首としては二人目。政権も、新閣僚20人のうち7人が女性となった。

若いリーダーが活躍するヨーロッパだが、今や世界共通の課題となっている、移民問題など難問が山積みである。世界の優等生であった北欧の福祉国家にも、ほころびが見え始めた。

メッテの当選は、激動の今の時代に、ジャンヌ・ダルクのような圧倒的な、国民的ヒロインが求められているという証しなのかもしれない。

時の人、デンマーク首相メッテ・フレデリクセンって?

スタンダードを凛々しく着こなすメッテ
スタンダードを凛々しく着こなすメッテ

メッテ・フレデリクセンは大学卒業後、デンマークの労働組合の連合組織でコンサルタントとして働いた後、24歳で政界に入った。201-年代前半に雇用相を務め、その後、野党に転落、今年6月に政権復帰を果たした。

勝利に導いた党首メッテについて、まだ語られることは少ない。若く魅力的な容姿とはいえ、質実剛健な国ゆえ、個人のセレブリティー的な情報より、差し迫った問題の解決能力に期待が大きいからだ。

一見地味にも見えるリクルートスーツのような装い
一見地味にも見えるリクルートスーツのような装い

そんな状況を織り込んだように、メッテのファッションは、シンプルで年齢の割に地味に見える。だが、まるでリクルートスーツのような、定番感の強い簡素なスタイルは、実はデンマーク国民が最も愛する国民的ファッションなのだ。このメジャーで一般的と言って良い装いで、民衆に溶け込み、選挙戦を勝ち取った。

では、デンマークの愛されファッションとは、一体どういうものだろうか?

美人首相の勝負服は?「黒」「スキニーパンツ」をこよなく愛す、デンマーク人

国家カラーともいえる「黒」色
国家カラーともいえる「黒」色

まず何と言っても「黒」がベースカラーである。「デンマーク人になるためには」という面白いサイトがあるが、そこにも「黒以外の服は全部燃やせ」とあるほど、黒の着用率が高いのが特徴。

そして、北欧らしく無造作な金髪のヘアスタイル、なぜかロングヘアーは、まとめるか、お団子ヘアにするのが、一般的らしい。ちなみに。メッテはブルネットだが、ヘアはほとんどはアップにまとめている。

スキニーパンツで颯爽と現れるメッテ
スキニーパンツで颯爽と現れるメッテ

また、ルーズな、つまりラッパー風の服装などは論外で、きちんと常に装っている。そのせいか、ボトムは常にスキニー、骨格の整った長い足に似合うのはスキニーなボトムで、間違ってもファッション関係者以外では、ふわふわのマキシスカートなどは出番がないようだ。

そんなユーモア混じりの典型的デンマークファッションを鑑みると、まさにメッテは、直球のデンマークスタイルだ。

メッテの勝負カラーは「赤」!?

「赤」×「黒」というハイコントラストを巧みに操る
「赤」×「黒」というハイコントラストを巧みに操る

とはいえ、国民の印象に残る重要な戦略も忘れてはいない。メッテが勝負服として選んだのは「赤」と「黒」をシンプルに着こなした、ハイコントラストの組み合わせである。

赤のゆったりしたシャツに、黒のパンツを合わせるのが、基本スタイル。彼女のキーカラーらしく、投票に臨んだときにも、黒のパンツスーツに赤のインナーを着て、さりげなく自分らしさを際立たせていた。

フレッシュに映る「テーラードジャケット」も鍵

初々しさを感じさせる「テーラードジャケット」も勝利の秘密!?
初々しさを感じさせる「テーラードジャケット」も勝利の秘密!?

また、年配の女性政治家が好むノーカラージャケットではなく、公式の席では、テーラードジャケットを着ることが多いのも、若々しく好感が持てる。ドイツのメルケル首相とベルリンで会談した際にも、メルメル首相の白いノーカラージャケットに黒いパンツに対して、白いシャツを合わせた黒のほっそりしたテーラードパンツスーツ姿で、若さと清新さを漂わせていた。

この黒のテーラードパンツスーツもお気に入りの定番のようで、エンジニアブーツを合わせ、カジュアルにも着こなす姿が見られる。

渋い配色のプリントやピンク、オリーブイエローのカラージャケットなども、愛用しているが、それらが、時として野暮ったく映るほど、メッテのイメージをつくっているのは、無地の黒をベースに赤と白を効かせたシンプルで、普遍的なスタイルだ。

北欧的な簡潔さと、実利性、清潔感に絞った着こなしは、新たな時代の指導者にふさわしい虚飾のない、爽やかなクリーンさを伝えてくる。

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この記事の執筆者
1987年、国際羊毛事務局婦人服ディレクターとしてジャパンウールコレクションをプロデュース。退任後パリ、ミラノ、ロンドン、マドリードなど世界のコレクションを取材開始。朝日、毎日、日経など新聞でコレクション情報を掲載。女性誌にもソーシャライツやブランドストーリーなどを連載。2000年より情報用語辞典『イミダス』でファッション分野を執筆。毎シーズン2回開催するコレクショントレンドセミナーは、日本最大の来場者数を誇る。好きなもの:ワンピースドレス、タイトスカート、映画『男と女』のアナーク・エーメ、映画『ワイルドバンチ』のウォーレン・オーツ、村上春樹、須賀敦子、山田詠美、トム・フォード、沢木耕太郎の映画評論、アーネスト・ヘミングウエイの『エデンの園』、フランソワーズ ・サガン、キース・リチャーズ、ミウッチャ・プラダ、シャンパン、ワインは“ジンファンデル”、福島屋、自転車、海沿いの家、犬、パリ、ロンドンのウェイトローズ(スーパー)
PHOTO :
AFLO
WRITING :
藤岡篤子
EDIT :
石原あや乃