必要は発明の母と言われるが、ルネ・ラコステの慧眼がなかったら、紳士の夏スタイルの情景はまったく違ったものになっていただろう。
言うまでもないことであるが、ルネ・ラコステはファッションデザイナーではない。彼はプロのテニス選手、しかもグランドスラムやデビスカップでフランスに栄光をもたらした一流のテニス選手だ。「テニスプレーヤーの体を動きやすくするにはどうすればいいのだろうか?」
常々こう考えていたルネ・ラコステはベテランのポロ競技の選手、ロード・チャムレーが着ていたユニフォームを見て閃いた。当時、男性のテニス選手たちはフランネルのパンツに長そでの布帛シャツのそでをロールアップして試合に臨んでいた。ルネ・ラコステはその長そでシャツのそでを試合には不向きだと切り落とし、布帛をニット素材に変えた。この素材は、コットン100%で、汗の発散に優れ、吸湿性が高く、伸縮性があるので動きやすかった。さらにデザインをプルオーバー式にして、ネックに3つのボタンを付け、快適さと洗練を兼ね備えた半そでの襟付きシャツが完成する。1933年のことだ。これがすべてのポロシャツの原型となる。
競技者目線からの閃きが名品ポロシャツを生んだ!
1933年当時のモデルをよみがえらせた『復刻ポロ』
彼がデザインしたポロシャツの品番は『L.12.12』。「L」はルネの頭文字。「1」は独自の素材を示し、「2」は半そでを意味する。次の「12」は、ルネ・ラコステが最終的に選んだサンプルの番号を表し、これが品番に採用された。左胸には彼のニックネームであったワニが刺しゅうされる。余談になるが、1923年、ボストンでのデビスカップ予選時に、ルネ・ラコステはワニ革のトランクを見付けた。「試合に買ったらそのワニのスーツケースを買ってあげよう」と話すキャプテンの言葉から彼にはワニのニックネームが付けられ、のちにそのロゴマークを、友人のロベール・ジョルジュがデザインした。「エレガンスには、その時々に応じた環境や状況に合わせた服が必要である」
永遠のスタンダード『L.12.12』
ポロシャツについてルネ・ラコステはこう語るが、ポロシャツはテニスコートで活躍しただけでなく、デザインの汎用性から、街着としても多くの人に着られるようになる。驚くことに『L.12.12』のポロシャツは姿をほとんど変えず、今も生産され、その人気も健在だ。
足すところも引くところもない「用の美」とも言えるデザイン。〝ラコステ〞のポロシャツには、フランスのエレガンスが宿っている。
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- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2018年春号より
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- クレジット :
- 撮影/唐澤光也(パイルドライバー) スタイリスト/櫻井賢之