いよいよ猛暑到来。ビールやシャンパーニュもいいが、日本の夏に似合うのは、きりっと冷えた日本酒だろう。口当たりのよい日本酒は一般に甘みを感じることが多いが、冷やすことによってストイックな酸味や仕込み水の繊細なトーンまでも味わえる。

銘柄、温度と同様に重要なのが、酒器選びである。数ある日本酒から、今夜飲むひとつの銘柄を選ぶのと同じように、どの盃で飲もうかと酒器選びを楽しむことも、夏の涼を取る重要なセレモニーだ。それゆえ、酒器選びにこだわる酒飲みも多い。さまざまな地方や時代のもの、作家が手がけた一点もの、姿かたちはもちろん、景色(釉薬によって醸し出される表情)を見所とするなど、嗜好は人それぞれ。ともかく、きりっと冷えた冷酒をおいしく飲みたい夏の夜は、まずは知識を脇に置き、気分のままに、器を手にしたい。

冷やした日本酒は温度の違いによる呼び名がある

 5℃前後は「雪冷え」、10℃前後は「花冷え」と、なんともロマンティック。そんな冷酒を美しく頂くためにも、佇まいのいい酒器をそろえたい。手応えのある土もののぐい吞み、すっとした表情の白磁の平盃、ツヤやかな漆器の盃。いろいろな材質の酒器で楽しまれている日本酒。

 本来、日本酒は地酒なのだから、その土地で生まれ、そこに暮らす人々の手に馴染んだ器で飲まれていたはず。

 どんな材質の酒器でも、しっくりと合うのは、当然といえるだろう。
 逆に言えば、数ある日本酒から、今夜飲むひとつの銘柄を選ぶのと同じように、どの盃で飲もうかと、酒器選びをも楽しめるというわけだ。その楽しみに心酔するように、酒器選びにこだわる酒飲みも多い。

  さまざまな地方や時代のもの、作家が手がけた一点もの、姿かたちはもちろん、景色(釉薬によって醸し出される表情)を見所とするなど、嗜好は人それぞれ。ともかく、きりっと冷えた冷酒をおいしく飲みたい夏の夜は、まずは知識を脇に置き、気分のままに、器を手にしたい。

1.クリストフルの『コロール』

シルバーウエアの代名詞として名高い、クリストフルから選んだのは、シンプルなフォルムのタンブラー。さりげなく入った縦のラインのデザインが、冷酒の清々しさと共鳴しあうような清楚な表情を醸し出す。
口径約70㎜×高さ約65㎜ ¥20,000
クリストフル 青山本店 TEL:03-3499-5031

2.SUSgalleryの『タイタネス タンブラーショットライムグリーン』

純チタン製のショットタンブラー。真空二重構造により高い保温、保冷力を発揮するため、キリキリに冷やした冷酒の染み入るような冷たさも、ゆっくり楽しむことができる。
口径51㎜×高さ65㎜ ¥22,000
SUSgallery ​TEL:03-5579-9261

3.清課堂の『錫足付きぐいのみ(丸鎚目)』

日本酒愛好家のファンも多い京都の老舗清課堂の錫の酒器。大きさも、重さもほどよく、手にしっくりと馴染むこのぐい吞みは、表面を金槌でこつこつと叩いて模様をつけた丸鎚目仕上げ。手仕事の技がさえた逸品だ。
口径55㎜×高さ45㎜ ¥5,000
清課堂 ​TEL:075-231-3661

4.鎚起銅器の『足付きぐい吞み 亀甲文』

江戸中期から伝わる「鎚起」という製法でつくられた銅の器。銅の一枚板を金槌で叩いて整形し、表面の鎚目を生かして着色を施すという技だ。銅の色合いと奥行きのある趣に、冷酒の味わいとともに感じ入りたい。
口径65㎜×高さ50㎜ ¥16,000
ジカバー・ニッポン TEL:03-5413-0658

5.宮本商行の『富士山ぐい吞(古美)』

富士山をモチーフにした純銀製の酒器。鍛金、岩石打、槌目打、古美仕上げなど様々な伝統の技を駆使して、裾野から雪を被った山頂まで、表情に富んだ山肌が描かれている。逆さにして棚にしまい、富士山を眺めるのも乙なもの。
口径90㎜×高さ82㎜ ¥49,000
宮本商行 TEL:03-3538-3511

オーラのある酒器を冷酒で満たす至福のとき

 金、銀、錫。金属をつかった器は、熱伝導率が高い材質の特徴から、冷えた冷酒を満たした器を手にした瞬間に、さらに、唇に触れたときに伝わる快感につながる。

一方、透明感と清廉な輝きをもつガラスの器は、何より見た目のクールさに心惹かれる。厚手で重みのあるグラスなら、冷酒の温度と旨みのクールさも長めに保つことができそうだ。そして、ここに選んだ10点の酒器から、オーラを感じないだろうか。それが、職人の手で磨き出された素材がもつ美と質の力なのだ。

 では、イメージしてみよう。強烈な日射しに照らされた、暑い夏の日。ここにそろえたのは、そんな一日の終わりに冷酒を注ぎたいメタルとガラスの酒器たちだ。
 冷酒は、見て、触れて、器に満ちた日本酒の香りを、味わいを、のど越しを、と五感のすべてで楽しみたい。  「猛暑も悪くはない」

 佇まいのいい深盃に氷をくぐらせた冷酒を注ぐとき、きっとそう感じるだろう。

6.松徳硝子の『BLACK/Shot』

繊細な薄さが特徴の「うすはり」に代表される松徳硝子のラインナップに、こんなクールな酒器がある。漆黒と見紛うほど真っ黒なグラス。手にしたときのほどよい重みは、なぜか落ち着いた気分にもなる。辛口を開ける夜に似合いそうだ。
口径52㎜×高さ55㎜ ¥15,000
松徳硝子 ​TEL:03-3625-3511

7.木村硝子店の『MITATE ショットグラス』

なんとも立ち姿の美しいグラス。口の周りの、斜めのカットのシャープさと、厚手のグラスの重量感がバランスよく融合。花びらのような模様はサンドと呼ばれるすりガラスのような表面処理がされ、涼しさをさそう。
口径55㎜×高さ65㎜ ¥25,000
リビング・モティーフ ​TEL:03-3587-2784

8.木村硝子店の『es-3-R 2ozショット(サンド)』

ウイスキー用のショットグラスだが、ぐい吞みとしても好まれるデザイン。穏やかなかたちで、素直に冷酒が飲みたくなる、清涼感にあふれる。木村硝子店は、割烹やレストラン、バーなど、プロの世界で高い信頼を博すメーカーだ。
口径56㎜×高さ61㎜ ¥5,800
木村硝子店 ​TEL:03-3834-1781

9.バカラの『タリランド ショットグラス』

1937年に誕生し、現在も形を変えることなく愛され続ける『タリランド』シリーズから選んだショットグラス。大胆かつ繊細なデザイン。微かに広がる口元のフォルムが、冷酒の香り立ちと口当たりの楽しみを高めてくれる。
口径52㎜×高さ57㎜ ¥17,500
バカラショップ 丸の内 TEL:03-5223-8868

10.鳥羽漆芸の『うるし和紙グラス(ミニ)金銀シリーズ(金黒)』

グラスの底のほうに敷くように、和紙、金箔を重ねて貼り、その上から「金剛石目塗」という砂を用いる独自の技法による漆塗りを重ねた仕上げ。冷酒を注いだら口元に運ぶ前に、器の中を覗き込み、その和の世界を楽しみたい。
口径57㎜×高さ61㎜ ¥4,000
ジカバー・ニッポン TEL:03-5413-0658

いかがだろう、この夏を乗り切る、あなたに最適な酒器は見つかったろうか? たかがうつわ、と侮る事なかれ。花冷え、雪冷えなどの、酒の温度に関する風流な言葉と同様、酒器が違うだけでも酒飲みの風流は大きく違ってくるもの。 あなたに最適な酒器を見つけ、猛暑を冷酒で乗り切っていただきたい。

※価格はすべて税抜です。※価格はすべて2016年夏号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
掘 けいこ ライター
BY :
MEN'S Precious2016年夏号「佇まいのよい「冷酒」を飲ろう」より
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。
クレジット :
撮影/小寺浩之(ノーチラス) 構成・文/堀けいこ