北部イタリアの構築的な仕立てと、師匠から学んだ南部カラブリアの、華やかな裁縫技術を駆使して、次世代のスーツを創造する。
ヘビークロスが生む新たな洒脱感|Sartoria Pasinato
「『サルトリア・パシナート』は新発見だった。地方都市ヴィチェンツァの小さなテーラーで、今回のプロジェクト以前にはまったく知らなかった。私の経験では、老舗は経験を積んだ熟練の職人が多く、ほとんど大きな失敗を犯すことはない。新しいテーラーを試すときはいつも慎重になる。今回も仮縫いの間に最も重要な部分、ラペル幅、第2ボタンのポイント、ジャケットの長さの調整が必要だった。初めてなら当然のことで、最終的に彼の技術には感心した」
英国調のヘビークロスでつくるモダンなイタリアンカジュアル
クロンプトン氏が指摘するようにゴージは非常に高く、ジャケットは短め、よりモダンなテイストを目ざしている。胸のキャンバスは北部らしく3つの中では最も構築的だが、ショルダーはカラブリア出身の師匠譲りのスパラ・カミーチャ。
イタリアの北と南の仕立てがミックスしているのが彼の持ち味だ。選んだのは今回最も重量のある、『カバート・クロス』(440g)だ。
「小規模のミルと比べ、最大手メーカーの一角を成すVBCには多くの生地のバラエティがある。『カバート』のような英国調のヘビークロスも得意だ。カジュアルな素材のため通常はスーツに使用しないが、あえて注文した。カバート・ツイルは緊密に織られているため丈夫で強い。独特のオリーブカラーも気に入っている。結果として、新鮮な表情のスーツになった」
同じナポリ仕立てでも「チャルディ」は「英国的視点で捉えたナポリタン・スーツ」、「パニコ」は「ナポリ的視点で捉えたイングリッシュ・スーツ」となった。この対極のアプローチを楽しめるのが、ビスポークの真骨頂なのだ。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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- クレジット :
- 撮影/Jamie Ferguson 構成・文/長谷川喜美