世界のビスポークを知り尽くした男、サイモン・クロンプトン氏による独創的なファブリックを使用したイタリアンスーツとは?

英国が体現するサルトリア・イタリアーナ

サイモン・クロンプトン氏/メンズファッションジャーナリスト。世界で最も影響力があると言われるブログ『パーマネント・スタイル』を主宰。メンズウエアに関する著作も多く、ブランドコンサルティングも行う。
サイモン・クロンプトン氏/メンズファッションジャーナリスト。世界で最も影響力があると言われるブログ『パーマネント・スタイル』を主宰。メンズウエアに関する著作も多く、ブランドコンサルティングも行う。

紳士なら誰もが憧れる最古のジェントルメンズ・クラブ

撮影を行ったのは、1819年創設の「トラベラーズ・クラブ」はロンドンのクラブ街パルマルに現存する最古のジェントルメンズ・クラブ。大使や外交官御用達のクラブとして名高い。1832年の建築はイタリアの影響を受けた最初のクラブハウスだ。www.thetravellersclub.org.uk
撮影を行ったのは、1819年創設の「トラベラーズ・クラブ」はロンドンのクラブ街パルマルに現存する最古のジェントルメンズ・クラブ。大使や外交官御用達のクラブとして名高い。1832年の建築はイタリアの影響を受けた最初のクラブハウスだ。www.thetravellersclub.org.uk

ビスポークの原点を追求!英国と異なる美意識との交流

創業1663年、イタリア最古のミル「ヴィターレ・バルベリス・カノニコ」(以下VBC)。同社によるイタリアのウール産業とサルト文化を継承するプロジェクトとして、書籍『サルトリア・イタリアーナ』(長谷川喜美著)が、3か国語(日・伊・英)で発刊された。同時に進められたのが、サイモン・クロンプトン氏による3スーツ、3ファブリックのプロジェクトだ。

サルトリア・ナポレターナを代表する巨匠アントニオ・パニコ。名門「ロンドンハウス」のヘッドカッターを経て、ナポリ仕立ての黄金時代を築きあげた生ける伝説。www.sartoriapanico.it
サルトリア・ナポレターナを代表する巨匠アントニオ・パニコ。名門「ロンドンハウス」のヘッドカッターを経て、ナポリ仕立ての黄金時代を築きあげた生ける伝説。www.sartoriapanico.it
正統なナポリ仕立ての継承者と謳われた父レナート・チャルディの跡を受け継ぎ、熟練の職人ヴィンチェンツォ(写真上)とロベルト兄弟によって経営。www.sartoriaciardi.com
正統なナポリ仕立ての継承者と謳われた父レナート・チャルディの跡を受け継ぎ、熟練の職人ヴィンチェンツォ(写真上)とロベルト兄弟によって経営。www.sartoriaciardi.com
北部イタリアのヴィチェンツァで自身の店を営むマッシモ・パシナート。30年近い経験を持ち、カットから縫製までひとりでこなすマスターテーラー。www.pasinato.it
北部イタリアのヴィチェンツァで自身の店を営むマッシモ・パシナート。30年近い経験を持ち、カットから縫製までひとりでこなすマスターテーラー。www.pasinato.it

書籍掲載の新旧3テーラーに、クロンプトン氏が選んだVBCのファブリックを使用し、スーツ製作を依頼。仮縫い2回、製作期間約1年を経て完成した3着のスーツを、英国の美学を象徴する、ロンドンの「トラベラーズ・クラブ」で撮影。

英国人のクロンプトン氏はイタリアのスーツとファブリックの魅力をどう捉えるのか? まず、英国とイタリアではテーラーのスタイルに違いがあるという。

「イタリアではひとりのサルト(カッター)が経営する小規模な店が多く、ハウススタイルは彼のスタイルそのものとなる。対して英国はテーラーの規模が大きく、カッターが何人も在籍している。個々のスタイルよりそのテーラーの伝統的なスタイルを継承している店が多い。そこに優劣はないが、言語の違いによる意思の疎通の問題を除けば、ひとりの人間と信頼関係を築くのはイタリアのほうが容易だろう」

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クレジット :
撮影/Jamie Ferguson 構成・文/長谷川喜美