『MARQ(マーク)』は5つのフィールドに対応したモデルをそろえるが、この「マーク アドベンチャラー」は、世界の高峰を目指すクライマー向けに開発されたタイプ。手元で地形マップや、リアルタイムの傾斜データを確認できるだけではなく、コースアウトを防ぐABCナビゲーションセンサーや、ツートーンのコンパスベゼルが搭載されている。

タイミングよく、実機の到着から数日後に、三重県と奈良県の県境にまたがる名峰・大台ケ原山で山歩きを予定していたので、この「マーク エクスペディション」を相棒に、実践で使用感や性能をテストしてみることにした。

スマホでは代わりにならない!GPSウォッチだからこそのアドバンテージを実感

キーを押すだけで詳細なマップとルートが画面に

液晶画面は高解像で、表示された地図が鮮明に表示された。ルートも正確で、安心感を与えてくれる。
液晶画面は高解像で、表示された地図が鮮明に表示された。ルートも正確で、安心感を与えてくれる。

因みに、大台ケ原山吉野熊野国立公園にあり標高は1695m。山全体が特別天然記念物に指定され、深田久弥の日本百名山にも選ばれている。エリアは日出ヶ岳や大蛇 グラの景勝地がありハイキングとしても楽しめる東大台と、入山手続きの必要な原生林が広がる西大台の2つに分かれているが、今回は東大台へ。日帰りできる3コースから、今回は景色を漫喫しながらのんびり山歩きのできる、東大台のAコース(初級)を選択した。

大台が原山頂ビジターセンターを起点に、大台ケ原最高峰の日出ケ岳の山頂へと登り、尾鷲辻を経由して景勝スポットである大蛇グラへ。一旦、尾鷲辻まで戻り、別ルートを使って下山するコースだ。所要時間は3時間程度.。標高差があまりないため、比較的楽なルートといえるだろう。

当日はスタート地点となるビジターセンターからコースインする直前に「マーク アドベンチャラー」のアクティビティで「登山」を選択し、まずはGPS受信を開始。GPS情報を受信すると、即座に大台ケ原の地形図がダウンロードされ、画面に主要なルートも表示されるのは新鮮な驚き。今までは事前にPC経由で地図をダウンロードしていたが、手のかかる段取りがこれでひとつ省けることになる。 

ビジターセンターから歩くこと約30分で日出ヶ岳の頂上に到着。高度はちょうど1695m。現在までの総上昇量と総下降量も表示されている。表示はカスタマイズできるので、必要な情報にすぐアクセスすることも可能だ。
ビジターセンターから歩くこと約30分で日出ヶ岳の頂上に到着。高度はちょうど1695m。現在までの総上昇量と総下降量も表示されている。表示はカスタマイズできるので、必要な情報にすぐアクセスすることも可能だ。

見やすい画面とリアルな山域地図に感心しながら、入山と同時にスタートキーを押して計測を始めた。日頃からガーミンを愛用し、心拍計や万歩計などの機能を使っているので操作に戸惑うことはない。山道を進みながら、平時とは違う体力の消耗具合を確認できるので、自分自身のペースをキープするのには非常に役立った。

日出ヶ岳頂上の展望台からは秘境といわれる日出ヶ岳の山々が一望のもと、天気がいいと大峯連山や熊野灘まで見渡せる。
日出ヶ岳頂上の展望台からは秘境といわれる日出ヶ岳の山々が一望のもと、天気がいいと大峯連山や熊野灘まで見渡せる。
日出ヶ岳と尾鷲辻の間にある正木ヶ原の立ち枯れの天然木。大台ヶ原特有の風景である。  
日出ヶ岳と尾鷲辻の間にある正木ヶ原の立ち枯れの天然木。大台ヶ原特有の風景である。  

 GPSのルートファインディングは正確で、ルート上のどのあたりに自分が位置しているのかを常に把握できるのは心強い。「東大台ヶ原自然観察路」が整備されている大台ケ原山は初心者でも歩きやすく、決して難しい山ではないが、ルートファインディングの技量が求められる山域などでは、進むべき方向を判断する助けになってくれることは間違いない。

高度計で気圧の変化を検出することによって上昇と下降を検知。1時間あたりの昇降速度も表示される。今回のコースは250m。比較的緩やかだったことがわかる。
高度計で気圧の変化を検出することによって上昇と下降を検知。1時間あたりの昇降速度も表示される。今回のコースは250m。比較的緩やかだったことがわかる。
緯度/経度を表示。アウトドアに必要なナビゲーション情報がひと通り本体に内蔵されている。
緯度/経度を表示。アウトドアに必要なナビゲーション情報がひと通り本体に内蔵されている。
山歩きのすべてのデータはアプリで管理できる。
山歩きのすべてのデータはアプリで管理できる。

瞬時にさまざまな情報を把握できるのはウォッチの強み

各種数値の確認も行ったが、実際の山行中には、これらの数値を切り替えながら確認するということはあまりないだろう。それでも気圧と高度計は数値とバーグラフで表示されるので視認性は高く、キーが時計の周囲にしかないので、動作が1パターンで済むなどの利便性も実感できた実感。

ただ、なんといっても素晴らしいのは、山歩きで最も恩恵を受けられるGPSマップだ。現在ではスマホアプリでも同じことができるので、ハイキングに使える平易なコースでは時折、スマホでルートファインディングする姿を目にするが、平地でも危険な歩きスマホは、どんなにイージーに見える山道でも断じて行うべきではない。GPSウォッチの真価は、スマホのように画面を注視することなく、必要最小限の情報を把握できることにあると痛感した。

ガーミン「マーク アドベンチャラー」

サイズ:46×14.2mm・87g ¥250,000 税抜き

パケッタレザーストラップのクラシックな着用感に惚れる

最後になったが、高級時計としてのガーミンもなかなかどうしてよくできているというのが率直な感想。サイズのわりに軽量で終始着け心地は快適だった。年月を経ると美しさを増すというイタリア製バケッタレザー(なめし革)のストラップの仕上がりも絶妙で、クラシックな着用感は1日で虜に。

最先端のハイテク機能を凝縮していながら、登山中にここまで腕なじみがいいのは、かつてない経験であった。唯一気になったのがウォッチのフェイスデザイン。PCを使ってさまざまな表情に変更できるが、ガジェット系ばかりで「MARQ(マーク)らしいプレミアムなタイプがないのは残念だった。 MARQ(マーク)にふさわしい、クラシックでリッチなウオッチフェイスを幅広く選べるようになると、さらにもつ喜びが増していくと考える。

わずか1日だったが、「マーク アドベンチャラー」との山歩きを経て、これからつきあいが長くなる、そんな予感めいたものを覚えた。

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この記事の執筆者
主にモノ雑誌を中心に’80年代から活動するライター。トレンド製品や斬新な着想から生まれたガジェット全般の執筆に取り組む一方で、腕時計やバッグ、シューズといった、男の逸品をテーマにした記事も手がけている。