日本人の暮らしに寄り添ってきた歴史を持つ大麻布。一時は幻とまで言われた、この素材の復活に尽力したファブリック・ブランドが麻世妙だ。大麻布が、日本らしさを表現する生地になる日は近いかもしれない!
日本の文化が世界から注目される昨今、国際交流の場で日本を感じる物を身につけたいけれど、表現には悩むところだ。そんなときは、思い切ってスーツやジャケットの生地に日本らしさを忍ばせるのもひとつの方法であろう。
麻世妙は古代より日本人の生活に欠かせない存在だった大麻布を、現代によみがえらせたファブリック・ブランドである。大麻は日本の気候風土に適した植物として群生し、古くは縄文時代の遺跡からも、大麻製の生地や縄が出土している。後に聖なる草として崇められると、神具や祭礼にも多く用いられてきた。
現代によみがえった、幻の麻生地、麻世妙<majotae>
だが、大麻は麻酔性を持つことから、第二次大戦後にGHQの指導で栽培が制限されると、大麻布も幻の存在となった。
オーダースーツで、大麻布の真価に触れる
近年、大麻布を復刻させようとの、熱心な取り組みから大麻の品種改良が進み、薬理作用を持たない品種ができて使用が認めらた。大麻布は、ここに奇跡の復活を遂げたのである。
麻世妙が使う大麻布は吸水速乾性に優れ、使い込むほどにやわらかくなり、味わいを増す。なおかつ、綿や亜麻より引っ張る力が強い繊維は衣服の胴やそでが持つ筒形にハリを与え、肌との空間を広く保つことができる。そのため、上着のすそやそで口から入る風が、空冷効果を高めるなど、その着心地はまるで、中毒性を持つかのような快感なのだ。
鮮やかさを抑えた紺色も日本らしさを感じる要素だ。19世紀末、日本の浮世絵や陶器はパリでジャポニスムブームを巻き起こした。なかでも、渋い色調の紺はヒロシゲ・ブルーと呼ばれて賞賛され、画家たちが競って取り入れた。そんな色を思わせる麻世妙の生地は、日本人に馴染みながら洋服のアイテムともよく合う。遠くから見ると控えめながら、近くで見ると日本らしさが感じられ、懐刀のような存在感がある。
ジャパン・プレミアムを表現する服装のひとつとして、麻世妙のスーツを選んでみてはいかがだろう。
※価格は税抜です。※2016年夏号掲載時の情報です。
- TEXT :
- 織田城司 ライター
- BY :
- MEN'S Precious2016年夏号「麻」名品の猛き風格より
- クレジット :
- 撮影/戸田嘉昭・小池紀行(パイルドライバー/静物) スタイリスト/石川英治(tablerockstudio) 文/織田城司