2024年から新しい一万円札の肖像を飾る渋沢栄一は、幕臣だった。慶応3年(1867年)、27歳にして十五代将軍・徳川慶喜の命を受け、パリ万国博覧会に向う使節団の一員となった渋沢は、明日の日本を見据え、西欧列強の文化を吸収することも考えていた。

日本初の帽子ブランド、トーキョーハット

渋沢栄一が愛したボーラーを復刻

100%ラビットファーを使いつくり上げた復刻版。堅牢なクラウンやブリムに威厳が漂う。ブリムの縁にグログラン素材を巧みに折り返した仕様に、本物の職人技が潜む。¥58,000(オーロラ〈トーキョーハット〉)
100%ラビットファーを使いつくり上げた復刻版。堅牢なクラウンやブリムに威厳が漂う。ブリムの縁にグログラン素材を巧みに折り返した仕様に、本物の職人技が潜む。¥58,000(オーロラ〈トーキョーハット〉)

見たことのない最先端の技術や製品などが展示されたパリ万国博覧会に続いて、大政奉還にともない、明治政府から帰国命令が下されるまでのおよそ2年間で、ドイツ、イギリス、オランダ、イタリアなどを訪れ見聞を広めた。

渋沢が設立に携わった企業や団体は、500社を超えると言われている。大蔵官僚を辞職した渋沢は、日本初の株式会社による民間銀行、第一国立銀行(現みずほ銀行)の設立に着手。

そのほか、東京海上火災保険、王子製紙、秩父セメント、帝国ホテル、麒麟麦酒など、多様な企業の設立に関わった。

そして、日本人の洋装化が進むなか、明治25年(1892年)に日本初の製帽会社となる、東京帽子株式会社を創業。資本金は、3万6000円。トーキョーハットを名乗り、日本における「帽子文化」がはじまった。

実は、日本で初めての製帽会社と言いながらも、東京帽子株式会社には前身がある。明治22年(1889年)、東京府小石川村氷川下(現在の文京区氷川下)に渋沢らの出資で、日本製帽会社が設立されていた。海外から技術者を呼び寄せ帽子製造が始まったが、不運にも火災に見舞われ解散。

渋沢が帽子づくりの会社をはじめたという意味では、もうひとつの記念すべき年であり、トーキョーハットはこの年から数え、今年130周年を迎える。

『プレミアムライン』の代表格!ビーバー・ミンクの逸品!

トーキョーハットの帽子で、オリジナルのフォルムとして受け継がれてきた名作のティアドロップ。クラウンの上部が、雫形に成形されたクラシックなスタイルである。なめらかなビーバーと、上品な光沢を備えたミンクをミックスした極上素材は、まさに絶品である。¥100,000(オーロラ〈トーキョーハット〉)
トーキョーハットの帽子で、オリジナルのフォルムとして受け継がれてきた名作のティアドロップ。クラウンの上部が、雫形に成形されたクラシックなスタイルである。なめらかなビーバーと、上品な光沢を備えたミンクをミックスした極上素材は、まさに絶品である。¥100,000(オーロラ〈トーキョーハット〉)

トーキョーハットは、先の東京オリンピックで日本選手の公式ユニフォームとして帽子を手がけるほど、日本を代表する帽子ブランドに成長した。現在まで、絶え間なく帽子をつくり続けてきたが、この130周年を機に、新たに『プレミアムライン』を投入。『プレミアムライン』とは、上質な素材を厳選した、日本人の頭にフィットする品格ある帽子である。

昭和初期のサマーフェルトの歴史を刻む、パンチング仕様

丸められるほどやわらかく、持ち運びも便利なビーバー100%の素材を使った、欧米型の中折れ帽。昭和の頃に愛されたサマーフェルトを受け継ぎ、現代的にアレンジした繊細なパンチング仕様が洒落た雰囲気である。リボンはイタリア製のグログラン素材だ。¥65,000(オーロラ〈トーキョーハット〉)
丸められるほどやわらかく、持ち運びも便利なビーバー100%の素材を使った、欧米型の中折れ帽。昭和の頃に愛されたサマーフェルトを受け継ぎ、現代的にアレンジした繊細なパンチング仕様が洒落た雰囲気である。リボンはイタリア製のグログラン素材だ。¥65,000(オーロラ〈トーキョーハット〉)

デザインの秘密がくぼみに隠された、日本型の名品

クラウントップのくぼみに、頭が帽子に触れても被りやすいようにふくらみをデザイン。日本の帽子づくりにおける伝統の仕様をよみがえらせた。素材はビーバー100%。フランスの名門〝ジュリアンフォール〟のリボンを使用。グレージュの色合いが軽快だ。¥68,000(オーロラ〈トーキョーハット〉)
クラウントップのくぼみに、頭が帽子に触れても被りやすいようにふくらみをデザイン。日本の帽子づくりにおける伝統の仕様をよみがえらせた。素材はビーバー100%。フランスの名門ジュリアンフォールのリボンを使用。グレージュの色合いが軽快だ。¥68,000(オーロラ〈トーキョーハット〉)

渋沢は、数多の企業の設立に関与したが、服飾の製品をつくる企業は、東京帽子株式会社のみ。遡ればフランスに旅立つ頃、まだ髷があった渋沢は、かの地で髷を落とし、重厚なシルクハットやボーラーを被るようになった。帽子は、紳士のスタイルを格上げする装飾品だと感じたに違いない。

※掲載した商品の価格は、すべて税抜きです。

この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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PHOTO :
小池紀行(パイルドライバー)
EDIT :
矢部克已(UFFIZI MEDIA)