「英国靴=真面目」なんて、過去の話だ
世界有数の靴産業の集積地、ノーザンプトンを擁する英国は、紳士靴マーケットに長年にわたり影響を与え続けてきた。クラークスのデザートブーツやドクターマーチンなど若者たちのファッションアイコンとなった靴、または高級既製靴の一大潮流の端緒となったチャーチやエドワード グリーンなどのブランド。この地域では今なお多彩な靴の担い手たちが現役で靴づくりを行っている。
2015年より、パウラ・ジェルバーゼをクリエイティブディレクターに迎え、ブランドの新章をスタートしたジョン ロブは、その最右翼の存在といえるだろう。ブランド創始者の故郷・コーンウォールを実際に歩き、風土からインスパイアされたコレクションを生み出すパウラ。その靴は、ジョン ロブのヘリテージと、現代的なシンプリシティを併せ持ち、新しい高級既製靴のスタイルを提示している。
John Lobb ジョン ロブ
Manolo Blahnik マノロ ブラニク
一方、英国の靴には、シューズデザインの魅力という側面もある。それはこれまで、メンズというよりむしろウィメンズシューズで発揮されてきた。その担い手の筆頭に挙げられるのが、スペイン出身のシューズデザイナー、マノロ・ブラニクだろう。長く尖ったセクシーなスティレットヒールに、美しい装飾を組み合わせたパンプスは、今なお多くの女性たちを魅了している。そのマノロ ブラニクのメンズシューズはオーセンティックなスタイルにウィメンズ譲りの、色やシルエットに関するエレガントなアプローチが盛り込まれている。それは英国的な靴の美しさを踏まえたモード、ともいえるだろう。
これらの靴から感じられることは、伝統を継承しながらも今日の要請に果敢に挑むダイナミズムだ。そしてその姿勢こそが、英国靴の隆盛を生み出してきた原動力なのだろう。
- TEXT :
- 菅原幸裕 編集者
- BY :
- MEN’S Precious2016年秋号 紳士の心を昂ぶらせる「英国名品」のすべてより
- クレジット :
- 撮影/戸田嘉昭・唐澤光也・小池紀行(パイルドライバー) スタイリスト/武内雅英(code) 文/菅原幸裕