普段、仕事や人付き合いに欠かせないメール。きちんとした大人のメールのやりとりができることは、良好な人間関係はもちろん、ビジネスにおいても必要不可欠ですよね。
「自分はちゃんとできてる!」と思っていても、実は意外と読みにくいメールや、相手を不快にさせるメール行動をしてしまっていることも…。
そこで今回は、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんに、相手が“読みたくなる”メールの書き方の基本を、著書『気くばりメールはじめました!』をもとに教えていただきます。
メールの失敗&悩みの処方箋!メールの書き方の基本10個
よくあるメールの失敗とお悩みをもとに、メールの書き方の基本を教えていただきましょう。
■1:一行は「30文字まで」で改行する
【悩み】文章が長くて読みにくいと言われたことがあるんです…。
西出さん:1行はできるだけ30文字に収め、長すぎないようにすると読みやすくなりますよ。また段落のブロック単位で1行空けて改行すると、さらに読みやすいメールになります。1ブロック当たり2~3行にすると視認性が高くなります。長くても5~6行までにしましょう。
■2:記号や罫線を活用する
【悩み】打ち合わせの日時などをメール連絡するときに、情報が多すぎて整理がつかなくなってしまいます。
西出さん:日時などの連絡事項は、記号などを使って箇条書きにし、罫線で区切りを付けると読みやすくなります。もし情報量が多すぎると感じたら、ワードなどのファイルにまとめて記載し、添付するようにしましょう。
例)
次回のお打ち合わせの詳細をご連絡いたします。
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◆日時:〇月〇日(〇)10:00~12:00
◆場所:弊社〇〇会議室
◆参加者:(貴社)齊藤様、横田様 (弊社)吉田、西川
◆議題
1.~~~~について
2.~~~~について
3.~~~~について
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■3:できれば「1往復半」で終わらせる
【悩み】メールで打ち合わせなどの日時を決めるのが苦手! 何度もメールをやりとりして、時間がかかって仕方がないんです。
西出さん:ひとつの用件に何往復ものメールのやり取りをするのは時間の無駄です。理想は「1往復半」で終わらせること。それは打ち合わせの日時を調整するときも同様です。こちらから日程の候補を3つ以上記載し、相手からの1回の返信で日時を確定させるのを目指しましょう。
もし相手から打ち合わせの打診があったら、早速その返信メールで候補日時をいくつか提案するようにします。すると相手から「この日時でお願いします」と返信が来て、短いやり取りで完結させられるでしょう。
■4:返信の期限は原則「24時間以内」
【悩み】仕事の期日はまだなので、それまでメールを放っておいたら、先方から電話がかかってきてメールが届いているか、とても心配されてしまいました。期日に間に合うように対応しようとしていたのに…。
西出さん:すぐに返信できないときに、連絡をしないまま放置するのはビジネスマナー違反。最低限のマナーとして、メールを受信したことだけでも伝えるようにしましょう。心配されるだけでなく、「この人(=この会社)は信頼できない」と思われることもあります。
ビジネスメールの返信期限は、基本的に24時間以内が原則です。ビジネスでは対応が早いほど印象がよくなることは間違いありませんし、取引も早く進み、よい結果を得られることも多くあります。内容によっては検討の必要があるなど、すぐに返信できないこともあるでしょう。
その場合も確かに受信したことを伝え、すぐに対応ができないため、後日改めて返信することを記載すればこちらの誠意も伝わります。通常時も、いつまでに回答の返信ができるのかを伝えるといいでしょう。
■5:「Re:」の引用返信は1回まで
【悩み】メールを返信するときのタイトルにいつも困ります。件名を変えるとメールを相手が追えなくなってしまいますし、かといって「Re:」を連発するのもちょっと…。
西出さん:それは迷いどころですね。「相手にわかりやすく」というマナーの観点からすれば、件名を変えずに「Re:~」としてそのまま送信してよいでしょう。さらに相手が書いた件名に必要事項を書き加えるとマナーのある件名となります。例えば、件名の最後に社名と名前を書き加えたり、「Re:御礼/~」というように「御礼」を追加したりすればこちらの誠意が伝わります。
また自動的に「Re: Re: Re:」と何度も「Re:」が追加される環境には注意が必要。肝心の件名の文字が見えなくなってしまうので「Re:」をひとつだけ残して、あとは削除しましょう。
■6:冒頭は必ず「挨拶」から始める
【悩み】社内メールで「お疲れ様です。〇〇です。」といちいち打つのが面倒なのですが、省略してはいけませんか?
西出さん:メールは単に用件を伝えるだけのツールではなく、コミュニケーションツールでもあります。社外の方には、お会いしたら「おはようございます」「いつも大変お世話になっております」の挨拶が必須のように、メールでも「いつも(大変)お世話になっております。」という挨拶からはじめます。挨拶文はシチュエーションによって使い分けましょう。
社内メールについても、基本的に挨拶から始めたいものです。「本日の会議は10時からです」といきなり用件から始まるメールと、「おはようございます。本日の会議は10時からです」と挨拶から始まるメール、あなたならどちらのメールに好感を持ちますか? 「お疲れさまです」のひと言を添えるだけで、心遣いが伝わりますよ。
■7:必要に応じて「前置き」で目的を伝える
【悩み】上司から、「君のメールは何が言いたいのかわからない」と言われたことがあります。しっかり説明したのですが…。確かに長文だったと思います。
西出さん:メールがどうしても長文になってしまう場合には、別途ファイルに記載してメールに添付する方法もありますが、ここではメール本文に記載する場合についてご紹介します。本題に入る前に、メールの目的や理由を「前置き」として伝えるといいです。いきなり本題から入ってしまうと、相手は「このメールを送ってきた目的」を探ろうとし、誤解も生じかねません。例えば、
・〇〇のお問い合わせの件につき、ご説明いたします。
・〇〇の新規プロジェクトについて、いくつかご提案がございます。
・先ほどご報告した〇〇の件で、補足説明をいたします。
のように、相手にわかりやすく用件を伝え、相手に理解してもらえるようにしましょう。前置きの文は1文でまとめるようにしましょう。
■8:「1メール1用件」はビジネスにおける基本
【悩み】「1メール1用件」というルールをよく耳にしますが、ひとつのメールでまとめて用件を書いたほうが効率的ではないですか?
西出さん:「1メール1用件」はビジネスのメールにおける原則です。確かに1メールで複数の用件をまとめたほうが効率的に感じますが、複数の用件を入れると、相手が読み落としてしまったり、混同してしまったりする可能性が高くなります。
また、のちに確認したいときなど、別の用件がどのメールに書かれていたのかわからなくなってしまうことはありませんか? それは相手も同じこと。まったく関係のない用件であれば、混乱やトラブル回避のためにも、別メールにしましょう。
もし別メールにするほどの情報ではない場合は、「追伸」を使うこともできます。ただし、目上の方に「追伸」を使用しないでください。失礼に当たります。
もちろん、それぞれが簡潔に2、3行程度におさまる内容であれば、1メールに複数入れるほうが、相手にとっても都合がよい場合もありますから、そのときの状況に応じて、相手のことを慮(おもんぱか)ったときにどちらが親切なのかを考えて行動しましょう。
どうしてもひとつのメールに2件以上記載したほうが効率的という場合には、書き方に配慮を。用件ごとに印と見出しを付け、件名でも用件が複数あることがわかるように書くと、丁寧で親切な印象になります。
例)
早速ですが、以下の2点についてご連絡いたします。
1.打ち合わせの件
・・・・・
2.パンフレットの件
・・・・・
■9:結びの言葉は「相手に寄り添った言葉」で好印象を残す
【悩み】メールの最後の言葉、いつも迷ってしまいます。どんな言葉を添えればいいのでしょうか?
西出さん:ビジネスメールの本文の最後には挨拶が欠かせませんよね。用件を簡潔に伝えることが大切なビジネスメールですが、最低限「よろしくお願いします」といった結びの言葉がないと、人間味が感じられず、冷たい印象を相手に与えてしまいます。
コツは、相手を思いやる言葉を添えること。「季節の変わり目、ご自愛ください」「お風邪など召されませぬように」などの言葉が添えられていると、相手は心配りを感じて嬉しくなります。最後の1文だからこそ印象に残りやすいんですよ。
忙しい相手には、「お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願い申し上げます」とクッション言葉を添えてもいいですね。選ぶ言葉は、先方との関係性や時期に合わせて、連休前なら「どうぞよい連休をお過ごしください」など、適切な締の言葉でよい印象を与えられるようにしましょう。
■10:「!」は目上の人には使わない
【悩み】ビジネスメールで「!」は使ってはいけないのですか? やる気を相手に伝えられると思うのですが…。
西出さん:やる気があるのはよいですが、目上の相手に対しては、敬意を感じられない、上から目線などのマイナスな印象を与えかねません。ひとつでも使用しないのをおすすめします。また、目上の相手でなくとも、ビジネスメールでは「!」には注意が必要です。信頼関係が築けている相手や、普段から親交のある相手であればよい場合もありますが、相手によっては軽率なイメージを抱かれてしまう可能性もあります。
また「!」は語気を強める力があるため、フランクな相手に使うときも使い方には注意が必要です。もし記号を使って親近感を出したいなら、「♪」マークのほうがやわらかい印象になります。ただし使用する場合は、慎重に使用してくださいね。もちろん、「♪」も目上の方にはNGです。
メールの書き方の基本を教えていただきました。読みながら、「えっ、そうだったの?」と知らなかったこともあったかもしれません。基本って、本当に大事ですね。特にビジネスメールは、ビジネスの成功と自分の信頼にもかかわる重要なコミュニケーション手段。
基本をしっかりと押さえたうえで、ケースバイケースに応じて、対応していけることが大人のメール術といえそうです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 石原亜香利
- EDIT :
- 安念美和子、榊原淳