MASQ マスク L.O.2:00
優美なクリスタルグラスで飲むシェリー

 高級な食前酒として世界的に知られるシェリーは、ワインのカテゴリーのひとつで、故郷はスペインのヘレス。英国人は、この異国の名酒に早くから目をつけ、海賊の手を経て自国で大流行させるに至る。シェイクスピアも描いたシェリーの魅力は奥深い。

 スペイン南部、アンダルシア地方のへレス周辺で栽培される白葡萄からつくられるワインをベースに、腐敗を防ぐために蒸溜したブランデーを加える。こうしてつくられた酒がシェリー。そもそもは、長期にわたる航海で飲むことのできる、長持ちするワインをつくろうとしたことが、その始まりと言われる。

 ヘレスのほど近くに、紀元前から大西洋に面する天然の良港として知られたカディスの港がある。カディス港は15世紀に入ると、「太陽の沈まぬ国」と言われるほどに勢力を誇ったスペインの貿易港として、繁栄を謳歌した歴史をもつ。

 1587年、イギリスを守った海の英雄と言われるキャプテン・ドレークのもとにいた海賊が、私掠船を率いてカディス港を襲撃。その際、3千もの酒樽を強奪したのだが、その酒樽に詰まっていたのがシェリーだった。

 そのシェリーがロンドンに持ち帰られるとエリザベス一世の宮廷で流行。名酒としての座を確立したのは17世紀中期頃と言われる。しかし、どうやら英国人は、すでにその前からシェリーに目をつけていたようで、シェイクスピアの史劇「ヘンリー四世」には、フォルスタッフが長弁舌をふるう台詞にシェリー酒が登場する。

「……これも銘酒シェリーの功徳ってのァ、総身の血がカッカと熱りだす……」。ヘンリー四世の統治時代、英国でシェリーが注目されていた事実が、偉大なる劇作家のペンによって永遠に残されている。

バーカウンターの奥の棚には酒のボトルが1本もなく、タンブラー、ワイングラス、リキュールグラスなど〝バカラ〟を主とした美しいグラスが並ぶ。そのグラスから扱う酒の種類がわかるという粋な設えだ。

 ステーキやフォアグラなどの料理も楽しめる

 居心地のいい空間をコンセプトに、フロアにはゆったりとした座り心地のソファを置いたテーブル席を多く用意。さらに3つある個室のうちの一室は、8人用の優雅な空間をつくり出していて、夜遅くまで本格的な鉄板焼きステーキやフォアグラなどのフランス料理を楽しむこともできる。

とはいえ、おすすめはシェリーそのものを楽しむこと。トニックウォーターで割ってロングドリンクとして飲んだりと、様々な提案をしてくれる。

 スーツ姿のバーテンダーが迎えてくれるバーカウンターは6席、遅めの時間に食後酒やカクテルを楽しむのもいい。

常に数種のシェリー銘柄をそろえている「マスク」。この日、バーテンダーが選んでくれたのはバルデスピノ社のシェリー。13世紀からワインをつくり始めて以来、家族経営によって育まれた個性と品質は、最高級のオリジナルと呼ぶにふさわしい芳香と味わいをもつ。

■マスク MASQ
住所:東京都中央区銀座5-6-6銀座フォトグビルB1
TEL:03・3575・5161
営業時間/月~土17時30分~3時
日・祝日17時30分~24時 無休
チャージ¥1,000(税込、サービス料別)
http://www.masq.jp/top.html

クレジット :
撮影/荒木大甫 構成・文/堀けいこ