間近で見て、細部まで味わいたい。鏑木清方が描く明治の女性たちの白い肌、豊かな髪

この秋の自分磨きにおすすめしたい展覧会のひとつが、「鏑木清方 幻の「築地明石町」特別公開」です。

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東京国立近代美術館所蔵の清方作品をほとんどすべて鑑賞できる貴重な機会です!

文字通り「量より質」、大人の女性の知識欲を存分に刺激してくれるこの展覧会は、2019年12日15日(日)まで、東京・竹橋の東京国立近代美術館にて開催されています。

「鏑木清方 幻の『築地明石町』特別公開」をさらに味わうポイント

間近でみると、そのミステリアスな美しさに周りが霞んでしまうほどの「三部作」、「築地明石町」(1927年)と、「新富町」、「浜町河岸」(どちらも1930年)。画像では感じ取れない、念入りに描かれたディテールを直接目で見て読み取り、鑑賞するのがより作品を楽しむポイントです!

■1:襟足の後れ毛の繊細さ!とことん念入りな細部に注目

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中央が「築地明石町」です。当時、明石町は上流の夫人の散歩コースでした。

「築地明石町」でいえば、朝靄に包まれているようなトーン、指輪をはめた女性の指先の、ほんのりとした、でも意味深な赤み、細く繊細に描かれた後れ毛など、舐めるように見れば見るほど、本質が浮かび上がってくるような清方作品。緻密に描かれた細部をじっくり鑑賞するのも、実物を見る醍醐味といえそうです。

■2:時代、場所、何時ごろかまで書き込んである!薀蓄(うんちく)の宝庫

 例えば、「三部作」のひとつ、「新富町」の背景に描かれた新富座の絵看板は、実物を見ても小さなパーツですが、実は『仮名手本忠臣蔵 五段目』を描いており、新富座でこの演目が上演された期間も調べれば、この場面がいつ頃を描いているのかも判明してしまいます。

■3:特別展示の「鶴八」

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直木賞の第一回受賞作品、川口松太郎『鶴八鶴次郎』から題材をとった「鶴八」

テレビ東京の番組『開運!なんでも鑑定団』で有名な中島誠之助さんが「築地明石町」の東京国立近代美術館への収蔵を聞きつけて、「それなら!」と寄贈した「鶴八」も鑑賞できます!

■4:「築地明石町」のモデルの実際の写真も!関連資料でさらに深掘り 

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泉鏡花の紹介で、清方に絵を習いに来ていた江木ませ子さん

「築地明石町」のモデルを務めた、江木ませ子さんの4点のポートレイトは、女優のような美しさで、作品のモデルになったのも納得です。また、清方ゆかりの地が確認できる古地図も展示してあり、現代と照らし合わせても興味深く、作品の理解を深めてくれます。

■5:明治の粋を手元に。鏑木清方ファンの心を鷲掴みするグッズや書籍

「築地明石町」と、「新富町」、「浜町河岸」の三部作を含む、12種類のポストカードや手ぬぐい
「築地明石町」と、「新富町」、「浜町河岸」の三部作を含む、12種類のポストカードや手ぬぐい

ミュージアムショップに寄るのも、アートファンの楽しみのひとつ。今回の特別展にちなんで販売している、鏑木清方の美女達を持ち帰れるポストカードや、明治の生活の断片を感じられる手ぬぐいは、来展の記念やお土産にもぴったりです。

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鏑木清方原寸美術館 100% KIYOKATA! 著・監/鶴見香織 定価/本体2400円+税 A4判144頁  オールカラー

さらに三部作を含む、鏑木清方の作品を23点を掲載し、全ての作品で原寸大の図版付きの書籍も販売中です。「築地明石町」含む一部の作品については、顔の部分を200%に拡大しているので、猫っ毛のように柔らかな髪の質感を一本一本まで感じることができます。

鏑木清方原寸大美術館を詳しく見る>>


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「鏑木清方 幻の『築地明石町』特別公開」入り口

出展数はささやかながら、作品を身近に楽しむ工夫も満載な展覧会「鏑木清方 幻の「築地明石町」特別公開」。
淡く、ミステリアスな明治の女性の美と、驚くほど緻密に情報が込められた作品を間近で見られる貴重な機会をお見逃しなく!

問い合わせ先

  • 鏑木清方 幻の「築地明石町」特別公開 
  • 会場/東京国立近代美術館 所蔵品ギャラリー10室
  • 会期/2019年12月15日(日)まで
  • 開館時間/10:00〜17:00、金曜・土曜は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)
  • 定休日/月曜日(ただし11月4日は開館)、11月5日
  • 観覧料/一般 ¥800(600) 大学生 ¥400(300)
 ※( )内は 20名以上の団体料金。いずれも消費税込
  • 無料観覧日/2019年11月3日(日・文化の日)
  • 主催/東京国立近代美術館、文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会
  • ※本展の観覧料で入館当日に限り、同時開催の所蔵作品展「MOMAT コレクション」も観覧可能
  • ※同時開催の「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」(2019年11月1日〜2020年2月2日)は別途観覧料が必要
  • TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • 住所/東京都千代田区北の丸公園 3-1

この記事の執筆者
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WRITING :
神田朝子