2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてホテル業界は熱い。東京はむろんのこと全国で新ホテルの建設、既存ホテルの改装が続いている。まあ、悪いことではない。チョイスは多いにこしたことはないのだから。
帝国ホテルを贔屓にする理由
ただ、それによってぼくの贔屓が変わるかといえば「いや、それはどうだろう」となるのだ。
たとえば、ぼくは東京の帝国ホテルを一種のジェントルマンズクラブだと思って贔屓にしている。これは絶対揺るがない。
ロンドンはセントジェイムズ・スクエアあたりにひっそり佇むジェントルマンズクラブは、選ばれた会員のための宿泊と飲食の施設、いわば会員制ホテルだ。
帝国ホテルは、開かれたパブリックな存在だが、ジェントルマンズクラブのような古い歴史と伝統がある。これは新参ホテルでは絶対にまねできない。しかも、ロンドンにおけるセントジェイムズ・スクエアと同じように東京日比谷というメガシティの要衝にある。
進化を遂げる帝国ホテルのフランス料理
これだけですでに〈つきあっておくべきアドレス〉の筆頭だ。東京ベースで仕事をしていて帝国ホテルをよく知らないというのは、昼にディナージャケットを着るぐらい恥ずかしいというのがぼくの認識である。ただ、古くてロケーションがいいというだけではジェントルマンズクラブとしては十全ではない。ヒューマンファクターこそがキーポイントなのだ。
フロントはもちろん、『オールドインペリアルバー』などのバーやレストラン、コンシェルジェ、そこには帝国ホテルたたきあげのホテルマンがいる。現在の料理長のように一時武者修行に出ても帰ってくる。そんな連中とずっと長くつきあえる、友達になれる、まさにジェントルマンズクラブの真髄的魅力があるのだ。
ぼくには年頃の娘がいる。彼女が結婚をして子供ができるようなことがあれば、ぼくは彼女にそうしたように、帝国ホテルに頻繁につれて行き、「林さんのお孫さん」としてこのホテルの常連にするつもりである。
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- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2019年秋号より
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- PHOTO :
- 篠原宏明
- WRITING :
- 林 信朗(服飾評論家)