「モードとアートの香水瓶―ポワレ、スキャパレッリ、ディオール」展

1920年代から1940年代にかけて制作された、優美でクラシックな「香水瓶」に焦点を当て、20世紀から現代までの香水瓶の軌跡を辿る展覧会が、神奈川・箱根のポーラ美術館にて開催されます(2019年12月15日〜4月5日)。

香水の世界観を演出してきた「香り」「ボトル」は、1920年代からどう表現されてきた?

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香水瓶「青い時間」1912年 ゲラン

フランスでは、ファッションデザイナーのポール・ポワレが1908年に創設した香水ブランド「ロジーヌ香水」を発端に、オートクチュールメゾンが香水を販売しはじめ、1920年代には各メゾンの世界観を演出するために、香りが重要な役割を担うようになりました。

多くのメゾンが香りはもちろん、ボトルの形にも工夫を凝らし、時にはルネ・ラリックやシュルレアリストなど同時代の芸術家たちもその造形に携ります。前衛的なものから、アイコンになった定番デザインなど、メゾンによって多様な戦略で創られた香水瓶は、個性的で感性を刺激してくれるものばかり。

ファッションと香り、アートが唯一無二の世界観を創る。香水瓶とアートの出会いを紐解く4章

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香水瓶「ディオリン」 1963年 クリスチャン・ディオール バカラ社製

12月15日(日)に開幕する「シュルレアリスムと絵画 ―ダリ、エルンストと日本のシュール」展の関連企画としてスタートする本展は、4章の構成で、ファッションの新たな表現媒体として発展した「香水瓶とアートの出会い」を紐解きます。

メゾンの世界観を表現した香水瓶を、芸術家たちが手がけた作品を中心に、ポワレを起点とし、エルザ・スキャッパレッリ、クリスチャン・ディオールなどの香水瓶が展示されます。4章の順に、その内容を紹介してゆきましょう。

■ 第1章:「オートクチュールメゾンによる香水のはじまりと発展」

19世紀後半まで香水は「専門の香水メゾン」によって販売されるものでした。しかし20世紀に入ると、洋服を手がけるオートクチュールメゾンが、その世界観を表現する方法として、香水を発表するようになります。本章では、現代でも人々を魅了している、オートクチュールメゾンによる香水の歴史のはじまりと発展が紐解かれます。

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ルネ・ラリック 香水瓶「ダン・ラ・ニュイ(夜中に)」原型制作:1924年、ウォルト

■ 第2章:「20世紀における香水メゾンの戦略」

19世紀まで上流階級の楽しみだった香水は、19世紀末に開発された合成香料により、価格が抑えられ、香りの種類も豊富になったことで、幅広く普及します。ボトルの素材も陶器からガラス製のものが一般的になり、技法を凝らしたボトルが制作されるようになりました。

本章ではゲランなどの老舗や、20世紀に登場したコティなど新興化粧品メーカーの香水瓶が展示され、より多くの人の手に渡ることを意図した、香水メゾンの戦略が紹介されてゆきます。

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ルネ・ラリック 香水瓶「ミスティ」原型制作:1925年 L. T. ピヴェール
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香水瓶「パリ、クリスマス用」1940年頃 コティ

■ 第3章:「モードとシュルレアリスムの出会い」

文学から始まったシュルレアリスムの表現は、やがてモードの世界にも取り入れられます。中でもファッションデザイナーのエルザ・スキャパレッリは、サルバドール・ダリやレオノール・フィニらシュルレアリストとのファッションや香水瓶のデザインでの協働で、当時話題を集めました。

1930年代後半から始まった、ダリとスキャパレッリのパートナーシップとして有名なものといえば、靴をひっくり返したようなデザインの帽子や、骨を立体的にかたどったような装飾の「スケルトン」ドレス、そしてインパクト大の通称「ロブスター・ドレス」など。どれも美と創造性の間にあるような作品ばかり!

スキャパレッリは、シュルレアリスムに最も接近したデザイナーとして「モード界のシュールレアリスト」と呼ばれることもあるのだそう。この章では、そんな彼女の世界観を、香水瓶や商品カタログとともに鑑賞していきます。

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香水瓶「スリーピング(眠り)」1938年 スキャパレッリ バカラ社製
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香水瓶 「ショッキング」1937年 スキャパレッリ バカラ社製
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雑誌広告「スキャパレッリの香水―ショッキング、サリュ、スリーピング」1940年代

■ 第4章:「戦後から現代へ続く香水瓶」

第二次世界大戦後、パリのモード界に勢いと輝きをもたらしたのが、クリスチャン・ディオールによる華やかなコレクションでした。花を愛したディオールによる香水は、発表当時から現代まで、ほぼ同じ形の香水瓶で販売されています。

本章ではディオールに代表される、第二次大戦後の香水瓶をご紹介するとともに、20世紀に発表され、現代でも変わらない形で親しまれている、香水瓶の軌跡が紹介されます。

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香水瓶「ジオラマ」 1949年 クリスチャン・ディオール

メゾンの世界観を演出するだけでなく、時代とともに女性の精神性や時代の空気も表現してきた、香りと香水瓶。ひそやかなものだけれど、ファッションやアートを巻き込み、時代を創った美学が詰まっています。

年末年始に箱根界隈への旅行を計画している方は、美しい香水瓶の世界を堪能しに、ぜひ足を運んでみてください。

問い合わせ先

  • 「モードとアートの香水瓶ーポワレ、スキャパレッリ、ディオール」展 
  • 会場/ポーラ美術館
  • 会期/2019年12月15日(日)〜2020年4月5日(日)※会期中無休
  • 開館時間/9:00〜17:00 (最終入館は16:30)
  • 入館料/大人¥1,800円、シニア(65歳以上)¥1,600、大学・高校生¥1,300、中学生以下は無料
  • 主催/公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
  • 協力/ポーラ文化研究所
  • TEL:0460-84-2111
  • 住所/神奈川県⾜柄下郡箱根町仙⽯原⼩塚⼭ 1285

この記事の執筆者
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WRITING :
神田朝子