見よ! このかっこよさを。

あまりにも有名なこの白州次郎のポートレートは49歳当時のもの。日本で初めてジーンズをはいた男と呼ばれる白洲は、最もジーンズが似合う男ともいえる。サンフランシスコ講和条約の調印に吉田茂と赴いた際にもジーンズをはいていたといわれるほどだが、このスタイルを手本にできる中年男性はどれくらいいるのだろうか。

デニムとTシャツ、無理やり着なくとも

客観的に見て、Tシャツやジーンズはなかなかハードルの高いウエアである。どちらもカラダがものを言うからだ。 Tシャツは『波止場』のマーロン・ブランドのようなたくましい胸と肩が必要だ。

ジーンズにはデヴィッド・ベッカムのような長い脚と引き締まった尻が要る。どちらも日本人男性の体形に属さない特徴なのである。 鏡の前でよしこれならと納得できるか。または外野から拍手が聞こえるか。どちらでもないのなら、いっそ着ないほうがよろしい。 それを家庭用語では断捨離、ビジネス用語では選択と集中という。

この記事の執筆者
TEXT :
林 信朗 服飾評論家
BY :
MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任し、フリーの服飾評論家に。ダンディズムを地で行くセンスと、博覧強記ぶりは業界でも随一。
クレジット :
撮影/戸田嘉昭(パイルドライバー/静物)