誌面での最終項目となる井浦さんの「遊」の物語は、歴史が大好きだったというお父様のこと、子供の頃の家族旅行の話から始まります。誌面のビジュアルは、インパクトのある土偶のレプリカ。なぜ土偶なのかは誌面を読んでのお楽しみ。ここでは、「遊」のエピソードに出てくる、とても大切なフレーズを抜き取って紹介します。
美術への興味も、大好きな歴史から、そして、旅から始まっている
「僕にとっては、歴史を旅し、思いをはせながら時間を過ごすことが最大の“遊び”でもあります」
井浦さんは、そんな歴史を旅することから得たものを表現として発信しているのです。その表現のひとつが著書。これまで数多く出している著書の中から3冊を紹介します。
■1:『井浦新の美術探検 東京国立博物館の巻』
「美術が大好きな僕にとって、東京国立博物館(トーハク)は、まさに宝の山」と、前書きで書いている井浦 新さん。「考古」「絵画」「アジア」「技」という4つのテーマを軸に、自身の目線でとらえたトーハクの魅力をたっぷりと伝えています。学芸員などの東京国立博物館を支えるスタッフとの対談など、興味深い項目と情報が満載。美術ファンならずとも、美しいもの、おもしろいものを眺めて歩くように楽しめる一冊です。誌面のビジュアルとなった土偶(重要文化財「遮光器土偶」青森県亀ヶ岡遺跡出土)も登場します。
■2:『井浦新の日曜美術館』
2013年4月から5年間にわたりNHK「日曜美術館」の司会をつとめた井浦さん。その2013年度に放送された番組から、とくに印象に残った回を中心に、番組では言い尽くせなかった想い、感動体験、美術との付き合い方などを存分に書いたという初エッセイ。紹介作家は、本阿弥光悦、鈴木其一、河鍋暁斎、河井寛次郎、植田正治、藤城清治、ムンクほか全18篇。「展覧会の僕的見方」「実はメモ魔なのです」などの、特別コラムでは、井浦氏が、親しみやすいその素顔をのぞかせています。
■3:『春日大社 千古の杜』
世界文化遺産・春日大社。平成28年に第六十次式年造替を迎えたことを記念して、通常は非公開の春日若宮おん祭や式年造替の神事に密着し撮影することが、井浦 新さんに特別に許可されました。御蓋山(みかさやま)に抱かれる春日大社の雄大な自然や森。途絶えることなく受け継がれる祭事や祈りの心。神社を支える匠の技。厳粛で神秘な祭事や、それらを担う神職の人々の美しい姿。井浦さんがファインダーを通して感じたという、春日大社の“千古不磨”の精神が伝わってくる見応えのある写真集です。
- TEXT :
- 堀 けいこ ライター
- PHOTO :
- 篠原宏明