2016年末、東京の食通たちの話題をさらった「クローニー」。日本を代表するグランメゾン「カンテサンス」で長く支配人を務めた小澤一貴氏が、旧知のサービスマンや気鋭の料理人とオープンしたレストランです。“永続的な茶飲み友達”という意味の店名通り、小澤氏を含む創業メンバー4人のつきあいは長く、特に小澤氏とマネージャーの小野寺 透氏は18年来の仲だとか。
上質な料理とサービスを肩肘張らない雰囲気で
「店名には“長い付き合いの仲間が集まったレストラン”という意味に加え、お客様を始めここに関わる方々にも“茶飲み友達”のような感覚で過ごしていただきたいという想いを込めました。コンセプトは、ハイエンドなクオリティの料理とサービスをリラックスした空間で楽しんでいただくということ。自分も含めサービス陣は全員が元支配人経験者で、シェフも各国の三ツ星レストランで学び、キャリアを積んできた人間。その経験を経て今、高いクオリティの“食”をよりお客様に近い雰囲気で提供したいと考えたんです」(小澤氏)
シェフの感性と世界観が凝縮されたコース
シェフを務めるのは、“「カンテサンス」で出会った時から人柄とセンスに魅力を感じていた”と小澤氏が語る春田理宏氏。日、仏、北欧の三ツ星レストランのほか、開業前にはサンフランシスコでも研修。全10品強のコースを通して、経験に裏打ちされたシェフの感性と世界観を感じることができます。「フランスでは“おいしく食べてもらおう”という気概、北欧とアメリカでは先進的な技術を学びました。一方、旬を考えると食材は国産が多くなります。自分にとって料理に国やジャンルは関係なく、ボーダレス。重要なのは“おいしいかおいしくないか”です」(春田氏)
この皿数だからこそ表現できる多彩な要素
「食事をする数時間のなかでも、“今食べたい料理”は変わってくると思うんです。旬が味わえる料理、サプライズがある料理、ほっとする料理……。コース全体で緩急が感じられるよう、一皿一皿に明確なテーマをもたせています。例えば、先の前菜は“食事の初めに旬を味わっていただく一皿”、このデザートは“見た目からユニークで、サプライズのある一皿”。“どうなっているんだろう?”とお客様がメレンゲの下を覗いてくださったら、狙い通りですね」(春田氏)
今求められている、レストラン/ワインバーという二面性
「レストランとしてのクローニーが、今“自分たちがやりたい店”だとすれば、21時30分からのワインバーは“自分たちが行きたい店”。深夜においしい料理とワインが味わいたい時、行きたい店があまりないんですよね。上質なワインがあって、軽くつまむこともしっかり食事することもできて、肩肘張らない雰囲気で。……そんな“行きたい店”という観点から始まったのがワインバーです。東京には忙しい方も多いですし、今の時代に求められている形でもあると思います」(小澤氏)
ワインバーの話がでたところで、最後におふたりが深夜に食べたいものを聞いてみました。「ポテトフライでしょうか……実は21時30分からのアラカルトメニューにもあります」(春田氏)。「僕は揚げ物が大好きで。餃子とビールなんかも好きな組み合わせです。いつかシェフにこういうメニューをガストロノミーとしてアレンジしてつくってほしいですね(笑)」(小澤氏)
ガストロノミーの最前線を世界で体感してきたシェフと、グランメゾンやホテルで一流のホスピタリティを磨いてきたサービス陣。強力なチームが強力なプロ意識のもとに作り出す「クローニー」は、今東京でいちばん求められている美食の空間といえるかもしれません。
■クローニー
営業時間/18:00〜26:00
(21:30〜はワインバー。25:00フードL.O.、25:30ドリンクL.O.)
定休日/日曜 ※不定休あり
18:00〜20:00はおまかせコース¥12,000のみ。※要予約
ワインはグラス¥1,800〜、ボトル¥6,000〜、ペアリングコース¥6,000〜。
全27席(うちカウンター5席)、個室あり(6名まで対応可能)
TEL:03-6712-5085
http://www.fft-crony.jp/
住所/東京都港区西麻布2-25-24 NISHIAZABU FTビル MB1F(半地下1階)
- TEXT :
- 門前直子さん エディター・ライター
- クレジット :
- 撮影/平本泰淳 取材・文/門前直子