年末年始のお休みはどのように過ごす予定でしょうか? 日頃、仕事でたまったストレスを休みのうちに解消したいと考えている人が多いでしょうが、実は、休み中のよかれと思っての行動が、かえってストレスを悪化させるおそれもあるのです。

今回は、休日にやってはいけないストレス解消法について、日本心理教育コンサルティング代表でカウンセラーの櫻井勝彦さんからお話をうかがいました。

休日にやってはいけない、NGストレス解消法6選

■1:昼過ぎまで寝る

朝寝坊の癖がつくと休み明けが余計に憂鬱に
朝寝坊の癖がつくと休み明けが余計に憂鬱に

「休日に昼過ぎまで寝てしまうと、どうしてもその日の就寝時刻も遅くにずれこむので、おのずと睡眠リズムが狂います。そうなると、休み明けは寝不足状態で、いわゆるブルーマンデーを迎えることになってしまうのです。

睡眠リズムが狂うという以外にも、休日の朝寝坊にはもう1点デメリットがあります。昼過ぎに起きて、そこから活動するとなると、どうしても日照時間が短くなりますが、人間は、太陽の光にあたらないと脳内ホルモンのセロトニンが不足して、うつっぽい気分になりやすいのです。

もちろん、日頃たまった疲れをとるために、休日の朝、少し遅めに起きるのはよいかと思うのですが、睡眠リズムをキープするためにも、太陽の光を十分浴びるためにも、できれば午前中のうちに布団から出ることをおすすめします」(櫻井さん)

寝不足が続いている人は、休日に十分な睡眠をとるべきですが、“夜更かし→朝寝坊”の生活リズムが身についてしまわないように注意しましょう。

■2:何もしないで家でじっとする

家にずっと引きこもる弊害とは?
家にずっと引きこもる弊害とは?

「ストレスがたまった状態では、休日にまったくエネルギーが沸いてこないことも。それは、からだや心が休息を求めているサインなので、無理せずのんびり過ごすことが望ましいのですが、とはいえ、何もしないで家でじっとするのは避けたほうがよい場合もあります。

その理由は2点。まず、さきほど申し上げたように、人間は日照時間が短いとうつっぽくなりやすいので、家に引きこもっているとネガティブな気分を加速させるおそれがあります。

もう1つ、からだの動きが止まると、頭のなかでも嫌な記憶が停滞してしまう、という点でも問題です。ストレスが溜まった状態で、何もしないでじっとしていると、とにかくネガティブなことばかり考えてしまうおそれがあります。

何か嫌なことがあっても、新しいことに没頭しているうちに忘れてしまうという経験は、誰しもあるのではないでしょうか? 心のなかにたまった嫌なエネルギーを適度に発散させるためには、何もしないでじっとするより、軽く近所を散歩などしてみてはいかがでしょうか」(櫻井さん)

■3:人との関わりを過度に避ける

ずっと独りでいるとネガティブ思考をこじらせる
ずっと独りでいるとネガティブ思考をこじらせる

「気分がふさいでいるときには、誰ともかかわりたくないことってありますよね。もちろん、疲れる相手に無理に関わる必要はありませんが、ただ過度に人との関わりを避けると、かえってストレスを悪化させるおそれがあります。

というのも、人は誰とも会話しないで黙っていると、自然と呼吸が浅くなるのです。深呼吸するとリラックスするのと真逆で、呼吸が浅くなると、気持ちにも悪影響を及ぼします。

それに、人と話さないと、どうしても意識が自分にばかり向いてしまい、自己流の偏った考え方に凝り固まって余計にストレスを深刻化させるという弊害もあります。たとえば、職場の人間関係でストレスを抱えていると、『やっぱり私は、上司から嫌われているに違いない』など、悲観的な思いを募らせてしまうなど。

人と話していると、自分のなかにはなかった視点に気づかされるなどして、ストレスが軽減されることが往々にしてあります。悩みを打ち明ける相手がいなければ、単なる世間話でもいいので、ストレスがあるときほど、他者との会話を試みましょう」(櫻井さん)

もちろん、心身の疲労がたまっているときには、人の多く集まるパーティーへの参加を控えてもよいかもしれません。ただ、「誰とも関わりたくない」と独りでふさぎこむのではなく、気心の知れた相手とリラックスして過ごすことを心がけましょう。

■4:食べ放題などで暴飲暴食する

暴飲暴食は美容だけでなくメンタルにも悪影響
暴飲暴食は美容だけでなくメンタルにも悪影響

「暴飲暴食に及ぶと後から強烈な罪悪感に襲われるだけでなく、腸内環境が乱れるという点でも、ストレスを悪化させます。

“腸は第二の脳”とも言われているほど、腸とメンタルヘルスは密接な関係にあり、腸内環境がよくないとセロトニンが不足して、うつっぽい気分を招くおそれがあるのです。

ストレス解消のために、食べ放題に行くのは、てっとり早い方法ではありますが、できれば好きな料理を腹八分目に楽しむにとどめ、暴飲暴食は慎みましょう」(櫻井さん)

■5:ショッピングで衝動買いする

ショッピングをすると一時的に気分は上がるけれど…
ショッピングをすると一時的に気分は上がるけれど…

「お金をぱーっと散財すると、高揚感を得られるので、ショッピングで一時的にストレスを緩和することは可能です。

しかし、この種の高揚感は、1度味わうと慣れてしまい、どんどん強い刺激を求めるようになります。それが深刻化したものが、いわゆる買い物依存症というものです」(櫻井さん)

もちろん、がんばっている自分へのご褒美として、ずっと欲しかったものを購入するのは当然。ただ、「何となくむしゃくしゃするから、お気に入りのショッピングサイトでも見て気分を紛らわそう」と、ストレス解消ありきで買い物するのは避けましょう。

■6:悲観的な内容の映画や小説に触れる

正しい「涙活」の方法とは?
正しい「涙活」の方法とは?

「涙を流すと脳内ホルモンの働きでストレスが緩和するといわれているので、映画や小説などに触れて、能動的に涙を流す“涙活”はストレス解消法として有効です。

ただ、涙活を行ううえで、一点注意したいことが。たしかに、涙を流すこと自体はよいことなのですが、悲観的でバッド・エンドを迎えるようなコンテンツばかりに触れていると、おのずと発想がネガティブに染まりやすいのです。

涙を流して一時的にストレス解消はできても、発想がネガティブになってしまうと、ストレスが溜まりやすくなってしまい、元も子もありません。涙活では、悲しみの涙ではなく、感動の涙を流せるような作品を選ぶほうがいいでしょう」(櫻井さん)

以上、やってはいけないストレス解消法をご紹介しました。 年末年始のお休みは正しいストレス解消法でリフレッシュするように心がけたいものですね。

櫻井勝彦さん
日本心理教育コンサルティング代表、講師、カウンセラー、一般社団法人日本ヒューマンスキル教育推進協会代表理事、文学修士、公益社団法人日本心理学会認定士、JAAHSE認定傾聴セラピスト養成講座上級指導者
社会心理学系の大学院(博士課程前期)を修了後、各種学校にて心理学の講師・スクールカウンセラー、研修会社で研修企画・講師などを経て、平成18年に日本心理教育コンサルティングを設立。全国の企業・自治体・学校などで心理学を活用した楽しく実践的な講義・研修・講演を行っている。書籍・雑誌・テレビ・ラジオなど、メディア掲載・取材・監修も多数。著書に『仕事が思い通りにできる心理術』(明日香出版社)がある。
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この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美
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