「蓋う」の読みは? 意味は? 謎めく漢字と「振袖火事」のトリビアをひもときます!

「蓋(ふた)」という漢字です。
「蓋(ふた)」という漢字です。

1月18日といえば、江戸時代最大の火事と言われる1657(明暦3)年の「明暦の大火」、俗にいう「振袖火事」の起きた日だとされています。

3日間にわたって江戸の町の大半を焼き、この火事で江戸城の天守も焼け落ちました。死者は江戸時代の火事中最大の10万人を超えるとされ、この大火事が、その後の江戸の都市計画や消防制度に、大きな影響を与えたとされています。

さてみなさま、「振袖火事」と聞いて連想する物語がありませんか?「八百屋お七」です。

井原西鶴の『好色五人女』に取り上げられ、文学や歌舞伎など、さまざまな芸能の主人公とされた「お七」、「振袖火事」といえば「お七」の悲恋物語に由来する火事、という認識は、実はカン違いです。

八百屋お七の関わった火事は、「振袖火事」の26年後、1683(天和2)年の「天和の大火」です。

「天和の大火」で焼け出され、寺に避難したお七が、寺小姓に恋をして、「また火事があればあの人に会える」という妄想のもとに放火の大罪を犯した、という悲恋物語です。

お七が振袖を着る年ごろだったことから、後世、この衝撃的なストーリーと「振袖火事」を混同している方も多いようですが、実は別々の火事なのです。

では、本物の「振袖火事(明暦の大火)」は、なぜ「振袖火事」と呼ばれるのでしょうか?

由来は、以下のようなストーリーにあります。

~~商家の娘・おきくが、花見の際にある若者に恋をし、この若者の来ていた着物に似せて、振袖をつくったが、恋の病に臥せったまま、不幸にも17歳の若さで亡くなってしまいます。不憫に思った両親は、娘の棺に振袖をかけて葬ります。

ところがのちに、この振袖が古着屋を介して、別の娘の手に渡ります。すると、なんとその娘も、おきくの亡くなったのと同じように、亡くなってしまうのです。

さらに翌年も、同じことが…。3年続いた不幸を恐れた親たちは、本妙寺でこの振袖を焼いて供養します。ところが、読経供養中に火のついた振袖がつむじ風で舞い上がり、江戸じゅうを焼き尽くす火元となってしまったのです。~~

というのが、「振袖火事」の伝説です。

しかし、オカルティックなこの伝説は、「本当の火元」を隠すためではないか?という見方も大きいようです。実は放火が原因であった、とか、火元が武家の有力者の屋敷であったため、それを隠すために大衆の好みそうな怪談を仕立て上げた、という説も散見されます。

また、「振袖火事」のストーリーは、後年の「お七火事」ののちに、作られたものではないか?という説もあるようです。

いずれにしても、死者10万人以上、という大きすぎる厄災を乗り越えるため、まことしやかで哀しく、美しい怪談が必要だったのかもしれません。

 …と長々しく前振りをしたところで、クイズです。

【問題1】「蓋う」はなんと読む?

「蓋う」という日本語の読み仮名をお答えください。

ヒント:「蓋(ふた)」という感じに「う」という送り仮名をつけてこう読む、というのが納得できる読み方です。

「○○う」と読み仮名は2文字です。
「○○う」と読み仮名は2文字です。

さて、正解は?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。

 

正解は… 「蓋(おお)う」 です。

なるほど、「蓋をする」ことは「おおう」ことでもありますね。
なるほど、「蓋をする」ことは「おおう」ことでもありますね。

「振袖火事」の伝説は、厄災の悲しみに蓋をする、つまり「蓋う」役割で作られたのかもしれませんよね?

江戸時代といえば、華々しく文化が花開いた猥雑で繚乱な時代でもあります。「振袖火事」という異名からは、大きな災害から立ち直るため、時にオカルトやゴシップの力を借りた、人々のたくましさも感じます。

…というところで、2問目のクイズです。

【問題2】「埋火」はなんと読む?

冬の季語ともなっている日本語「埋火」の読み方を、3つの選択肢の中から選んでください。

1:うめび

2:まいか

3:うずみび

ちょっと素敵な比喩にも使われる言葉です。
ちょっと素敵な比喩にも使われる言葉です。

さて、正解は?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。

 

正解は・・・ 3:うずみび です。

埋火(うずみび)とは、灰の中に埋めた炭火のことです。囲炉裏や火鉢に入った炭火を灰で覆うことにより、火種を長持ちさせたり、火力を調節したりできるそうです。

また「埋火」という言葉は、「秘めた恋」をたとえる表現としても用いられます


本日は「振袖火事」にちなんで

・蓋(おお)う

・埋火(うずみび)

の読みと、トリビアをお送りしました。

乾燥の激しい季節、皆さま、火元には十分ご注意くださいね。

ちなみに明日、1月19日は「家庭消火器点検の日」です。ご家庭の消火器が古くなっていないか、しっかり点検してくださいね!

この記事の執筆者
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ILLUSTRATION :
小出 真朱