冬の味覚のひとつ“おでん”は、庶民的な食べ物で、みんなで和気あいあいとした雰囲気で楽しめますよね。プライベートはもちろんのこと、ビジネスにおいても、親睦目的で「ちょっとおでんで一杯」という機会は多いはず。

そんなおでんの会食は、カジュアルなシーンだからこそ、ふとした拍子に普段の食事の癖が出やすいもの。気の緩みから無作法な食べ方をしては、周りから「この人、育ちが悪そう……」などと思われて株を下げることにもなりかねません。あなたはおでんを美しく食べることができるでしょうか!?

そこで、今回は、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんから、おでんの食べ方NGマナーについて、教えていただきました。

おでんを食べるときのNGマナー5選

■1:辛子などの「薬味」をいきなりつゆに溶かすのはNG

薬味をつゆに溶かすのはマナー違反?
薬味をつゆに溶かすのはマナー違反?

そのまま食べてもおいしいおでんですが、味のアクセントとして、辛子や柚子胡椒などの薬味と一緒に味わいたい人も多いはず。

ただ、刺激的な味が好きだからといって、食べ始めてすぐにおでんのおつゆに薬味を溶かすのはNGとのことです。

「おでんに限らず、食事のマナーの基本姿勢としてまず押さえておきたいのは次の2つ。作り手や食材に対して敬意を払うことと、そして、その場にいる人たちと楽しく味わうことです。

食べ始めてすぐにおつゆに薬味を溶かす行為は、もともとのつゆの味がわからなくなってしまうという点で、作り手や食材に対する敬意が欠けているように思われます。また、周りの人たちが薬味なしで食べているうちから、自分だけという点でも、場の空気にそぐいません。

薬味をつゆに溶かすのは、食事が進んで味の変化を楽しみたくなったタイミングで行いましょう。

ちなみに、一説によれば、『辛子を溶かすとつゆが濁るので、辛子を溶かすこと自体がマナー違反だ』という見方もあるようですが、私としましては、そこまで厳格にとらえなくてもよいのでは、と考えます。

というのも、辛子の風味を楽しみたいけれど、ピリピリするのは苦手なので、つゆに溶かしながら食べたいという、個々人の味の好みもあるからです。

板前さんなども、お客様に対して食べ方を押し付けるのではなく、お好みの方法でおいしく食事していただくのが何よりだ、と考えているかたが増えているようですし、薬味をつゆに溶かすのは、お店に対して失礼にあたらないと思います。

また、つゆが濁るといっても、自分の手元のお椀の中ですので、周囲から見てそれほど見苦しいわけでもありません。

食べ始めすぐはよくないですが、食事の最中であれば、お好みで薬味をつゆに溶かしてもよいでしょう」(西出さん)

■2:薬味に「具材を直接つける」のはNG

薬味が別皿で提供されているときの注意点は?
薬味が別皿で提供されているときの注意点は?

辛子や柚子胡椒などの薬味の扱いでは、もう一点、注意すべきことが……。薬味が別皿で提供されている場合、具材を薬味のほうに運んでつけるのではなく、薬味を箸にとって具材につけるほうがよいとのことです。

「さきほど自分のお椀のおつゆは濁っても、周りからそれほど目立たないとお伝えしましたが、薬味の小皿はお椀の中身よりも人目につきやすいです。

具材を薬味のほうに運んでベタッとつけると、小皿が汚れてしまうという点で、あまりおすすめできません。それに、薬味の小皿にいろんな具材をつけることで、味がまじってしまうという弊害もあります。

小皿を汚さず、かつ、おいしくいただくためには、薬味を少量、箸にとり、具材に延ばすようつけるようにしましょう」(西出さん)

■3:具材を「箸で突き刺して」口に運ぶのはNG

一口で食べきれない具材の食べ方は?
一口で食べきれない具材の食べ方は?

おでんの具材のなかでも、大根や卵など厚みのあるものは、箸でつかむのが難しいですよね。だからといって、具材に箸を突き刺して口に運ぶのは、嫌い箸のひとつ、“刺し箸”に当たるのでNGです。

「大根や卵など一口で食べきれないものは、箸で一口サイズに切り分けてから、口に運ぶようにしましょう。

なお、大根は箸で簡単に切り分けられると思いますが、卵は難しいと感じる人が多いかもしれません。卵をきれいに切り分けるには、懐紙を活用しましょう。

箸だけで卵を切ろうとすると、うっかりすると卵が滑って皿の外に飛び出してしまう、なんて事態も起こりえます。

それを防ぐには、左手に懐紙を持って卵を押さえ、しっかり安定した状態で箸を入れるようにしましょう」(西出さん)

マナー美人の必携アイテムといっても過言ではない懐紙は、おでんを食べるときにも重宝します。いつ食事に出かけても大丈夫なように、常に懐紙を持ち歩くようにするとよいかもしれませんね。

■4:食べかけの具材を皿に戻すのはNG

具材が箸で切れないときはどうする?
具材が箸で切れないときはどうする?

おでんの具材で一口で食べきれないものは、箸で一口サイズに切り分けてから口に運ぶのがマナー。とはいえ、こんにゃくやちくわ、もち入り巾着などは、箸できれいに切り分けるのは至難の業。一口で食べきれず、かつ、箸で切り分けにくい具材は、どのようにして食べればよいのでしょうか?

「箸でうまく切り分けられない具材は、原形のまま箸で持って口に運ぶしかありません。一口で食べきれない場合、自分の歯形がついた食べかけを皿に戻すのはマナー違反ですので、皿に戻さず、箸で持ったまま二口目、三口目で食べきりましょう。

ただ、どうしても食べかけを一旦、皿に置きたいということもあるかと思います。その場合は、“忍び食い”といって、歯形についた部分をリスのように細かくかじって平らにし、歯形が目立たないようにしてから、噛み口を自分の側に向けて皿に戻すようにしましょう」(西出さん)

■5:汁気がたれそうなときに手皿をするのはNG

汁気がたれるときの対処法は?
汁気がたれるときの対処法は?

しっかり味のしみたおでんはおいしいですが、ただ、食べている最中に、汁気がたれて見苦しいことにもなりやすいですよね。だからといって、汁気をこぼすまいとして、左手を受け皿のように添える“手皿”をするのはNGです。

汁気がたれるのが気になるときは、器を持ち上げて食べるか、あるいは、左手を直接添えるのではなく、左手に懐紙を乗せた状態で添えるようにしましょう。同じようなしぐさでも、懐紙を乗せれば手皿のマナー違反にあたりません。

また、牛すじなど串にさしたおでんを美しく食べるコツとして、西出さんは以下のようにアドバイスしています。

「串にさした料理のなかでも、焼き鳥などの焼き物は、先端から奥むかって、味付けを濃くしたり、薄くしたりしているので、味の変化を楽しむべく串のまま食べるほうがよいでしょう。

他方、おでんなど煮物では、煮崩れを防ぐという調理の便宜上、串にさしているのであって、味付けは均一です。串にさした状態で食べるのか、一旦、串から外して食べるのかで、味に違いはありません。

どちらで食べるかはお好みによります。ただ串のまま食べると汁がたれるおそれがありますので、美しく食べるには串から全てはずしてから、箸で食べるほうがよいでしょう」(西出さん)

品格ある大人の女性たるものフォーマルなお店だけでなく、おでんなどカジュアルな食事シーンでも美しく振る舞いたいものですよね。今回のご紹介したNGマナーをご参考に、冬の味覚おでんをみんなでおいしく味わいましょう。

西出ひろ子さん
マナーコンサルタント・美道家
(にしで ひろこ)マナーは相手の立場にたつ『相手ファースト』という真心マナー®︎とおもてなし礼法®︎を伝え、互いに幸せになる生き方をマナーを通じて伝える第一人者。企業のコンサルティングでは、収益をあげるビジネスマナーと人財育成をおこない、結果と成果をだす敏腕マナーコンサルタントとして活躍中。クライアントには、お客様満足度NO.1のタイトルを取得している企業多数。一方で、NHK大河ドラマや映画、CMなどで、多くの俳優や女優、一流スポーツ選手たちにもマナー指導を行うマナー界のカリスマ。海外でも、プロトコル、エチケット、日本のマナーなどを指導している。その教えを学びに元CAなどすでにマナー講師として活躍している人々などが世界中から訪れ、マナー講師の育成指導もおこなっている。近年は、マナー評論家・マナー解説者としてのメディア取材や出演依頼も多数。著書・監修に28万部の「お仕事のマナーとコツ」(学研プラス)、「運命を味方につけるプリンセスマナー」(河出書房新社)、「運のいい人のマナー」(清流出版)など、国内外で9085冊以上。最新刊「さりげないのに品がある 気くばり美人の基本」(かんき出版)は2月3日発売。著者累計100万部以上
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この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美