米国海軍向けに開発されたアーカイブをモチーフとするだけあり、『ブラックベイ P01』は随所に語りどころが満載。誕生の背景からディテールまで、その詳細をつまびらかにしよう。

懐かしくも新しい’60年代的ダイバーズウォッチ

『ブラックベイ P01』¥388,000 ●ケース:ステンレススティール ●ケース径:42㎜ ●自動巻き ●200m防水(日本ロレックス〈チューダー〉)
『ブラックベイ P01』4時位置に配された大きめのリュウズやエンドリンクのデザインなど、’60年代に開発されたプロトタイプ『コマンドー』の意匠を受け継いだダイバーズウォッチ。時針と秒針の先にはブランドアイコン「スノーフレーク」が。COSCによるクロノメーター認定を取得した自社製ムーブメント「MT5612」は約70時間のパワーリザーブを誇る。 ●ケース:ステンレススティール ●ケース径:42mm ●自動巻き ●200m防水 ¥388,000(日本ロレックス〈チューダー〉)
可動式エンドリンク
ベゼルの回転を防ぐ可動式エンドリンク。’60年代アーカイブのデザインを踏襲したエンドリンク。12時側が可動する構造になっており、これを閉めることで両方向に回転するベゼルをロックすることができるようになっている。
マットなサテン仕上げ
マットなサテン仕上げがタフさとエレガンスを両立。ステンレススティールのケースは丁寧なサテン仕上げが施されている。鈍にび色いろの落ち着いた輝きは、質実剛健さとともに上品さもアピール。厚さ6.5㎜と薄仕立てなのも紳士に好適だ。
ラバー&レザー
クラシックかつ機能的なラバー&レザーコンビ。ストラップはラバーをベースに茶のレザートリミングを施している。ドレス感を高めつつ、汗に強い機能性も備えた現代的素材だ。バックルもケースと同様にサテン仕上げが施されている。  

『ブラックベイ P01』のPは、プロトタイプに由来している。これは、1960年代に技術の粋を集めて開発されつつも日の目をみなかった、知られざるアーカイブ時計へのオマージュとして当作が誕生したためだ。

チューダーは、50年代から米国海軍向けにダイバーズウォッチを製作しており、1967年に第二世代の開発に向けた一大プロジェクトを始動させた。

米国政府の基準を満たすため、当時最新の調査と技術者のノウハウを結集して新型の開発が進められる中、ヒンジ式のエンドリンク(ラグ部分を覆うフード状のパーツ)という新たな特許申請技術を採用したプロトタイプが誕生した。それが『コマンドー』と名付けられた一本である。

これが’60年代のアーカイブ

『コマンドー』の名が与えられたプロトタイプ。『ブラックベイ P01』と比べると、全体のムードを踏襲しつつ、針のデザインなど細部をアップデートしていることがわかる。
『コマンドー』の名が与えられたプロトタイプ。『ブラックベイ P01』と比べると、全体のムードを踏襲しつつ、針のデザインなど細部をアップデートしていることがわかる。

その後も改良が続けられたものの、ついに定番化されることなく幕を閉じた『コマンドー』だったが、実験的な意欲作としてアーカイブにその名を刻んだ。

そんな幻の逸品の精神を受け継いで再誕したのが『ブラックベイ P01』なのである。機械式時計には男心をくすぐるロマンがあるが、同作にはチューダーが重ねてきた挑戦の歴史が宿っている。

そんな秘めたるストーリーは、名品を所有する喜びをいっそう深めてくれるはずだ。 

※2020年冬号掲載時の情報です。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2020年冬号より
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唐澤光也(RED POINT)
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