イタリア紳士ミケーレ・ボナンさんの紳士論

ミケーレ・ボナンさん
ミケーレ・ボナンさん 撮影/仁木岳彦

「自身を育んだ環境や歴史への敬意が紳士としての素養を磨く」

由緒ある名家のもとに生まれ、古都フィレンツェで育った紳士、ミケーレ・ボナンさん。この地に古くから根付いた職人文化を深く愛し、装いからインテリアまですべてビスポークで仕立てるという美意識高き彼は、「フィレンツェへの敬意と誇りが、私のアイデンティティの重要な部分を占めています」と語る。

そんな彼の考える紳士像とは、「人としてのモラルや知性を大切にした上で、自身の感性に響く価値ある美しいものを尊重し、それらに囲まれ充実したライフスタイルを送っている男」だという。

しかしそれは、必ずしも金銭的価値の高いモノだけを尊重するという意味ではない。「自らを育てた環境や歴史、そして人々への敬意を持つこと。そして、そんな日常を通して気づかないうちに培われていく感性こそが、紳士としての素養を育てるのです。もちろん幸運な家庭に育った人なら、自然に紳士道の基本は備わるでしょう。しかしたとえ恵まれた環境になくとも、文化や教養への理解を深め、自分自身に挑戦しながら生きていけば、徐々に身につけていけるものだと思いますよ」(文/森 昌利)

Michele Bonan(ミケーレ・ボナン)さん
建築家
ミラノ生まれ、フィレンツェ育ち。オーストリア・ハンガリー帝国をルーツに持つ由緒正しい家庭環境で、美しいものに囲まれて育つ。フィレンツェ大学建築学科卒業後、建築家の道に。「ルンガルノ・ホテル」を代表するホテルデザインに加え、世界各国のセレブリティたちの屋敷の内装を手がける。今回撮影したフィレンツェの屋敷は、ルネサンス期のコルシーニ家の屋敷を自ら修復改装したものだ。
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WRITING :
中野香織
コーディネート :
森 昌利・大平美智子