「自粛」の「粛(しゅく)」の訓読みは? わかっているようであいまいな部分のある日本語を読み解きます!
新型コロナウィルスの感染予防のため、日本政府から「緊急事態宣言」が発令されています。
この対象地域外となる岐阜県が、県独自の「非常事態宣言」を発表したことが話題になっていますね。「国の緊急事態宣言とは異なる総合対策」という意味で、「緊急」と異なる「非常」という言葉を採用しているところが印象的です。
「非常」は「常(つね)に非(あら)ず」という意味ですが、では「緊急」とはどんな意味でしょうか?
「急(きゅう)」という字の「急ぐ」という意味はすぐに連想できるものの、「緊」のほうはどうでしょうか?
「緊急」という言葉の意味、意外と明確に説明できないのでは?
…というところで本日の1問目です。
【問題1】「緊々」ってなんと読む?
「緊々」という日本語の読み方をお答え下さい。
ヒント:「強く身に迫るさま」という意味の言葉です。
<使用例>「私たちの行動が、1か月後の社会環境を左右するんだ、っていう重みを緊々と感じるわね」
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 緊々(ひしひし) です。
「緊急」の「緊」という漢字はもともと「糸をきつくしめる」ことを表現した漢字で、この一文字で「ひきしめる」「差し迫る」という意味を持ちます。
「緊々(ひしひし)」という日本語は、緊張感が大変に高まった状態を表しますが、
「緊張」という日本語は「かたくしまる=緊」+「はりつめる=張」という同類の意味を持つ漢字を重ねて、「さしせまって、はりつめた状態」を強調する熟語です。
「緊急」は、「急ぐ」という意味を単純に強めた熟語ではなく、「重大で即座に対応しないといけないほど、差し迫っている」ことを意味します。
言葉の意味を詳細にひも解くと、「緊急」という日本語を政府が公に使用する、という事の重みを、切に感じますよね?
今まさに、一人一人の行動が、未来の明暗を分ける重大な時ですので「少しくらいなら」という油断は禁物。気を引き締めて、ともに「緊急事態」を乗り切ってまいりましょう。
さて、2問目は「自粛」という日本語を読み解きます。
【問題2】「粛む」ってなんと読む?
「自粛」の「粛(しゅく)」の字の訓読み、「粛む」という日本語の読み方をお答えください。
ヒント:「あやまちのないよう、行動などを控えめにする」という意味の言葉です。
<使用例>「不安で実家に帰りたい気持ちはあるけれど、感染拡大防止のために、粛むことにしたの」
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 粛(つつし)む です。
「慎(つつし)む」という表記がポピュラーですが、「自粛」の「粛」も、訓読みは「粛(つつし)む」なのです。
日本の法律では、「緊急事態宣言」下であっても、人権保護の見地から、個々人の行動を強制しない…という現状に関する是非が、各所で取りざたされています。
「法律」とは何でしょうか?
「社会秩序を維持するために強制される規範。法(ルール)」。
ではありますが、日本という民主主義国家における法律は、独裁者が定めたものではありません。
民主的に日本人全体の意向を組み入れた上で作り上げたルール、という理論になります。
緊急事態であっても行動を強制できず、「自粛=自分自身で粛む」ことを呼びかけるにとどまる法律である、ということは、裏を返せば、「我々の国は、強制せずとも自ら粛むことのできる人間から成る」と、多くの先人が自分や他人を信頼してきたからこそ、成り立ってきたルールなのです。
先人に信頼されている、という自覚と誇りを持って、自分にできる限り、粛みましょう。
本日は「緊急事態宣言」「自粛」という昨今のホットワードの理解を深めるため
・緊々(ひしひし)
・粛(つつし)む
という日本語をおさらいしました。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱