2020年2月下旬から3月初旬より、在宅勤務、テレワーク、リモートワークといったワードが世に出始め、ビジネス界でも、大規模なイベントやカンファレンス、ミーティングなどが相次いで中止。
一方、4月7日(土)に7都府県へ緊急事態宣言が発令後も、在宅勤務用のテレワーク化の遅れやリモート不可能な現場仕事などによって、日々公共交通機関で出社や移動をするビジネスパーソンも少なくありません。
そんな中、女性労働者への「しわ寄せ」を防ぐために何ができるのか?を明らかにするため、女性リーダー育成に焦点を当てた「ダイバーシティ&インクルージョン」を専門とする、オーストラリアのコンサルティング企業「The Dream Collective Global Pty Ltd(以下ザ・ドリーム・コレクティブ)」が、パートナー企業6社に聞き取りを行い、企業の新型コロナウイルス対策の現状を調査しました。
本記事では、その調査内容からわかったことを端的にご紹介します。
新型コロナで変わった働き方。日本女性のさらなる活躍へのポイント4つ
日本でダイバーシティー&インクルージョンの問題に取り組んでいる、最先端の企業と言える、ザ・ドリーム・コレクティブのパートナー企業は、こちらの画像で紹介している全20社。サントリーやユニリーバ・ジャパン、リクシルやスターバックス、リクルートなど、誰もが聴いたことがある企業ばかりです。
これら企業の対応から見えた、日本の女性活躍への影響を分析した4つのポイントを、さっそくご覧ください。
■1:迅速な対応が鍵!「柔軟性」と「配慮」が第一優先
まずパートナー企業6社のうち、日本政府からイベント自粛、休校措置等の発表があったことを受け、早期に在宅勤務等の対策に取り組んだ企業は100%という結果が判明。
例えば、六本木のラグジュアリーホテル「グランド ハイアット 東京」では、ホテル全体の衛生管理強化など状況に応じて迅速に対応すべく、施設の定期的な消毒や社員のマスク着用、入館時の体温チェック、従業員へのリモートワークの推奨など、あらゆる対策を講じ、緊急な状況下でお客様と従業員へ、配慮しているのだとか。
この前代未聞の問題に対し、多くの企業は在宅勤務などへの移行が難しい状況である中、これは、以前より「ダイバーシティ&インクルージョン」に取り組み、多様な働き方を模索してきたからこそ、迅速かつ柔軟に対応できた証拠、と言えそうです。
■2:既存ツールで十分!遠隔コミュニケーションは「密度」、「頻度」、「アクセシビリティー」が重要
多くの企業が在宅勤務の措置を取る中で、重要となってくるのは、社内外とのコミュニケーション方法です。
スノーボードやマウンテンライフスタイルを扱う「バートンジャパン」では、お客様からの電話受付を一部メール受付に変更し、社内ではTeamsを使ってコミュニケーションを促進したため、社員同士の効率的なテレワークを実現。在宅勤務が続いているアメリカ本社との連携においてもスムーズに進んでいるのだとか。
また、世界40か所に拠点を持つ製薬企業の「ユーシービー」では、ネットワーク環境について全世界的に負荷がかかり、会議運営に支障をきたすことがあったため、新しい会議ツールを前倒しで導入することで、改善を図ることができたのだそう。
コンタクトレンズメーカーの「クーパービジョン・ジャパン」は、リモートワーク開始と同時に、災害時に活用している安否確認サービスで毎朝、安否確認のメールを配信しタイムリーに全社員の健康状況や、業務形態の確認を行うという、ユニークな対応を実施。
こうして見てみると、遠隔コミュニケーションには密度、頻度、アクセシビリティーが重要となりますが、それらに必要な技術は既に存在しており、今回の危機が柔軟な働き方へのスイッチとなったようです。
■3:リモートワークと子育ては両立する。男女の労働環境改善がポイント
全国の公立学校の休校措置に伴い、多くの企業が、直後から、対策を練り、さまざまな対応を行ってきました。ザ・ドリーム・コレクティブのパートナー企業の場合は、既に在宅勤務の体制ができていたことから、スムーズに対応ができたのだそうです。
住宅設備機器・建材メーカーの「LIXIL(リクシル)」では、以前から働き方改革の一環として、ITインフラの活用によるテレワークを推進し、女性や育児・介護中の社員に限らず、多くの従業員がリモートワークを行える環境を整備。
新型コロナウイルス感染拡大が深刻化する前から、お客さま、従業員などステークホルダーの健康と安全を守ることを最優先とし、現在ではグローバルで全社的に在宅勤務を実施。
また、政府からの休校要請を受け、子供の安全を確保するために、会社を休まざるを得ない従業員には特別休暇を設定するなど、柔軟に対応しているのだそうです。
日用品・食品メーカーの「ユニリーバ・ジャパン」では、2016年7月から、働く場所・時間を社員が自由に選べる新しい働き方「WAA」(Work from Anywhere and Anytime) を工場などを除く全社員に導入。
理由を問わず、回数制限もないため、男女を問わず、9割を超える社員が活用。通勤時間が減った分、育児・家事をしている男性社員のケースもあるとか。
平常時から柔軟な働き方があったことで、COVID-19対応でも、派遣社員・常駐業務委託社員を含む全社員(工場など除く)が、迅速かつスムーズに在宅勤務に移行できたといいます。
今回のような予測不可能な事態に適応するためには、多くの努力が必須。リモートワーク、柔軟な働き方の広がりにより、男女共に子育てに参加しやすい環境ができ、女性の子育てへの負担を減らすことで、女性が自身のキャリアで活躍し続けられる社会づくりに繋がっていくようです。
■4:緊急事態宣言で実証された、新しい働き方への可能性。今後の取るべき対応とは?
家事・育児について、女性への負担や犠牲が多い現状を打破し、女性が働きやすい環境をつくるため、今後企業や政府がどのような施策をするべきかーー。パートナー企業からあがった意見は、下記の通り。
・テレワークの促進やワーキングマザーへのサポート
・安定した生活が維持できるだけの給料や社会保障の法制化
・女性だけに特化した対策ではなく、性別関係なく、労働環境すべての整備
ユニリーバ・ジャパンは、「家庭、学校教育、企業などさまざまな場で、一人ひとりが自分の中のステレオタイプに気づき、マインドセットを変え、誰もが自分らしく働き生きるために、何が必要かを考えて、アクションが取れるようにしていくこと、そうできる文化をつくること、が大切です」と語っています。
新型コロナで実証された「新しい働きかた」を未来に発展させるためには、 女性、男性共に成長、そして意識を高めるために必要な施策を整備し、お互いにサポートしあえる環境を保つことが、何よりも重要なようです。
ザ・ドリーム・コレクティブ代表のサラ・リューさんは、下記のように述べています。
「この危機的状況から私たちが見たのは、いったん決断すれば、簡単に変更できるということです。今回の新型コロナウイルスの状況下で、私たちは企業のリモートワークへの移行が即時に行われたのを見ました。ジェンダーの平等に関しても同じことができます。
私たちの偏見と固定された考え方が前進への高いハードルとなっていたことを認め、柔軟で包括的な方法で長期的に働くことを維持するために、取り組む必要があります。そうすれば、日本での女性の昇進が加速すると確信しています」
この非常時にも、有休やフレックスタイムなど、従来からある制度の使用を推奨するだけであったり、突然、休職扱いにされてしまうなど、柔軟な切り替えや、多様な働き方への対応に苦慮している企業や働き方の現場の状況を、身近の方やニュースなどで耳にしたこともあるのではないでしょうか?
日本における「ダイバーシティ&インクルージョン」のリーディングカンパニーと言える、ザ・ドリーム・コレクティブのパートナー企業たちがロールモデルとなり、今回の経験を糧に、増え続ける「働く女性」たちがさらに輝く未来へ繋がることを願ってやみません。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 神田朝子