日本でも緊急事態宣言が出てから、多くの企業が社員をWFH(ワーク・フロム・ホーム)、いわゆるテレワークにさせたことで、新しい仕事スタイルが確立しつつあります。とはいえ、未だ戸惑いながらコンピューター前に座り、ドギマギしながらビデオ会議に対応している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

それもそのはず、日本では会議や打合せは大抵会社で行い、直接対面が当たり前だったのに、その場所は自宅になり、オンラインにシフトされたのですからー。しかも世界的パンデミックで不安も絶えないなか、新しいスタイルに適応するのは、どれだけ順応性の高い人でも大変なところ。

ましてやエグゼクティブやビジネス・プロフェッショナルであれば、社内・社外共に、画面越しに相手に見える環境も含めた自分のプレゼンスを適切なものにしておきたいのは当たり前ですよね。

しかし、今更誰にも聞くことができず、戸惑いを感じていらっしゃる方が大変多く、「どうしたらいいの?」という相談も多数いただいております。

今回は、ビデオ会議で注意すべきポイントを、改めてまとめてみました。ぜひ、仕事シーンで活用なさってください。

今さら聞けないビデオ会議の常識。服装は「海外出張の機内服」がベスト!?

テレワークの影響で売り上げが伸びたのは意外なアイテムだった  (C) AFLO
テレワークの影響で、仕事用ワードローブの基準に変化が!?  (C) AFLO

ビデオ会議の装いの極意は、「海外出張で、国際線に10時間以上乗る機内仕様」です。

ビデオ会議は、TV出演でもビジネスのメッセージ映像撮影でもありません。そして、その背景はスタジオでもサロンでもなく、自宅です。元々自宅に仕事部屋や書斎がある方は別として、大抵の方は日常生活空間のどこかを背景としてビデオ会議を行うことがほとんどでしょう。

緊急事態宣言が解除され、規制が緩和されているとはいえ、第二波、第三波の可能性を否めない今、危機感を伴う緊張感からの完全なる解放は望めません。そんな現状だからこそ、自宅からのビデオ会議で、あなたの「素の姿」をチラリと垣間見せるのは、相手に親近感や安心感を与え、心理的距離を縮める効果があります。それは、立場ある皆さんによるデリカシーある配慮にもなるのです。

そのようなことを考慮すると、適切なのは、仕事の出張で長い長い時間機内で過ごす際の装い。それは、上質シンプルな「エフォートレス・スマート・カジュアル」です。つまり、「国際線に10時間以上乗る海外出張する際の機内での装い」。空港ラウンジに立ち寄り、ビジネスクラスに搭乗できるけれど、不要な力の抜けたスマート・カジュアルなスタイルです。

仕事相手に会っても大丈夫な上質感のある素材、快適で着心地良く、シワになりにくくて通気性・伸縮性があり、肌触りが良いもの。クリーンでセンスを感じさせるつくり、そういったポイントを意識することで、自分も快適な上に相手にも心地よさを提供でき、円滑なコミュニケーション、実のあるミーティングが可能になります。

ビデオ会議スタイルは「海外出張の機内服」が最適 !装いのポイント5

■1:トップスは「肌触り良し、締め付けなし」のアイテム選びが鉄則

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ビデオ会議のトップスは上質素材でシンプルなスタイルがベスト

トップスは、できるだけリラックス感のある素材や色を選びましょう。

■選ぶポイント■

素材:細い糸で編まれ、表面が滑らか。締め付け感のないニットやジャージ素材。

色調:長時間着用で自分も疲れず、相手にも視覚的に負担をかけない、軽めのベーシックトーン(ミディアムからライトグレー、ベージュ、トープ、ライトネイビー)や、ライトなアイシーカラー(男性のドレスシャツにあるような薄い色)。
※色彩心理活用の点でお勧めは、時間を長く感じせないブルー系(ラベンダーなども含)、筋肉の緊張を緩和させリラックスさせるピンク系。

柄:柄は無地がベスト。
※柄は顔の印象を弱める上に、うるさい印象になるので要注意。

着用感・触感:体を締め付けない、肌触りの柔らかなもの。​
※触覚を満たすことにより不安な気持ちが癒えます。

襟元:襟のないものがベター。​
※ビデオ会議では胸から上しか相手に見えないため、襟が顔の周りに存在すると顔自体がすっきり見えません。ここは要注意です!

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NY PAUSEの最中にミディアムグレーのカシミヤの薄手トップスを愛用中

私がNY PAUSEの最中に愛用していたのは、出張(機内)仕様の上質で肌触りの心地よいGRISALのスマートカジュアルなトップス。細いカシミヤ糸で縫い目なく筒状に編まれているので、肌に縫い目が当たるストレスなし。色はミディアムグレー。体を締め付けない、肌触りの柔らかなもので触覚を満たすことで、人間は安心します。

■2:ボトムスには「レギンス、ジョガーパンツ、ラウンジパンツ」を

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シンプルなホワイトの、ニットのジョガーパンツ

ビデオ会議で相手に見えているのは胸から上、でも不意に動いた瞬間見えてしまうこともあるのがボトムスです。見えても恥ずかしくないものを着用しておくことは、重要な危機管理。シンプルかつ動きやすいデザインを意識しましょう。

■選ぶポイント■

スタイル:厚手生地のレギンス(下着のようにならないもの)、ジョガーパンツ、ラウンジパンツ(ワイドパンツ)
※フラットシューズやパンプスを合わせたら、外で人と会えるかどうかが判断基準

着用感:締め付けはないけれど、シンプルですっきり。
※こういう状況だと着心地・履き心地はトップス以上に重要。

私は、こういうときこそ、白ニットのジョガーパンツで新鮮で爽やかな気分を自らに提供中。履いていて快適な上、おしゃれな満足感もちょっと満たされるものを選ぶことがポイントになります。

■3:耳元には小ぶりで上品に煌めく「イヤリング」を

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NY PAUSE中、最も使用回数が多いのがSatomi Kawakita Jewelryのピアス

胸から上だけが相手に見えるビデオ会議だからこそ、耳元に小さいけれど輝きが欲しいもの。でも背景は自宅なので、ビジネスイヤリングよりも、よりカジュアルでデザインに遊びのあるものも良さそうです。

■選ぶポイント■

OK:よりカジュアルでよりデザイン性に飛んだもの。そのほか好きな色石や地金など。
※あなたの「素」を垣間見せることで、相手にも安心感を与えることができます。

NG:揺れるデザインのもの。
※ビデオ会議は顔がメインで写り、他に目線をはずせません。終始揺れるものが視界に入ると、相手に大きな視覚的ストレスを与えるので要注意です!

私は、NY PAUSE中、最も頻繁に使用していたのがSatomi Kawakita Jewelryのピアスです。従来のオン・ビジネスシーンで着けるものよりも、さりげなく、ほっとするデザインを意識的に選んでいます。一般的なホワイト・ゴールドより色味に温かみのあるトーンで、なんともいえない優しい色合いが肌と馴染みます。顔周りに自然な輝きをまとえるので重宝していますよ。

■4:メイクは「自然な艶と血色(口元と頬の赤み)」を

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愛用しているのは、Glossierのオイルセラム ハイブリッド「futuredew」
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SAINT JANEのリップグロスで上品な艶めきをオン

普段仕事の時にしているようなきりりとしたメイクは不要。背景は家、装いはスマートカジュアル、そして、こういう時期だからこそ、相手に安心感を与える顔と表情でいることがファースト・プライオリティーです!

■選ぶポイント■

肌:明るく潤いがある、適度な艶感を。
※ツヤは強すぎると、画面上でテカリになるので要注意

チーク:頬骨の位置を明確にして表情がはっきりさせる。顔に血色を与える。

リップ:自分の血色を強調する赤みを加えてくれる潤い系(ツヤではなく)、グロスやシアー口紅など。

アイブロー&マスカラ:目元で活力を表現するため、まつげ、眉毛をナチュラルにはっきりさせ、上向きに整える。

私は、クリーンビューティーなアイテムをヘビロテしています。肌には基礎化粧の最後に、Glossierのオイルセラム・ハイブリッド「futuredew 」を使用。肌を瞬時に明るくして内側から滲み出るような輝きを持続してくれます。それをルースパウダーなどで調整。口元にはSAINT JANEのダスティーローズカラーのグロス(CBD入り)や、BITEのリップ・クレヨンが大活躍しています。

■5:ジャケットは不要

会社でのオンライン会議では、正式感を表現するために、ジャケットを着用している方もいるでしょう。しかし、自宅からのオンライン会議にジャケットは不要。まず自宅の背景に合わないのはおわかりですね。

クライアントとの会議でシリアスな内容を話す必要がある場合は、文脈としてジャケットの着用は相応しいですが、それ以外の場合には不要です。

ジャケットは座っているとき、肩のラインや襟元が体から浮き上がってしまうことが多く、かえってだらしなく見える恐れもあります。私がクライアントの記者会見のコンサルティングや立ち合いをする際には、ジャケットの捌(さば)き方や座る際の細かな注意が常に欠かせないほどですから。

服を着替えることが、精神を整える!?「ドレス効果」が救ってくれること

最後に、この状況下でこそ「装うことがあなたのメンタルを救ってくれる」というお話で締めましょう。NYよりも厳しい外出禁止令が出されていたパリ在住の友人が送ってくれた、パリの日本大使館医務官からの「外出禁止中のメンタルマネジメント法」の中に、「服を着替えてみましょう」というアドバイスがありました。正にこれは印象による認知心理でいうところの「ドレス効果」。

長い期間家から出なくなると、ついだらだらとしてしまうこともあるでしょう。ビデオ会議がなければ、楽チンな格好で1日過ごすこともあるはずです。緊急事態宣言が解除され規制が緩和するとはいえ、以前と全く同じとはいかないはずです。そんな状況下では、やる気の出ない日だって勿論ある、それが人間です。

しかし、cabin fever(屋内に長期間閉じ込められることによって生じる閉所性発熱、ストレス、イライラ)になってしまう人も多く出てきているとされる今だからこそ、例え上半身だけでも服を着替えるという行動は、効果的かつ最高の気分転換になります。

選んだ服の色による視覚刺激、服の素材による触感刺激、その着替えた姿を鏡で見ることで脳が認知してモードが切り替わり、顔つきも晴れやかになるのです。これが印象による認知心理効果は、相手に対してだけでなく、自らにも発揮されるのです。

どうぞ、国際線に10時間以上乗る海外出張する際の機内での装いを基準に、今の時代性にあった装いでビデオ会議に臨んでみてください。不要な緊張感をリリースし、肩の力がいい具合に抜けた「素の姿」のあなたなら、全てうまくいくはずです!

この記事の執筆者

東京生まれ、ニューヨーク在住。国際イメージコンサルタント。武蔵野美術大学卒業後、パーソンズ美術大学(米国・NY)に留学、「ファッション&イメージコンサルティング」コース修了、ディプロマを取得。フリーランスを経て2004年、ニューヨークで株式会社リアル コスモポリタンを設立、CEOに就任。ニューヨークと東京を拠点とし、国際イメージコンサルタントの第一人者として25年超にわたり活躍。日欧米亜合わせ数千人の、国際的に活躍するトップエグゼクティブ、政界・財界人をはじめとしたハイプロファイリングクライアントのコンサルティングを手掛ける。AICI(国際イメージコンサルタント協会)ニューヨーク支部元ボードメンバー。スティービーアワード審査員。主な著書『仕事力をアップする身だしなみ 40のルール』(日本経済新聞出版社) 、『Premium Image management for Men』DVD監修(SONY PCL)、『NY流 魅せる外見のルール』(秀和システム) 等
公式サイト:Real Cosmopolitan Inc.
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WRITING :
日野江都子
EDIT :
石原あや乃