都知事、府知事、県知事…「知事」って役職はなぜ「知る事」と書くの?

最近特に、地方自治体のリーダーの活躍が注目されていますね。大阪府の吉村知事、東京都の小池知事のリーダーシップは、各所で話題になっています。

さて「知事」という言葉、当たり前に使っていますが、改めて考えると、役職名としては不思議な成り立ちの言葉だと思いませんか?

…ということで、本日の1問目です。

【問題1】「知事」の語源は?

地方行政の長を表す日本語「知事」の語源として正しいものを、以下の選択肢の中から選んでください。

1:地域の長老

2:習い事の師範

3:寺の庶務係

「知事」という役職名が、もともと指していたのは?
「知事」という役職名が、もともと指していたのは?

さて、正解は?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。

正解は↓に!!
正解は↓に!!

正解は… 3:寺の庶務係 です。

なんと、「知事」の語源はこれだったのです!
なんと、「知事」の語源はこれだったのです!

「知事」は「事を知ること・つかさどること」を意味するサンスクリット語「karama-dana」の漢語訳で、5世紀ごろの中国で「寺院の雑事や庶務に当たる役職名」として使われ始めた言葉だと言われています。

その後、禅宗寺院が急速に発展したことで「知事」の業務内容が複雑化し、6つの業務パートに細分化した「6知事」が置かれる事になりました。

それが、10世紀から始まる宋の時代になって「地方長官の名称」に転用され、それ以降に日本に入った言葉、ということです。

「寺の雑事や庶務に当たる役職」といえば、全体のために働く、実質「雑用なんでも係」でしょう。

その役職名が、いま、地方自治体のトップの役職名に転用されている、と知ると驚きますが、大阪府の吉村府知事の真摯な仕事ぶりに感動した人々から

「#吉村寝ろ」=皆のために働いてくれるのはありがたいが、ご自愛を忘れずに…

という意味の、温かなSNSハッシュタグが生まれた昨今の動向と併せて考えると、感慨深いですね。

さて、二問目は「知」という漢字の入った難読漢字クイズです。

【問題2】「知己」ってなんと読む?

「知己」という日本語の読み方をお答えください。

ヒント:「自分のことをよくわかってくれている親友。転じて、ある程度つきあいのある知人」という意味の日本語です。

<使用例>「彼は10年来の知己で、困った時には、いつも親身になってくれました」

「○○」と読み仮名2文字です。
「○○」と読み仮名2文字です。

…さて、正解は?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。

正解は↓に!!
正解は↓に!!

正解は… 知己(ちき) です。

正しいニュアンスでこの言葉を使えるよう、語源をひもといてみましょう。

今でもかしこまった場ではよく使われる表現です。「ちこ」と誤読すると恥をかいてしまいますので、ご注意ください。

「知己」の語源は、古代中国の歴史書『史記』に由来します。それまで、さまざまな上司になかなか才能を認められずに不遇の時代を送ってきた豫譲(よじょう)という人物が、初めて自分の才能を認め、重用してくれたリーダー・智伯(ちはく)が、戦場で豫譲を含めた部下を逃がし、自分は戦死し、はずかしめられた…と知った時、復讐を誓った言葉「士は、自分を知ってくれる人(=知己)のために命を投げ出す」から来ています。

古代中国ともなれは、現代よりも更に、リーダーの資質によって個人の人生を左右される部分が大きいでしょう。「知己」という言葉は、敬愛するリーダーに向け「自分を知ってくれる人」という、感謝と愛情を込めた言い回しから生まれたのです。

「知己」は現在では「知人」という意味でも使われる言葉ですが、語源をひも解いても「単なる知人」ではなく「よく知った人、自分に理解のある知人や友人」を指して使うのが、しっくりくるニュアンスです。

ですので、スピーチなどで、良い意味で紹介したい人物を「私の○年来の知己」などと表現します。

本日は、

・「知事」という役職の語源

・「知己(ちき)」という言葉の読みと語源

をおさらいしました。

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小出 真朱