「稀男」「伊達男」「好漢」「快男児」…今でいう「イケメン」はどれ?
本日5月28日は、平安時代の歌人・在原業平(ありわらのなりひら)の忌日『業平忌(なりひらき)』です。
『古今和歌集』の序文に記された「六歌仙」の一人として、学生時代、和歌とともにその名を暗記した、という思い出、皆さまにあると思います。
代表的な和歌をひとつ、思い出してみましょう。
世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし ~『古今和歌集』より
桜の開花は、現代でも日本人の心をそわそわと浮き立たせるものですが、その「桜がこの世になければ、人の心はのどかであっただろうに…」という意味のこの歌、大変ロマンティックで美麗です。
現代的な感覚ですと、気障(きざ)な感じすらしますよね? よほどの美男子でないと、この歌を詠んでも絵にならなそう…というような偏見さえ頭をよぎりますが(笑)、在原業平は美男子で有名な人物でもあります。
多くの女性と浮名を流した、と言われている業平の詠んだ歌は、寂しい情景を詠んだ歌でさえも、言葉のセレクトなに独特の麗しさが感じられます。さすが六歌仙。
しかしながらモテる男性というのは、他の男性のやっかみの的でもあるのか、天皇家の血筋をひいていて才気煥発なのに、宮廷での出世は遅かった、と言われています。
また、鎌倉時代につくられた『和歌知顕集』には、在原の業平が関係した女性の人数は3733人! などと、どう考えても大げさな事が書かれており、後年には、業平を茶化した内容の『色ごとの 寸暇があれば 歌を詠み』という川柳まで登場しています。
…前置きが長くなりましたが、本日1問目のクイズです。
【問題1】「稀男」ってなんと読む?
ヒント:「世にもまれな美男」「たぐいまれな好男子」という意味の日本語です。
<使用例>「あんなに容姿の整った男性、久しぶりに出会ったわ! まさに稀男という感じなの!」
・・・さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 稀男(まれおとこ) です。
「稀(まれ)」という字は「希」という字のもとの漢字ですが、いまでもしばしば使用されますので、覚えておいて損はありません。
「稀(まれ)」は「希少である・少ない・珍しい」という意味ですが、
「稀男(まれおとこ)」は単なる「珍しい男性」という意味ではなく「世にも稀(まれ)な美男・好男子」という、大変な誉め言葉です。
最近の若者言葉で表現するなら、「超イケメン」の上を行く「スーパーイケメン」というところでしょう。
大人の女性として、誉め言葉のレパートリーは多いほど良さそうですし、やや古風な表現は、知的な印象を与えますので、ぜひ覚えておきましょう。
ということで、引き続き「男性に対する誉め言葉」の日本語クイズです。
【問題2】「さわやかで素敵な男性」の言いかえ言葉はどれ?
以下の選択肢の中から、「さわやかで素敵な男性」という意味を持つ日本語を選んでください。※正解は一つとは限りません。
1:好漢(こうかん)
2:伊達者(だてしゃ、だてもの)
3:勇(いさ)み肌(はだ)
4:男前(おとこまえ)
5:快男児(かいだんじ)
…さて、正解はいくつ?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 1:好漢(こうかん) と、 5:快男児(かいだんじ) です。
4:男前(おとこまえ) は△です。
選択肢それぞれの意味を見てまいりましょう。
1:好漢(こうかん)…さっぱりした気性の好ましい男。
2:伊達者(だてしゃ、だてもの)…しゃれた身なりの粋な男性。
3:勇(いさ)み肌(はだ)…威勢が良く、弱気を助ける男らしい気質。
4:男前(おとこまえ)…男性の容姿や顔立ち。/美男。/性格や態度が男らしいこと。
5:快男児(かいだんじ)…さっぱりした性質の、快活で好ましい男。
…それぞれ微妙にニュアンスが違いますが、すべて「男性に対する誉め言葉」です。
【問題2】の回答として△になった「男前(おとこまえ)」には、直接「さわやか」というニュアンスは入っておらず、しかし誉め言葉としての「男らしい」という意味がありますので、この言葉を使う人にとって「男らしい=さわやか」というイメージであったならば不正解にはならない、ということになります。
本日は、美男としても有名であった歌人・在原業平の忌日にちなんで、
<男性に対するさまざまな誉め言葉>
・稀男(まれおとこ)
・好漢(こうかん)
・伊達者(だてしゃ、だてもの)
・勇(いさ)み肌(はだ)
・男前(おとこまえ)
・快男児(かいだんじ)
のニュアンスの違いをおさらいしました。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱