「経典」の読み方がT.P.O.で変化すること、ご存知でしたか? 大事なシーンで恥をかかないよう、気をつけて!
コロナ禍による緊急事態宣言下の間「不要不急の外出ではないけれど、いま行うのはためらわれる…」と、多くの方の心を悩ませたイベントが「法事」ではないでしょうか?
大切な方のためのご供養はきちんと行いたいものの、高齢者の出席が多かったりすると、感染対策上、集まることが心配…そんなふうに悩まれた方も多いのでは?「オンライン法要」を行うお寺もあったようですね。
法事は故人のご供養が一番の目的ですが、ふだんはなかなか会えない親族が集まれる場としても、特にリタイア後の高齢者の方々には、楽しみな面も多いのではないでしょうか?
故人が残された人々を引き合わす場をつくってくれるかのように感じることもあります。オンライン法要などでご供養なさった方も、改めて「偲ぶ会」などの名目で、感染対策に配慮しつつ、故人について語り合う場をつくれたら素敵ですね。
さて、本日の1問目です。
【問題1】「経典」ってなんと読む?
「経典」という熟語は「きょうてん(きょうでん)」と読むか、「けいてん」と読むかで、意味が変化します。お寺で読経の際に読みあげる書物は「きょうてん(きょうでん)」「けいてん」どちらでしょうか?
・・・さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 経典(きょうてん・きょうでん) です。
「経典(きょうてん・きょうでん)」と読む場合の意味は「仏の教え、信仰の規範などが記された典籍。経」もしくは「仏教ほか、ある宗教の根本的な教義などが記された書物。教典」になります。
ですので、お寺で読むお経の書かれた書物はまさに「きょうてん・きょうでん」ですし、広義な後者の解釈であれば、キリスト教の「聖書」を日本語上「経典(きょうてん)」と呼んで問題ありません。
日本に仏教が根付いてからの歴史が長いので、「宗教の教典」を指す言葉として、仏教の「経典(きょうてん・きょうでん)」が先にあり「=宗教全般の教義書物を指す言葉」として使われるようになった…という流れの、個人の信仰とは関係ない、歴史の時系列に基づいた日本語です。
「経典(けいてん)」と読む場合の意味は「主に儒教において、聖人・賢人の教えを記した書物」です。儒教は中国の孔子を始祖とする思考・信仰体系ですので、たとえば『論語』は「経典(けいてん)」です。
経典(きょうてん・きょうでん)は「仏教」由来、経典(けいてん)は「儒教」由来
最近の辞書では「経典(けいてん)」の意味合いに「経典(きょうてん・きょうでん)に同じ」と付け加えるものも散見されるようになりました。「経典(きょうてん・きょうでん)=仏教の書物を指してはじまった言葉」と「経典(けいてん)=儒教の書物を指して始まった言葉」を、日本語上は「同じようなもの」と定義していることになります。
しかし、儒教が日本に伝来した歴史は仏教より古いと言われており、つまり「経典(けいてん)」と「経典(きょうてん・きょうでん)」は、古来、系統の異なる教えを記した書物として、使い分けられてきた言葉なのです。
こうした経緯を知ると、大切な故人の法要をお任せするお寺などで「経典(けいてん)」という読み方を使うのは、教養や配慮にいささか欠ける気がしませんか?
また「『論語』は日本で最も有名な儒教の経典である」と紹介している文章などで「経典(きょうてん・きょうでん)」と読むのも、大人の女性としては、いささか恥ずかしい気がいたします。お留め置きください。
さて、2問目です。
【問題2】「経緯」って「けいい」のほかになんと読む?
「経緯」という日本語の「けいい」以外の読み方をお答えください。
ヒント:意味は「経緯(けいい)」と読む場合とまったく同じで、「ものごとの込みいった事情や経過」です。
さて、正解は?
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正解は… 経緯(いきさつ) です。
こちらは、意訳と同じような読み仮名を熟語に適用する熟語訓です。
「経緯(けいい)」より「経緯(いきさつ)」のほうが、やや柔らかな印象の言葉になるので「経緯(けいい)」では硬すぎるな、というシーンでは「経緯(いきさつ)」という言葉…というふうに、使い分けできますね。
言葉のニュアンスは、人の印象を意外と大きく左右するものです。大人の女性として、語彙力を高めて参りたいですね。
本日は
・経典(きょうてん、きょうでん)
・経典(けいてん)
・経緯(けいい/いきさつ)
などの、異なった読み方を持つ日本語の背景をおさらいしました。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱