「狼煙」「煙草」「煙管」…意外な語源が興味深い「煙」に関係する日本語たち!
本日5月31日は、WHO(世界保健機構)が世界的に禁煙を呼びかける「世界禁煙デー(World No-Tobacco Day)」です。
英語表記が「Tobacco」、日本語が「タバコ」。「タバコ」という名称は、古いアラビア語で薬草の一種を表す「tabaq」から来ていると言われ、スペイン語で「tabaco」、フランス語で「tabac」、ドイツ語では「Tabak」など、どの国でも同じ由来を持っていそうな名称で呼ばれています。
ちなみに日本語の「タバコ」は、スペイン語と大変共通点の多い、ポルトガル語の発音がそのまま使用されているようです。漢字で書くと「煙草」で、「禁煙」「愛煙家」「嫌煙家」など、「煙(けむり)」という漢字が「=タバコ」として表現されることが多いですね。
というところで、本日の1問目です。
【問題1】「煙管」ってなんと読む?
「煙管」という日本語の読み方をお答えください。
ヒント:「刻みタバコを吸う道具」の名称です。
こちらは正解率が高そうですね。・・・さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 煙管(きせる)です。
「煙管(きせる)」を辞書で調べると、「乗降駅付近だけの乗車券を持ち、途中区間をただ乗りする行為」という意味も出てまいります。
「キセル乗車」または「キセル」という言葉、みなさまも耳にしたことがあるかと思います。この言葉は、刻みタバコを吸う道具「煙管(きせる)」の形状に由来します。吸い口と先端部分にのみ金属を使い、途中の管の部分が竹で作られている煙管は、「最初と最後だけ金(かね)を使っている」という、シャレから来ています。
現代では乗車券よりもICカードが主流ですから、「煙管=乗車料金をごまかす方法」という日本語も、お若い方はご存知ないでしょう。しかし「煙管」に限らず、こうした日本語の言葉遊び的な洒落心は、忘れずに継承していきたいですね。
…さて、2問目も「煙」の入った難読漢字クイズです。
【問題2】「狼煙」ってなんと読む?
「狼煙」という日本語の「ろうえん」以外の読み方をお答えください。
ヒント:その昔、情報伝達のために使われた煙のことです。
さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 狼煙(のろし) です。
こちらも、難読漢字としては比較的定番なので、ご存知の方も多かったかもしれません。「ろうえん」「のろし」どちらで読んでも、同義の言葉になります。
意味は「急な出来事を知らせるために、藁(わら)や芝などを炊き上げた合図・伝達のための煙」です。煙管以上に、時代劇の中でしか登場しない特殊な「煙」ですが、みなさまご存知ですよね?
現代でも「大きなことが起こる、または起こす時の、きっかけや合図となる行動をとる」という意味の慣用句「狼煙(のろし)をあげる」が、しばしば使われています。
「狼煙」と書いて、なぜ「のろし」なのでしょうか?
「野良(のら)」と、「火」もしくは「気」を表す「し」という音が組み合わさった言葉である、という説や、「のぼるしるし」の略語である、という説、「呪(のろ)す」に由来する、という説など、発音については諸説あります。
しかし「狼(おおかみ)」+「煙」と書く漢字表記については、「昔の中国で、狼の糞を燃やすと、風が吹いてもまっすぐ煙がたちのぼる、と言われていたことから、狼煙の資材として草などに混ぜていた」という説が確定的なようです。
火を焚く資材として、乾燥した獣の糞が使用される例は世界各所にありますが、「狼の糞を炊いた煙は垂直にあがる」という説の科学的な論拠は、まだ出合っておりません。
東洋では、勇猛な英雄を、虎や狼にたとえる文化があるので、主に危機的状況で使用された「狼煙」を狼と関連付けることで、げんを担いだのかもしれませんね。
本日は、煙に関連した難読漢字
・煙管(きせる)
・狼煙(ろうえん、のろし)
の読みと、トリビアをお送りしました。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱