「輸る」「貿る」…訓読みを知ると「なるほど!」な、貿易に関する言葉をおさらい!
本日6月2日は、横浜港と長崎港の開港記念日です。安政6(1859)年のこの日、前年に日米修好通商条約が締結された影響で、ふたつの港が開港したのです。
港といえば、貿易の拠点。本日は「貿易」という言葉を深掘りする、日本語クイズをお送りします。
というところで、本日の1問目です。
【問題1】「貿う」ってなんと読む?
「貿う」という日本語の読み方をお答えください。
ヒント:「商売する」という意味の言葉です。
<使用例>「日本の文化は海外でも注目されているから、民芸品を貿うのも良さそうね!」
さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 貿(あきな)う です。
「商(あきな)う」という表記がポピュラーですが、この字も「貿(あきな)う」です。
「貿易(ぼうえき)」の「貿」という字は、小学5年生で履修する教育漢字ですが、意外と特殊な漢字です。どのあたりが特殊かと言いますと、「貿易」という日本語以外に、この漢字を使用する日用的な日本語が、ほとんど存在しないのです。
国語辞典で「貿」を使用する熟語を調べても「貿易金融」「貿易手形」など「貿易〇〇」と、「貿易」という2字熟語の延長線上にある表現しか出て来ないケースが多く、
漢和辞典でようやく「貿然」「交貿」など「貿易」以外の熟語の例を見つけても、これらは、ほとんどの国語辞典に載っていない言葉だったりします。
では「貿易」とはどういう意味の言葉かというと、みなさまご存知の通り「国際間の商取引。輸出と輸入」になります。
しかし「貿」という漢字の訓読みは、問題1の回答である「貿(あきな)う」1種類のみであり、「貿」という漢字に「外国と」という意味は含まれていません。
また「貿易」の「易」という漢字の意味も「うらなう」「とりかえる」「やさしい」などであり、「外国と」や「国際的な」という意味は含まれません。
「貿易」という2字熟語を、漢字の構成のみで読み解くと「とりかえて、あきなう」という意味になり、ここに「国際間の」という意味合いは入りません。「貿易」という言葉が「国際間の商取引」を表すのは、実は日本語の解釈的にはナゾ!ということになります。
「貿」、意外とミステリアスな使われ方をする、特殊な漢字です。
というところで、2問目に参りましょう。
【問題2】「輸る」ってなんと読む?
「輸る」という日本語の読み方をお答えください。
ヒント:「うつす。はこぶ」という意味の日本語です。
<使用例>「ニューヨーク在住の友人が、日本未発売のバッグを輸ってくれたの!」
さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 輸(おく)る です。
「輸出」「輸入」は、「国内から出る」「国内に入る」と、「出」「入」を「国内」にかけている2字熟語、ということがわかりますね。こちらは「貿易」とは違い、「自国」「外国」を示唆する要素が入った言葉です。
日本語には「海外」という言葉があります。こちらは、「外国」という言葉と言いかえられる日本語ですが、四方を海に囲まれた日本の地理ゆえに成立する、きわめて日本語的な表現です。
「貿易」も、これと似たような作用で使われ始めた言葉なのかもしれませんね。
本日は、横浜港と長崎港の開港記念日にちなんで、
・貿(あきな)う
・輸(おく)る
という日本語の読みと、「貿」という漢字のトリビアをお送りしました。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱