梅雨の時期にふさわしい時候の挨拶には、どのようなものがあるのかご存じですか? 実は、梅雨ならではの時候の挨拶が存在するのです。
そこで本記事では、時候の挨拶とはどのようなものなのかを解説。また、梅雨の時期や6月全般に使える季語、時候の挨拶や結びの例文をご紹介します。
ビジネスレターや、親しい方への手紙、メールやLINEメッセージを書く際に、ぜひご活用ください。
■梅雨の季節の挨拶文でワンランク上の手紙やメールを
手紙やメールに時候の挨拶を入れることで、相手に「教養を身につけた素敵な人」といった印象を持ってもらうことができます。そこで、これからの梅雨の時期にふさわしい季節の挨拶文についてご紹介していきます。
■時候の挨拶とは?
そもそも、時候の挨拶とはどのようなものなのでしょうか。 時候の挨拶とは、季節を表す言葉を用いた挨拶の文章です。 これは手紙の最初に書きます。よく見る「○○の候」や「○○のみぎり」、「暑い日が続きますがいかがお過ごしですか」などが時候の挨拶です。
「漢語調(ビジネス)」と「口語調(カジュアル)」がある
時候の挨拶には「漢語調」と「口語調」の2種類あります。
ビジネスシーンで使われることが多い「漢語調」
「漢語調」とは、古い中国の言葉が用いられた形態の語種です。たとえば、「初夏の候」といった「○○の候」などと表現します。この「候」は、季節や気候の意味を表す言葉です。また、時候の挨拶では、「候」は「そうろう」ではなく「こう」と読みます。
漢語調は改まった印象を与えるため、ビジネス文書や手紙によく使われます。
カジュアルなシーンで使われることが多い「口語調」
「口語調」は、話し言葉のようなカジュアルな雰囲気があります。たとえば、「新緑が美しい季節となりました」や「暑い日が続いていますが」といった感じです。口語調を使う場合は、やわらかく、親しみやすい手紙を送りたい場合に適しています。
「漢語調」と「口語調」は、手紙を送る相手やシーンによって使い分けるとよいでしょう。
手紙とメールで違いはあるの?
時候の挨拶は、手紙の場合でも、メールの場合でもとくに違いはありません。ただし、メールの場合に漢語調の時候の挨拶を入れると、やや堅苦しい印象となりますので、口語調のほうがおすすめかもしれません。また、要件を早急に伝える場合のメールや、お詫びのメールなどには、時候の挨拶は不要でしょう。
■時候の挨拶に使える、梅雨の季節の季語と例文
梅雨の時期には大きく分けて3つあります。それは「梅雨入り」「梅雨の中休み」「梅雨明け」です。ここでは、それらの時期に合った季語と、シーン別の挨拶例文をご紹介します。
梅雨入りの季語
梅雨入りの頃の使える季語には、次のようなものがあります。
入梅/梅雨/長梅雨/長雨/梅雨の月/梅雨の星/黒南風(くろばえ)/青梅雨
使う時期は梅雨入り直後がよいでしょう。日本の梅雨入りは、地域によって異なるため、手紙を送る相手が住んでいる地域が梅雨入りしているか確認してから使うようにしましょう。
梅雨入りの挨拶例文(ビジネス)
・「入梅の折、貴社におかれましては、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます」
・「長雨の候、ますますご隆盛のこととお喜び申し上げます」
梅雨入りの挨拶例文(カジュアル)
・「入梅のみぎり、いかがお過ごしでしょうか」
・「梅雨の季節となりました」
・「黒南風の候、しっとりとした風の中に緑が香る季節となりました」
梅雨の中休みの季語
梅雨の中休みとは、梅雨の間に晴れ間が続くことです。そんなときに使える季語には、
梅雨晴れ/梅雨夕焼け
などがあります。情景が浮かぶ美しい言葉です。
梅雨の中休みの挨拶例文(ビジネス)
・「梅雨晴れの候、貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます」
・「梅雨晴れの候、皆様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」
梅雨の中休みの挨拶例文(カジュアル)
・「梅雨晴れで、夏本番を思わせる暑さとなりました」
・「梅雨の中休みで青空がひろがり、久しぶりに気持ちよく過ごしています」
・「梅雨夕焼けが美しい時期を迎えましたが、いかがお過ごしでしょうか?
梅雨明けの季語
梅雨明けの頃の季語には、
梅雨明け/梅雨あがる
などがあります。梅雨明け宣言が出される時期は地域差がありますが、多くの場合7月下旬頃ですので、その頃を目安に使うとよいでしょう。
梅雨明けの挨拶例文(ビジネス)
・「梅雨明けの候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます」
・「梅雨明けのみぎり、貴殿ますますご健勝のこととお喜び申し上げます」
梅雨明けの挨拶例文(カジュアル)
・「ようやく梅雨もあがり、気持ちのいい青空が広がっています」
・「雨上がり、草木の緑も一層深まったように感じられます」
・「梅雨が明け、いよいよ夏本番ですね」
紫陽花の季語
梅雨の花のといえば「紫陽花」です。紫陽花には別名が多いのも特徴的。
たとえば、「かたしろぐさ」「四葩の花」「七変化」「刺繍花」「瓊花(たまばな)」といった呼ばれ方をすることもあります。
時候の挨拶に使う際には、「紫陽花の色」「紫陽花の花」「紫陽花の葉」などとするのもおすすめです。 なお、6月を象徴とする花ですので、時候の挨拶に使う場合は6月中~7月頭にしましょう。
紫陽花の挨拶例文(ビジネス)
・「紫陽花の候、皆様にはいっそうご活躍のこととお慶び申し上げます」
・「紫陽花のみぎり、貴社いよいよご繁栄のこととお慶び申し上げます」
紫陽花の挨拶例文(カジュアル)
・「紫陽花に雨つぶが落ち、より美しさを感じます」
・「紫陽花の七変化を楽しんでいる今日この頃」
・「紫陽花が見頃を迎えています」
■梅雨の時候の挨拶、結びはどうすればいい?
梅雨の時候の挨拶の結びは、親しい方への手紙とビジネスでの手紙で変わってきます。
親しい方への手紙の結び
親しい方への手紙であれば、「梅雨」に関連したキーワードと「相手の健康・幸せ」を願う言葉を組み合わせた結びにします。 たとえば、
・「梅雨冷えで肌寒い日もありますので、お身体ご自愛ください」
・「梅雨が明けると本格的な夏がやってきます。暑さで体調を崩さぬようお元気でお過ごしください」
・「梅雨明けにお会いできるのを楽しみにしております」
などです。
ビジネスでの手紙の結び
ビジネスでの手紙の場合は、季節の挨拶は不要です。
・「末筆ながら、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます」
・「まずは略儀ながらお礼かたがたご挨拶申し上げます」
・「皆様のますますのご活躍を祈念いたしております」
などで結びの挨拶としましょう。
■6月の時候の挨拶に使える、梅雨以外の季語と例文
6月の時候の挨拶には、「梅雨」以外の季語もあります。ここでは、6月下旬と6月全般に使える季語と例文をご紹介していきます。
梅雨以降(6月下旬)の季語
6月下旬の季語には、次のようなものがあります。
夏至/短夜(みじかよ)/霖雨(りんう)/半年
「夏至」は、二十四節気のひとつで6月21日頃~7月6日頃を指す言葉です。また、「短夜」は、夏至で日が長くなり、夜が短くなることを示しています。「霖雨」は長雨の別称で、行く日も降り続く雨のこと。「半年」は6月で1年の半分が終わることを表しています。
梅雨以降(6月下旬)の挨拶例文(ビジネス)
・「夏至の候、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます」
・「霖雨の折、貴社一層ご発展のことと存じます。」
・「貴社におかれましては、実り多い半年であったことを実感なさっているとお察ししております」
梅雨以降(6月下旬)の挨拶例文(カジュアル)
・「今年もはや半年が過ぎようとしています」
・「短夜のみぎり、日一日と夏めいてまいりました」
・「夏至を迎え、梅雨もそろそろ明けるころとなりました」
6月の季語
6月を通して使える季語には、
向暑(こうしょ)/水無月(みなづき)/麦秋(ばくしゅう)/青葉/深緑
などがあります。
「向暑」とは、文字通り暑さに向かうことを意味します。「水無月」は陰暦の6月のこと。「麦秋」は、6月が麦の収穫期であることから。「青葉」や「深緑」は、6月頃は草木の緑が深まることを示す言葉です。
6月全般に使える挨拶例文(ビジネス)
・「向暑の折、貴社におかれましてはご盛栄のこととお慶び申し上げます」
・「麦秋の候、貴社におかれましては、ますますご発展の由、心からお喜び申し上げます」
・「深緑の候、貴社におかれましてはますますご盛栄の由、お慶び申し上げます」
6月全般に使える挨拶例文(カジュアル)
・「水無月に入り、雨が続きますが」
・「向暑のみぎり、いかがお過ごしでしょうか」
・「雨に打たれた木々が深緑を増し、目に爽やかです」
■6月の時候の挨拶、結びはどうすればいい?
6月の時候の挨拶の結びは、「暑さ」や「梅雨」に関することに加え、相手の「健康や幸せ」を配慮する言葉で結びましょう。
親しい方への手紙の結び
親しい方への手紙の結びであれば、
・「季節は夏に向かっております。くれぐれもお身体を大切になさってください」
・「暑さで体調を崩さぬようお元気でお過ごしください」
・「本格的な夏を待ちわびつつ、まずは御礼のみにて失礼いたします」
などです。
ビジネスでの手紙の結び
ビジネスでの手紙の場合は、季節の挨拶はなくてもよいでしょう。
・「末筆ながら、より一層のご繁栄を祈念いたしております」
・「一層のご活躍をお祈り申し上げます」
などで結びとします。
梅雨の時候の挨拶は、情景を切り取る豊かな言葉で
梅雨時期の挨拶には、ついつい「うっとおしい雨」や「蒸し蒸しとした暑さ」などと書きたくなってしまいますね。しかし、これらの言葉は相手にも不快な思いが伝わってしまうこともあるため、避けたほうが賢明です。 6月の美しい情景を切り取るような豊かな言葉で、季節の挨拶をしたいものです。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部