2024年5月21日ごろ、沖縄・奄美地方が平年より10日程遅れて梅雨入りしましたが、九州南部よりも北の地域では、まだ梅雨入りの発表がありません(6月5日現在)。全国的に平年より遅く、九州から東北南部にかけての広い範囲で「6月中旬」に梅雨入りとなる見込みです。今回のテーマは「入梅(にゅうばい)」。今後の予報に加え、「梅雨」の意味や由来、「梅雨」が付く言葉の意味や読み方、「梅雨」を表す季語や梅雨の季語を入れた手紙の挨拶例文についてご紹介していきます。

【目次】

入梅とは「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる期間」です。
入梅とは「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる期間」です。

【2024年の梅雨時期はいつから?いつまで?】

日本気象協会は、2024年5月30日に「2024 梅雨入り予想」を発表しました。6月前半は北から冷涼な空気をもつオホーツク海高気圧が張り出し、梅雨前線は北上しにくい見通しです。梅雨入りは全国的に平年より遅く、九州から東北南部にかけての広い範囲で「6月中旬」に梅雨入りとなる見込みです。また、東北北部では「6月下旬」に梅雨入りするでしょう。

上空約1500mの気温は、東日本以西では平年より低く、全国的に冷涼な空気に覆われる時期がある見込みです。梅雨入り前から、上空の寒気の影響を受けやすく、大気の状態が不安定となるでしょう。6月前半は晴れていても天気が変わりやすく、突然の大雨や雷雨に注意が必要です。6月後半は梅雨入り早々に、梅雨末期のような大雨となることも考えられます。


【2024年の梅雨の「傾向」は?】

平年であれば関東以西の各地で6月上旬までに梅雨入りの時期を迎えますが、2024年は太平洋高気圧の張り出しが弱く、6月4日現在、関東では梅雨入りとなりそうな気配はありません。また、2024年は、梅雨入りが遅いわりには、1か月の降水量は平年並みのところが多く、西日本の太平洋側や沖縄・奄美では平年並みか多い見込みです。

九州・沖縄

沖縄地方の梅雨入りは平年で5月9日ごろですが、沖縄・奄美地方は例年より10日前後遅く、5月21日ごろ、梅雨入りしました。九州南部の梅雨入りは平年なら5月30日ごろ、九州北部は6月4日ごろですが、今年は遅れています。6月9日以降、西日本に梅雨前線が延びてきます。九州南部を中心に、6月10日から11日ころが梅雨入りのタイミングになるかもしれません。梅雨明けは、沖縄が平年で6月21日ごろ、奄美地方が平年で6月29日頃です。

■関西

関西地方の梅雨入りは平年6月7日ごろですが、2024年は高気圧に覆われ、晴れる日が多い見込みです。11日には雨が降るところもありますが、長続きしません。6月中旬の梅雨入りが見込まれています。梅雨明けは平年で7月21日ごろです。

関東

東京をはじめ、関東地方の平年の梅雨入りは、6月8日ごろ。過去10年の梅雨入りの時期を見ても、6月上旬になることが多いのですが、2024年は関東甲信越で平年より遅く、6月15日頃が梅雨入りのタイミングとなりそうです。梅雨明けは、平年であれば7月19日ころです。

■東北

東北地方の梅雨入りは、平年6月12~14日ごろです。東京や関東が梅雨入りしてから、1週間以内には東北地方も梅雨入りすることが多く、2024年は北陸・東北南部で6月中旬、東北北部で6月下旬に梅雨入りの見込みです。また、平年の梅雨明けは7月25日から28日です。


【そもそも「梅雨」って何?「意味」と「由来」】

■「梅雨」の「意味」は?「定義」はある?

6月から7月にかけて、1か月以上の長い期間雨が降り続けるのは、北側にあるオホーツク海高気圧と南側にある太平洋高気圧が日本列島の近くでぶつかり、梅雨前線が生じることが原因です。「梅雨入り」とは、「梅雨の季節に入ること」。そして気象庁では、「梅雨」を「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる期間」と定義しており、梅雨は季節が移り変わるなかで現れる季節現象のひとつとして捉えています。そのため、「今日から梅雨」、「今日から梅雨明け」のように、ある1日を「梅雨入りの日」と特定することはとても難しくなっています。毎年、平均でも5日間程度の移り変わりの期間があることから、梅雨入り日・梅雨明け日の末尾に「〇月×日ごろ」と「ごろ」を付けて発表しています。

■「梅雨入り」はどうやって予測する?

気象庁は「平年の梅雨入り時期」のデータをもとに、今年の梅雨入り時期の速報値を発表しています。平年の梅雨入り時期から、今年の梅雨入り時期の目安を立てることができるのです。

■「梅雨」の「由来」は?

毎年6月ごろの「雨や曇りの日が多く現れる期間」を「梅雨」と呼ぶようになった由来については、いくつかの説がありますが、ここでは有力な説を3つ、ご紹介します。
1)中国でちょうど梅の実が熟すころに降る雨なので「梅雨(めいゆ)」と呼んでいたのが日本へ伝わった。
2)カビ(黴)がよく生える時期なので「黴雨(ばいう)」と呼んだが、「黴」の字では印象や語感がよくないとされ、梅の季節でもあり同じ読み方をする「梅」を用いて「梅雨」に代わっていった。
3)「腐る」という意味の「潰(つい)ゆ」から変化して「つゆ」と呼ぶようになった。
「梅雨」という言葉が日本に伝わったのは江戸時代とされていますが、その前は「五月雨(さみだれ)」と呼ばれていました。また、「ばいう」ではなく「つゆ」と呼びだしたのも江戸時代からといわれています。

■暦の上での「入梅」はいつ?

「入梅(にゅうばい)」は暦の上で「梅雨の時期に入る日」、「出梅(しゅつばい)」は「梅雨の時期が終わる日」を表しますが、これらは暦の上でのことなので、実際の梅雨入り、梅雨明けの日付とは異なります。

「入梅」あるいは「出梅」といった言葉は、日本で生まれた「雑節(ざっせつ)」という暦日です。「立春」「立夏」「立秋」「立冬」などで知られる「二十四節気」は古代中国でつくられた暦ですが、「雑節」は、季節の変化をつかむための目安として、日本で補助的につくられた目印です。二十四節気をさらに細かく区切って、「入梅」や「出梅」のほかに、節分・彼岸・八十八夜・初午・土用などがあります。その年ごとの「雑節」については、国立天文台が「二十四節気」と一緒に毎年2月初めに翌年の暦(暦要項)を発表しています。

さて、「入梅」は陰暦で「5月節(芒種)」に入って最初の壬(みずのえ)の日でしたが、現在では太陽黄経80度の日(6月11日ごろ)となっています。また「出梅」に関しては、現在では国立天文台でも明確な定義はされていないようです。ちなみに2024年の雑節「入梅」は6月10日です。


【「梅雨」が付く言葉の読み方と意味】

日本語には、「五月雨(さみだれ:梅雨どきに降る長雨のこと)」、「時雨(しぐれ:晩秋から冬にかけて、降ったり止んだりする雨のこと)」など、雨にまつわる感性豊かな言葉がたくさん存在します。ここでは「梅雨」が使われている言葉をご紹介しましょう。

■山茶花梅雨

「山茶花梅雨」の読み方は「さざんかづゆ」。6月の梅雨の時期ではなく、秋から冬にかけて梅雨のようにぐずついた天候になることがあり、これを「山茶花梅雨」と呼びます。

■空梅雨

「空梅雨」の読み方は「からつゆ」。これは梅雨の時期なのに、雨がほとんど降らず降雨量の少ないことを言います。

■走り梅雨・送り梅雨

「走り梅雨(づゆ)」は、梅雨入りする前に梅雨の前触れのように、天候がぐずついた状態のこと。同じように「送り梅雨(づゆ)」は、梅雨の終わりを告げるような、梅雨の終盤に降る雷を伴った雨のことを指します。


【「梅雨」の季語を使ったビジネスメールの挨拶例文10選】

日本には四季の移り変わりがあり、それによって季節ごとにさまざまな行事が行われ、野に咲く花や植物なども変化していきます。そして、それぞれの季節を表現する季語がありますが、梅雨の時期に使われる季語にはどんなものがあるのでしょうか?

梅雨入りしたときの季語には「梅雨」「入梅」、梅雨の間は「長梅雨」「梅雨の月」、梅雨のなか休みを表す季語には「梅雨晴れ」「梅雨夕焼け」、梅雨明けでは「梅雨の明け」のほか、「梅雨のあと」「梅雨あがる」などがあります。

■1:「入梅も間近となりましたが、皆さまご健勝のことと存じます」

■2:「梅雨入りしたというものの、今年は例年より雨が少ないそうですね」

■3:「梅雨のなか休み、蒸し暑さが続く季節です」

■4:「梅雨晴れの候、貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます」

■5:「梅雨の晴れ間、夏を感じさせる強い日差しとなりました」

■6:「梅雨夕焼けの美しいこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか」

■7:「夏至を過ぎ、梅雨明けも近づく頃となりました」

■8:「梅雨が明け、いよいよ夏本番ですね」

■9:「ようやく梅雨もあがり、気持ちのいい青空が広がっています」


梅雨時期に咲く花】

最後に梅雨の時期に咲く花についてご紹介しましょう。

■牡丹(ボタン)

4月から6月ごろの春から梅雨の時期にかけて開花するのが、牡丹です。ボリュームがあり豪華で華やかな牡丹は、気品が溢れる花。原産国である中国では、ゴージャスな印象から「花神」や「花王」という呼び名もあります。また、春と秋、ふたつの季節に開花する種類もあります。牡丹の花言葉には、「風格」「富貴」など優雅な言葉が並びます。

■紫陽花(アジサイ)

梅雨に咲く花の代表格として、「紫陽花」も欠かせないでしょう。雨にしっとり濡れながらも、鮮やかに花が開く様子は美しいものです。紫陽花は、花に見える部分はガクにあたり、中心部分が花です。紫陽花の花言葉は色により異なり、ピンク色の紫陽花は「愛情」「元気な女性」、白色の紫陽花は「寛容」、青色の紫陽花は「無情」「辛抱強い愛情」などがあります。

■花菖蒲(ハナショウブ)

雨に強く6月ごろに開花時期を迎える「花菖蒲」。花菖蒲には5000種以上の品種があると言われ、青や白、ピンク、紫など、色とりどりの花菖蒲があります。花菖蒲の花言葉は、「信頼」「優雅」「優しい心」などがあり、それらはギリシャ神話の女神イリスの物語に由来するともいわれています。

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2024年は梅雨入りが平年よりも遅れ、関東地方は6月中旬となる見込みです。すがすがしいお天気が続くのはうれしいものですが、水不足が心配。また、ビジネスにおいては災害につながる可能性のある大雨の情報を、事前に把握しておくことが大切。引き続き、気象情報に注意を払い、元気に梅雨を乗り切りましょう。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /国立天文台「暦wiki 雑節とは」(https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B5A8C0E12FBBA8C0E1A4C8A4CFA1A9.html)/『心が通じる 手紙の美しい言葉づかい ひとこと文例集』(池田書店) :
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