夏が訪れる前にやってくるのが、梅雨のシーズン。そんな梅雨には、なぜ「梅」の漢字が使われ、どうして「つゆ」と呼ばれるのか、その意味と由来をご存知でしょうか?

この記事では、梅雨という言葉について掘り下げ、その意味や梅雨を表す季語、梅雨の時期に咲く花についてご紹介しましょう。また、2020年の梅雨の時期はいつからいつまでになると予測されているのかもご案内します。

■2020年の梅雨時期はいつからいつまで?

2020年の梅雨時期はいつからいつまで?
2020年の梅雨時期はいつからいつまで?

梅雨入りと梅雨明けの時期は、その年によって変わります。2020年の梅雨は、いつからいつまでになるのでしょうか?

2020年、日本列島の梅雨の傾向

2020年の梅雨の傾向として、日本列島全体で梅雨入りが遅くなると予報され、その通りとなりました。西日本では、2019年の梅雨入りは平年よりもかなり遅くなりましたが、2020年は2019年よりも17日早く、6月10日ごろに梅雨入り(近畿地方)。

また、東海や関東などの梅雨入りは、2019年の西日本ほどにはならないものの、平年より遅くなると予想され、実際に3〜4日ほど遅れ、6月10日・11日ごろに梅雨入り。2020年の梅雨時期は、陽射しがなくても、湿度が高くムシムシとした日が続きそうです。

沖縄・九州

沖縄地方の梅雨入りは平年で5月9日頃。2020年は5月11日に梅雨入りが発表されています。九州地方の梅雨入りは南部で5月31日頃、北部で6月5日頃です。梅雨明けについては、沖縄地方は6月23日頃、九州南部は7月14日頃、九州北部は7月19日頃と予想されています。沖縄地方のみ平年より11日早く、6月12日ごろに梅雨明けしました。

関西

近畿地方の梅雨入りは平年6月7日頃ですが、2019年は6月27日でした。2020年の梅雨入りは6月10日ごろで、平年より3日ほど遅く梅雨入りしました。梅雨明けは平年で7月21日頃。

東京・関東

東京や関東地方の平年の梅雨入りは、6月8日頃。過去10年の梅雨入りの時期を見ても、6月上旬になることが多いのですが、2020年は関東甲信越で平年より3日遅く、6月11日ごろに梅雨入りしました。梅雨明けの平年は7月21日頃です。

東北

東北地方では、梅雨入りは平年6月12~14日頃です。東京や関東が梅雨入りしてから、1週間以内には東北地方も梅雨入りすることが多く、2020年は北陸・東北南部で6月11日ごろ、東北北部で6月14日ごろ梅雨入りしました。平年の梅雨明けは7月25~28日です。

■梅雨の意味と由来

しとしとと降る雨で花や緑が濡れる様子は、情緒あふれるものです。美しい光景が見られる梅雨の意味や由来について、ぜひ知っておきましょう。

梅雨の意味

6月から7月にかけて、1か月以上の長い期間雨が降り続けるのは、北側にあるオホーツク海高気圧と南側にある太平洋高気圧が日本列島の近くでぶつかり、梅雨前線が生じることが原因です。

また、『デジタル大辞泉』(小学館)によると、梅雨とは以下のように記載されています。

6月ころの長雨の時節。また、その時期に降る長雨。暦の上では入梅・出梅の日が決められているが、実際には必ずしも一定していない。北海道を除く日本、中国の揚子江流域、朝鮮半島南部に特有の現象。五月雨 (さみだれ) 。ばいう。

梅雨の由来

では、なぜこの季節を「つゆ」と呼ぶようになったのでしょうか。これにはふたつの説があり、ともに中国に由来します。

ひとつ目は、雨が降るこの季節にちょうど梅の実が熟すことから「梅」という漢字が使われ、雨季のことが「梅雨(ばいう)」という言葉で日本に伝わったとされる説。

ふたつ目の説は、雨が降って湿度が高くなり、カビが生えやすい時期のため、カビを意味する「黴」の漢字を当てはめた「黴雨(ばいう)」という言葉が生まれたというもの。しかし、「黴」の字では印象や語感がよくないとされ、梅の季節でもあり同じ読み方をする「梅」を用いて「梅雨」に代わっていったという説です。

「梅雨」が日本に伝わったのは江戸時代とされていますが、その前は「五月雨(さみだれ)」と呼ばれていました。また、「ばいう」ではなく「つゆ」と呼びだしたのも江戸時代からといわれています。その理由は、しとしと降る雨の「露(つゆ)」を紐づけた、熟した梅の実が「潰れる(潰ゆ:つゆ)」様子やカビで物が「ダメになる(費ゆ:つひゆ)」様子を連想した、など諸説あるようです。

さらに、「入梅(にゅうばい)」「出梅(しゅつばい)」という言葉がありますが、これは日本で生まれた「雑節(ざっせつ)」という暦日のこと。

ちなみに、二十四節気という暦は、1年を15日程度の間隔で区切って24等分したものですが、雑節は、季節の移り変りをさらに細かく告げるために二十四節気の間に特別に設けられました。雑節には、入梅や出梅のほかに、節分・彼岸・八十八夜・初午・土用などがあります。

話を梅雨に戻しましょう。入梅は暦の上で梅雨の時期に入る日、出梅は梅雨の時期が終わる日を表します。これらは暦の上でのことなので、実際の梅雨入り、梅雨明けの日付とは異なります。

■梅雨が付く言葉の意味

梅雨が付く言葉の意味
梅雨が付く言葉の意味

日本では、「五月雨(さみだれ:5月に降る長雨のこと)」、「時雨(しぐれ:晩秋から冬にかけて、降ったり止んだりする雨のこと)」など、雨にまつわる情緒豊かな言葉がたくさん存在します。そして「梅雨」が使われている言葉もあるのです。

「山茶花梅雨」の読み方と意味

「山茶花梅雨」の読み方は「さざんかづゆ」。6月の梅雨の時期ではなく、秋から冬にかけて梅雨のようにぐずついた天候になることがあり、これを「山茶花梅雨」と呼びます。

「空梅雨」の読み方と意味

「空梅雨」は「からつゆ」と読みます。これは梅雨の時期なのに、雨がほとんど降らず降雨量の少ない梅雨のことをいいます。

「走り梅雨・送り梅雨」の意味

「走り梅雨(はしりづゆ)」は、梅雨入りする前に梅雨の前触れのように、天候がぐずついた状態のことをいいます。同じように「送り梅雨(おくりつゆ)」は、梅雨の終わりを告げるような、梅雨の終盤に降る雷を伴った雨のことを指します。

かわいいと人気の「ヒロアカの梅雨ちゃん」って誰?

梅雨の名前がつくキャラクターに「梅雨ちゃん」がいます。これは、堀越耕平氏の漫画作品、通称「ヒロアカ」とも呼ばれる『僕のヒーローアカデミア』(集英社『週刊少年ジャンプ』連載中)の登場人物「蛙吹 梅雨(あすい つゆ)」のこと。「梅雨ちゃん」と呼ばれていてかわいいと大人気。梅雨ちゃんのコスプレも流行っているそうです。

■梅雨を表す季語

日本には四季の移り変わりがあり、それによって季節ごとにさまざまな行事が行われ、野に咲く花や植物なども変化していきます。そして、それぞれの季節を表現する季語がありますが、梅雨の時期に使われる季語にはどんなものがあるのでしょうか?

梅雨の季語を入れた手紙の挨拶例文

梅雨入りしたときの季語には「梅雨」「入梅」「長梅雨」「梅雨の月」、梅雨の中休みを表す季語には「梅雨晴れ」「梅雨夕焼け」、梅雨明けでは「梅雨明け」などがあります。

これらの言葉は、手紙の書き出しに使うと、相手に「マナーや文化のわかる素敵な女性」という印象を与えることができるでしょう。季語を使った例文として次のいくつかをご紹介します。

「入梅が近く、ぐずついたお天気の日が続いております」
「梅雨晴れの一日で、夏を感じさせる強い日差しとなりました」
「梅雨明けが待ち遠しいこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか」

梅雨時期に咲く花

最後に梅雨の時期に咲く花についてご紹介しましょう。

牡丹(ボタン)

4~6月頃の春から梅雨の時期にかけて開花するのが、牡丹(ボタン)です。ボリュームがあり豪華で華やかな牡丹は、気品があふれる花。原産国である中国では、ゴージャスな印象から「花神」や「花王」という呼び名もあります。また、春と秋、ふたつの季節に開花する種類もあります。牡丹の花言葉には、「風格」「富貴」など優雅な言葉が並びます。

紫陽花(アジサイ)

梅雨に咲く花の代表格として、「紫陽花(アジサイ)」も欠かせないでしょう。雨にしっとり濡れながらも、鮮やかに花が開く様子は美しいものです。紫陽花は、花に見える部分はガクにあたり、中心部分が花です。紫陽花の花言葉は色により異なり、ピンクの紫陽花は「愛情」「元気な女性」、白の紫陽花は「寛容」、青の紫陽花は「無情」「辛抱強い愛情」などがあります。

菖蒲華(ハナショウブ)

雨に強く6月頃に開花時期を迎える「菖蒲華(ハナショウブ)」。5000種以上の品種があると言われ、青や白、ピンク、紫など、色とりどりの菖蒲華があります。花菖蒲の花言葉は、「信頼」「優雅」「優しい心」などがあり、ギリシャ神話の女神イリスの物語に由来するともいわれています。

梅雨の意味を知ると、女性らしくいられそう

木々や花々が雨に濡れ、街全体がしっとりと映る季節、梅雨。昔から雨には趣があり、だからこそ日本語には「雨」や「梅雨」を使った美しい言葉がたくさんあるのでしょう。梅雨の意味や由来を知り、梅雨の季語を手紙やメールでさりげなく使えるような女性は、ステキですよね。2020年の梅雨は、女性らしさに磨きをかけてみてはいかがでしょうか? 

この記事の執筆者
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Precious.jp編集部 
2020.6.17 更新
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