「夏越の祓(なごしのはらえ・なごしのはらい)」という行事をご存じですか? これは、1年の半分の罪や穢れを祓う行事です。その「夏越の祓」は、2020年はいつ行われるのでしょうか。
また、夏越の祓に神社で行われる風習や初穂料の相場などを解説していきます。さらに、夏越の祓が行われる神社や、夏越の祓の食べ物として有名な和菓子「水無月」のおすすめもご紹介していきます。
■2020年の「夏越の祓(なごしのはらえ・なごしのはらい)」はいつ?

2020年の夏越の祓は、6月の晦日である30日に行われます。夏越の祓は、毎年同じ日に行われている行事です。次項より、夏越の祓について詳しく解説していきましょう。
■夏越の祓とは?
夏越の祓は、心身の穢れを清め、無病息災を祈願する行事です。「大祓(おおはらえ・おおはらい)」「名越の祓(なごしのはらえ)」「夏越神事(なごししんじ)」「水無月祓(みなづきばらい)」とも呼ばれています。
古くは、旧暦6月30日に行われていた神事で、新暦である現在でも6月30日に行われています。なお、「大祓」は半年の節目である6月と12月の2回行われており、6月に行われる大祓を「夏越の祓」と呼ぶところもあります。
由来
夏越の祓の由来は、年に2回ある神事「大祓」にあります。大祓とは、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)の禊祓(みそぎはらい)をルーツとする神事で、心身の穢れや厄災を祓い清める儀式でした。明治ごろに、この夏越の祓が全国の神社に広がり、現在でも執り行われています。
夏越の祓と年越の祓の違い
夏越の祓と年越の祓の違いはどのようなものなのでしょうか?
夏越の祓は6月30日に行われ、1月1日から6月30日までの半年間の厄災を祓い清めますが、年越の祓は12月31日に行われ、7月1日から12月31日までの厄災を祓い清め、新たな年を迎えます。夏越の祓と年越の祓は、行われる日、また祓い清める期間が違うのです。
■夏越の祓の風習
夏越の祓には、「茅の輪くぐり」と「人形流し」という風習があります。それぞれの風習の内容と方法を解説していきます。
茅の輪くぐり

茅(かや)などの植物で作られた大きな輪っかが「茅の輪」です。「茅の輪くぐり」は、この輪をくぐることで、1年の前半の罪や穢れを祓い、残り半年の無病息災や厄除け、家内安全を祈願します。
方法
茅の輪は神社の境内や鳥居の下などにあり、神主や巫女だけでなく、参拝者もくぐることができます。
一般的な茅の輪のくぐりの方法は、まずは一礼し、左まわりに輪をくぐりながら「水無月の 夏越しの祓する人は 千歳の命 のぶというなり」と唱えます。
次に右まわり、再度左まわりに輪をくぐります。2回目、3回目に輪をくぐるときも、「水無月の 夏越しの祓する人は 千歳の命 のぶというなり」と唱えてください。
最後に一礼して茅の輪をくぐり、神前に参拝しましょう。
また、「祓へ給ひ 清め給へ 守り給ひ 幸へ給へ(はらえたまい きよめたまえ まもりたまい さきわえたまえ)」という唱え詞も有名です。
神社によっては、茅の輪くぐりの作法が異なる場合があるので、それぞれの神社の作法に従ってください。
2020年の「茅の輪くぐり」はいつ?意味や由来、茅の輪をくぐる方法や手順、くぐりながら唱える唱え詞とは?>>
人形流し
夏越しの祓では、「人形(ひとがた)」や「形代(かたしろ)」と呼ばれる、人の形を模した紙を用いて祓をします。この人形に自分自身の罪や穢れを移し、身代わりとして神社に納めるのです。
身代わりとなった人形は、神事で川や海に流したり、篝火(かがりび)で焚いたりして清めてもらいます。 ちなみに「人形」は、紙ではなく、藁などで作るところもあるそうです。
方法
「人形流し」の一般的な方法は、人形に自分の名前、年齢を書き、その人形で体を撫でて息を3回吹きかけます。そして、神社に納めます。 「人形流し」も神社によってやり方が異なる場合があるので、そちらに従ってください。
■大祓の初穂料の相場
神社で大祓(夏越の祓と年越の祓)をお願いする場合には、どのくらいの初穂料を納めればよいのでしょうか。ここでは、初穂料とはなにか、大祓においての初穂料の相場を説明していきます。
初穂料とは
初穂料とは、神社に祈祷やお祓いなどをお願いする際に謝礼として支払うお金のことです。古くはその年に初めて収穫されたお米を「初穂」とし、ご神前にお供えしていましたが、季節によっては初収穫したお米が手に入らないことから、初穂の代わりとしてお金をお供えするようになりました。
相場は500円~3,000円程度
初穂料の相場は、500円~3,000円程度といわれています。ただし、神社や地域、風習によって変わることがあります。 初穂料はお気持ちですが、ふさわしい金額を納めるようにしましょう。
■夏越の祓が行われる神社

夏越の祓には神社でさまざまな神事が行われています。そこで毎年夏越の祓が行われる、東京、京都の神社をご紹介します。なお、新型コロナウィルスの影響により、内容の変更、中止となる場合もあります。公式ホームページなどで最新の情報をご確認の上、お出かけください。
東京「東京大神宮」(東京・飯田橋)
「東京大神宮」は、東京の「お伊勢さま」と呼ばれ多くの人に親しまれている格式高い「東京五社」のひとつです。昨今では、恋愛のパワースポットとしても注目されています。
こちらの「大祓」は、毎年6月と12月の2回、その月の末日に行われます。6月の大祓は「夏越の大祓」ともいい、茅で作った大きな輪をくぐる「茅の輪くぐり」や、人の形に切り抜いた紙に名前と年齢を書いた「形代(かたしろ)」に自分の罪や穢れを移し、我が身の代わりに清めることができます。
2020年は、予定通り6月30日(火)に祭典が行われます。しかし、新型コロナウイルス感染症の防止のため、祭典は神職のみで執り行われ、参列はできません。
なお、茅の輪は設置されるので、6月10日(水)から30日までの間、茅の輪をくぐってお参りすることができます。ただし、30日当日の15時頃から16時半頃までは、祭典の関係でくぐれません。
東京「神田明神」(東京・神田)
東京の中心にある「神田明神」は、日本橋、秋葉原、大手丸の内、旧神田市場、築地魚市場ー、108町会の総氏神様です。「明神さま」の名で親しまれています。
神田明神では、2020年6月30日(火)に「夏越大祓式」が斎行されます。時間は11時と15時の2回です。夏越大祓式では、「大祓神事」、人形を大海原のはるか彼方へ流す「流却神事」、神職とともに参拝者が茅の輪くぐり、穢れや災いを祓う「茅の輪くぐり」が行われる予定です。
京都「平安神宮」(京都・左京区)
平安神宮は1895年(明治28年)に、京都市が平安遷都1100年を記念して創建された神宮です。国の名勝庭園にも指定されている「神苑」や、重要文化財でもある大極殿、丹塗りの応天門もあり、見所がたくさんある神宮でもあります。
平安神宮では、例年では6月30日の午後4時に「夏越大祓式」が執り行われています。夏越大祓式では、茅の輪をくぐることにより、半年間の汚れを祓い清めて無病息災を祈願します。式典に参加するには、人形を納めます。
京都「北野天満宮」(京都・上京区)
梅と紅葉で有名な京都の神社「北野天満宮」。ここは、菅原道真公をご祭神としてお祀りする全国約1万2000社の天満宮、天神社の総本社です。
北野天満宮の夏越の祓は、例年では、本殿正面に設けた「茅の輪」の前で6月30日の16時より神事を執り行い、神職とともに「茅の輪くぐり」をし、日常無意識のうちに身につけた罪や穢れを祓い、無病息災を祈願します。
福岡「太宰府天満宮」(太宰府市宰府)
太宰府天満宮は、菅原道真(すがわらのみちざね)公の墓所の上に社殿を造営し、その神霊を永久に祀る神社です。また、「学問・至誠しせい・厄除けの神様」として、年間に約1000万人の参拝者が訪れています。
太宰府天満宮では、「大祓式」として、2020年6月30日(火)16時より楼門前にて斎行される予定です。この大祓式は、年末の12月31日にも斎行予定です。大祓式は、罪や穢(けがれ)を祓い清め、明日からの毎日をよりよく過ごすための神事です。 個人のお祓いとしてはもちろん、広く地域や社会を祓い清める公の神事としても親しまれています。
■夏越の祓の食べ物
夏越の祓に食べるとよいとされる食べ物があります。それらを食べて、厄除けや暑気払いをしましょう。
和菓子「水無月(みなづき)」

夏越の祓に食べる習慣があるのが「水無月」という和菓子です。水無月は、三角形の形をしており、白いういろうの上に小豆が散りばめられた和菓子。この三角形の形と、白いういろうは、氷に見立てられているといわれています。
というのも、その昔、氷は貴重なもので、庶民が口にすることはできませんでした。そこで、氷をかたどった水無月を食べて、暑気払いをしていたのだそうです。
また、小豆には魔除けの意味があり、夏越の祓に食べて無病息災を祈る風習が今も続いています。
夏越ごはん
雑穀ご飯の上に、「茅の輪」をイメージした丸い食材をのせたものが「夏越(なごし)ごはん」です。その昔、素盞嗚尊(すさのおのみこと)を「粟飯」でもてなしたという伝承に由来しているそうです。
実はこの夏越ごはん、比較的新しい行事食で自由度が高いのが特徴的。「雑穀ごはん」と「茅の輪にちなんだ丸い食材」の2つのポイントをおさえていれば、夏越ごはんになります。ちなみに、よくある夏越ごはんは、雑穀ご飯の上に、丸いかき揚げをのせたものです。
6月30日には、夏越の祓の新しい行事食「夏越ごはん」を食べて、心身の穢れを祓い清め、無病息災を祈るのもいいですね。
■夏越の祓に食べたい水無月のおすすめ
水無月を食べて、残り半年間の無病息災を願いましょう。ここでは、夏越の祓に食べたい水無月のおすすめをご紹介します。
「水無月」(笹屋昌園)

京都・龍安寺にある老舗和菓子屋「笹屋昌園」。同店の「水無月」は、最高級と称される丹波大納言小豆と吉野本葛を贅沢に使い、職人が丁寧に仕上げました。本葛が使われているため、歯切れがよく、軽やかな食感が堪能できます。
「京みな月(ういろう)」(京みずは)

京都府長岡京市にある、和菓子職人の手作りの味が楽しめる「京みな月」の水無月は、「白いみな月」と「抹茶のみな月」の2種類の味が楽しめます。白いみな月は、あっさりとした甘さのあずきと、むっちり、なめらかなういろうの食感が楽しめます。抹茶のみな月は、抹茶のほどよい渋みと甘みが絶妙です。
「本くず 上り ういろう・水無月」(桃太郎製菓)

キャンディ・ういろう・ようかん・ゼリー・駄菓子などの美味しいお菓子を丹精込めて製造・販売している「桃太郎製菓」。「本くず 上り ういろう・水無月」は、葛粉を加えた白ういろうの上面に、小豆かのこを敷き詰めた和菓子です。もっちりとした食感と、ほどよい甘さが味わえます。
6月30日は神社や家庭で夏越の祓を
夏越の祓は6月30日に神社で行われます。この日には、神社を訪れ「茅の輪くぐり」や「人形流し」を行い、半年間の穢れを祓い、残り半年の無病息災を願いましょう。また、ご紹介した「水無月」や「夏越ごはん」をご家庭で味わってみるのもおすすめです。
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- Precious.jp編集部