世界中の自動車メーカーにとって急務となっているCO2削減への取り組み。特に厳しいヨーロッパでは、2021年にCO2排出量を2015年と比べて3割減とすることが求められている。スウェーデンでは環境大臣が「2030年までにエンジン車を廃止すべき」と発言しているのだから、ボルボにとってもプレッシャーのかかる話である。そこで全モデル電動化を宣言したわけだが、それから3年が経過。高々と上がった削減目標に向かって、より歩みを早めるために投入してきたのが「XC60 B5 AWD」(以下「B5」)というニューモデルだ。今後、20年間で電気自動車メーカーになると言うことは果たしてどういうことなのか? 最新モデルで、その答えがあるかを確かめたい。

モーターが加わりリッチな乗り味に

外観は従来モデルと大きな違いはなし。
外観は従来モデルと大きな違いはなし。
すべての写真を見る >>
リアゲートに「B5」のエンブレムが付く。
リアゲートに「B5」のエンブレムが付く。

搭載されるハイブリッドシステムは、2リッターの4気筒DOHCターボエンジンにISGM(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター・モジュール)と48Vリチウムイオンバッテリーを組み合わせたもの。回生ブレーキで発電した電力を48Vのバッテリーに蓄電し、エンジンの始動や発進時の補助的な役割を果たす、日本流にいえばマイルドハイブリッドに当たるシステムだ。トヨタ「プリウス」のようなフルハイブリッドカーと比べると、CO2削減効果は限定的となる。その一方、低コストでシステムを構成できるため、CO2削減効果が得られるというメリットもある。

始動させると、すぐに「B5」の利点に気が付く。ほんのわずかな振動を伴ってエンジンがスタートするのだが、なんとも滑らかでストレスを感じることがほとんどない。さらに走り出してみると、今度はモーターによるアシストが効いて、アクセルの踏み込み量もほとんどいらないかのようにスルスルッと、しかし、しっかりとしたトルク感を感じながら走り出す。もちろん途中の信号待ちではアイドリングストップとなるのだが、そこからの再始動も、当然のことながらスムーズで静か。なかなかリッチな乗り味だ。

「B5」の走りは終始穏やかで、上質だ。アクセルペダルのラフな踏み込みも要らないし、市街地走行であれば大きなアクセル操作をする場面には、なかなか遭遇しない。ボルボらしいクレバーな走りができるようになるのだ。

気づかない間に気筒休止して効率アップ

ATセレクターレバーは、スウェーデンのクリスタルガラス(オレフェス)を使用。これだけで雰囲気がぐんとラグジュアリーに。
ATセレクターレバーは、スウェーデンのクリスタルガラス(オレフェス)を使用。これだけで雰囲気がぐんとラグジュアリーに。
定速走行になると2番目と3番目のシリンダーが休止する。
定速走行になると2番目と3番目のシリンダーが休止する。
すべての写真を見る >>

そして、このクルマのもうひとつの美味しさは気筒休止システムにある。大きな負荷のかからない高速走行などでは2気筒が休止して、消費燃料を抑える。この走行時にもよほど注意していない限り(別に注意する必要はありませんが……)、切り替わりの音や振動が感じられない。なんとも滑らかでスムーズなエンジンのおかげで、スタートから市街地走行、そして高速に乗ってのロングドライブなどまで、ことごとくストレスフリーなのだ。高い静粛性、振動の少なさがあるからこそ、プレミアムな味わいが実現でき、スカンジナビアンデザインのインテリアのクリーンな印象ともピタリと合うのである。

ちなみにこのシステムは、さらに大きなボディのSUV「XC90」にも搭載される。「XC60」同様、ベーシックなグレードを受け持つということになるのだが、十分にお買い得感を感じさせてくれるはず。走りもイメージもクリーンなボルボで、電動化の恩恵を感じてみては?

【ボルボ「XC60 B5 AWD インスクリプション」】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,690×1,900×1,660mm
車両重量:1,890kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:8速AT
エンジン:直列4気筒DOHCターボ1,968cc
最高出力:184kw(250PS/5,400~5,700rpm)
最大トルク:350Nm/1,800~4,800rpm
モーター最高出力:10kw(13.6PS/3,000rpm)
モーター最大トルク:40Nm/2,250rpm
価格:¥7,340,000

問い合わせ先

ボルボ

TEL:0120-922-662

この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
TAGS: