新型コロナウイルスに関する話題が徐々に減ってきたとはいえ、コロナ対策は今後もしばらく続ける必要があると予想されています。緊急事態宣言が解除された後も在宅勤務体制を継続する企業もあるように、その場しのぎではない長期的な対応が、わたしたち一人ひとりに求められているのです。

とはいえ、日常の生活や仕事のなかに新しい習慣を組み込むのは、なかなか大変。これまでに新習慣の導入に取り組んだことがあるものの、挫折してしまった経験がある方は、少なからずいらっしゃることでしょう。そんなとき「自分には根性が足りない」と落ち込んでしまうもの……。

続く人と続かない人
「新しい習慣が続くか否かは、気合や根性の問題ではなく、続けられる仕組みづくりにある」

しかし『何でも「続く人」と「続かない人」の習慣』の著者である伊藤 良さんによると、「新しい習慣が続くか否かは、気合や根性の問題ではなく、続けられる仕組みづくりにある」のだとか。仕組みづくりのコツを知っているかどうかで、その後の結果に大きな差が生まれるでしょう。

以下では、テレワークを伴う仕事の効率アップに役立つ、新習慣を身につけるときのポイントを解説していきます。ダイエットのような生活習慣にも応用できるので、これを機に過去に挫折してしまった習慣に再チャレンジするのもよさそうですね。

テレワークが多い人向け!新習慣を身につけるときのポイント5つ

■1:「ヘッドファースト」の考え方はNG

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考えすぎず、行動に移してみることで、物事が前に進みます。

在宅勤務では、職場と違って近くに仕事仲間がいないため、難しい問題にぶつかったときや判断に迷ったときに、すぐ相談できる相手がいません。また、ひとりで取り組んでいると、なんとなく気が進まない仕事や面倒な作業をあと回しにしてしまうことも……。

「コーチング業界では、よくクライアントさんに『ヘッドファーストではなく、フットファーストでいこう』と言っています」と伊藤さん。頭で考えるだけでは現実は変わりません。それよりも、まず行動に移すのが吉です。

「フットファーストは、行動ファーストと言い換えることができます。要するに、とにかく行動することだけを目標にするのです。

例えば、やらなければいけない仕事があるのに、やる気が出なくて動けない……というときは、そのタスクに取りかかる前に、すぐ終わる軽い作業から始めてみてください。どんなに簡単な作業でも、4分ほどこなすと脳に作業興奮が起きて、そのまま10分、30分~と行動できるようになるでしょう」(伊藤さん)

もし在宅勤務中に自分ひとりで解決できないことが起きたら、ひとりで抱え込むのではなく、とりあえず仕事仲間に電話をして相談しましょう。仕事の場面に限らず、このように今できることをちょっとでもやると、物事が前に進み出しますよ。

■2:明確なマイルールをつくる

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長続きの秘訣は、難易度設定にあります!

何か新しい習慣を身につけようと思っても、その場の気分次第でルールを変えてしまっては定着しません。というのも、クリアすべき基準が曖昧だと、なかなか「クリアできた」というセルフイメージをもつことができず、その行動を諦めやすくなるからです。

習慣化すると決めたマイルールは、実行する前に基準を明確にしておきましょう。

「テレワーク中は、専用のマイルールをつくっていくことが大事です。例えば、在宅勤務だといつまでも仕事をしてしまう人は『17時以降に受信したメールは、翌日に返信する』『18時になったら作業が途中であっても仕事を終える』などと、もしこうなったときはこうする、というパターンを決めましょう。

急にたくさんつくるとクリアするのが難しくなるので、最初は3つくらいから始め、徐々に増やしていくことをおすすめします。

継続するコツは、目標にゆとりを設けること。なぜならルールが厳しすぎると、ちょっとでもクリアできなければ失敗と捉えてしまい、途中で投げ出す原因になる可能性があるからです。

『自分で決めたことがきちんとできた』という意識が大事なので、実際に取り組んでみて改善点が見つかったら、臨機応変にルールを変えてみましょう」(伊藤さん)

仕事以外の生活習慣も同様に、ハードルが高すぎるルールはNG。最初のうちは難易度を低めに設定すれば、長続きしやすいはずです。

■3:「例外ルール」を事前に設定しないのはNG

マイルールを設けて取り組んでいるときに要注意なのが、イレギュラーが発生したときの対処法。もし「毎朝5kmランニングする」と決めたのに雨が降っていたら、屋外でいつものコースを走るのは難しいでしょう。そこで「雨が降っていた場合は筋トレをする」といった例外ルールを、あらかじめ設けておくのが◎。

「どれだけ上手に行動をパターン化しても、イレギュラーは必ず発生します。マイルールに縛られて余計なストレスを抱えないように、事前に『例外ルール』を設定することが大事です。

マイルールと例外ルールをつくる際は、どんな障害(イレギュラー)が起こり得るか、よく考えてみてください。このとき、自分のなかで優先順位を決めておくのがポイントです。

例えば『テレワークは18時までに終える』というマイルールの場合、仕事を優先するか、家族を優先するかによって例外ルールが異なるでしょう。家族との時間を優先するなら『保育園へ子どもを迎えに行く日は、仕事は16時まで』という例外ルールをつくれば、柔軟に対応できます」(伊藤さん)

ランニングしたいのに雨が降っている……といった外部要因のせいで、せっかく続けてきた習慣が中断されてしまうと「今日はクリアできなかった」というマイナスの影響を受けてしまいます。

マイルールをつくるときは、必ず例外ルールも用意しておくことをお忘れなく。

■4:タイマーを活用して行動にメリハリをつける

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時間を細かく設定することで、集中力につながります。

最近、多くの方が取り入れた新習慣といえる在宅勤務ですが、身の周りに気が散る要因が多いためか、なかなか仕事に集中できないこともしばしば……。そこで試していただきたいのが、タイマーを活用して集中タイムをつくる「ポモドーロ・テクニック」です。

ポモドーロ・テクニックのやり方は、25分間の集中タイムと、5分間の休憩タイムを繰り返すだけ。集中タイムと休憩タイムの時間をセットできるように、タイマーをふたつ用意しておくと、いちいち時間を設定し直す手間が省けますよ。

集中タイム25分と聞くと、ちょっと短いと感じるかもしれませんが、そこがポモドーロ・テクニックのポイント。なぜなら、作業を途中でやめておくと、再開したときにスタートダッシュをかけやすいからです。

もし実際にやってみた結果、25分だと短すぎてうまくいかないという人は、集中50分、休憩10分の周期でも構いません。

また、休憩時間中に何をやるかを決めておくことも重要なポイントです。休憩中は頭を休ませる必要があるため、メールチェックやスマホゲーム、読書などには向いていません。

私がおすすめしているのは、瞑想、ストレッチ、軽めのダンス、あえてボーッとすることの4つ。体を動かすと感情が変わるので、ストレッチとダンスはリフレッシュにぴったりですね」(伊藤さん)

集中タイム+休憩タイム=30分を1セットとして、1セット目の休憩タイムに瞑想、2セット目はストレッチ、3セット目はダンス、4セット目はボーッとする……という具合に割り当てると、午前中の4セットだけでも達成感を味わうことができるでしょう。

■5:3つのWを意識してマンネリ化防止

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マンネリを解消するために、身の回りの環境を変えてみましょう。

始めたばかりのうちは新鮮だったテレワークも、だんだん慣れてくると新鮮味がなくなり、仕事中に思わず気が緩んでしまうもの。仕事以外の生活習慣でも、慣れによって生じるマンネリズムは悩ましい問題です。だからこそ、マンネリ化を防ぐための工夫を複数用意しておきましょう。

「一定のペースで淡々と進んでいく生活リズムには、安心感が得られる一方で、同じことの繰り返しに飽きる、思考停止を招くといった注意点もあります。このようなマンネリを防止するためには、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)の『3つのW』を意識して、身の周りの環境を変えるのが効果的です。

例えば、自宅で仕事をするとき、自分のデスクではなく、リビングや庭などの普段と違う場所で作業をすると気分転換になります。

ほかにも、いつものコーヒーをワンランク上のものに変えてみる、仕事を始める時刻を30分早める、メールチェックのタイミングを朝いちばんから1時間仕事をしたあとに変更する……など、既に定着しているよいルーティンにアレンジを加えると、うまくいくでしょう」(伊藤さん)

どんなに栄養バランスの良い食事でも、毎日同じメニューだと飽きてしまうように、良い習慣も一定すぎると退屈になってきてしまいます。

たまには、いつもの作業を別の方法でやってみる、実行する順番を入れ替える、といったアレンジをしてみると、気分が変わるだけでなく、思わぬ発見があるかもしれませんね。


在宅勤務の導入によって、これまでの働き方はもちろん、生活習慣にも少なからず変化があったはず。

現実的にはそうせざるを得なかったとはいえ、これはよい新習慣を身につけるチャンスとも言えます。長期的な自己投資のつもりで、新しい習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。

伊藤 良さん
良習慣プロフェッショナルコーチ
(いとう りょう)国際コーチ連盟アソシエイト認定コーチ、GCS認定プロフェッショナルコーチなどの資格を持つ「習慣化の達人」。セミナーや読書会を主催するほか、ブログ『良習慣の力!』の運営、メルマガ『複業で自分を磨く習慣』の発行、ビジネス書の執筆など、複数の分野で活動中。http://www.ryoushuukan.com/
この記事の執筆者
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WRITING :
上原 純