環境破壊、コロナ禍…私たちが直面している今こそ、真剣に目を向けるべき「サステナブル」な取り組み。

ラグジュアリーメディア「Precious.jp」では、そんな取り組みを実践している日本のコスメブランドに焦点をあて、ヒストリーやそのブランドが生み出すこだわりの製品を紹介していく新連載をスタートします。

初回にピックアップするのは、日本のオーガニックコスメの先駆けである「アムリターラ」。

サスティナブルな姿勢でオーガニックコスメをつくり続ける「アムリターラ」

ここ数年、市場をのばしている日本生まれのオーガニックコスメ。その先駆けブランドともいえる「アムリターラ」は、2008年に誕生しました。

植物のもつパワーをフルに活用したスキンケアやポイントメイクアイテムのほかに、サプリメントや食品など、幅広い商品を取り扱えています。ちなみに「アムリターラ」の化粧品はすべて、合成界面活性剤・ナノ粒子・石油由来の化学物質・タルク・タール色素・虫由来の天然色素・合成香料・遺伝子組み換え原料を不使用としています。

「アムリターラ」が誕生するまで

九州の自社農園で自然栽培されているカモミール。
九州の自社農園で自然栽培されているカモミール。

ブランドの代表を務める勝田小百合さんは、役者を目ざし25歳で上京しましたが、昼夜逆転生活などの不摂生がたたり、パニック障害を発症。

食事療法やホリスティックの力、カイロプラクティックの施術により完治したことで、カイロプラクターを目ざすことに。同時にアメリカでオーガニックを学び帰国したご主人の影響もあり、美と健康を保つためには、ナチュラルオーガニックの食材・化粧品を使い、自然治癒力を高めることが必要だと考えるようになったのだそう。

30歳をすぎ、自分の肌や体調の変化を感じ、ナチュラルにアンチエイジングができたら…、そんな思いが勝田さんの中に膨らんでいきます。自然界のエナジーに満ちた植物のパワフルな力を生かし、ただ優しいだけではなく、外敵やエイジングにちゃんと抗うことができるオーガニックコスメブランド「アムリターラ」を設立しました。

食べものにも化粧品にも不自然な化学物質が使われている、経済優先の現代社会。農薬の使用が生態系を侵し、化学物質の影響で環境ホルモンが蔓延。つまり、真の美と健康を目ざすためには、環境問題を切り離すことができないのです。

いち早くサステナブルな取り組みを実践

近年よく耳にするようになった「サステナブルな社会」とは、「持続可能な社会」を意味します。有限な地球の中で環境への負担をできる限り減らし、人と自然が共存して、生態系を守りながら循環型の調和のある暮らしができること、そして未来の世代にその暮らしを継承し、美しい地球で平和に暮らすことができる社会づくりが不可欠なのです。

「アムリターラ」は、10年以上前の設立当初からサステナブルな姿勢を貫きながら、商品開発を行ってきました。ここで「アムリターラ」が実践しているサステナブルな取り組みをご紹介します。

「サステナブルな社会」のために実践している6つの取り組み

■1:農薬を使わない

農薬は、環境への影響はもちろん、人への影響も明らかに。脳内から入りやすく発達期の子どもの脳への影響は、深刻だと指摘されています。

また、農薬散布により驚くべきスピードで世界中からミツバチが減少。野菜やコットンなど私たちの生活に欠かせない農産物をはじめ、ほとんどの植物はミツバチによって受粉します。ミツバチがいなくなると、私たちの生活にも大きな影響が出ます。

化粧品の原料となるハーブに加え、米や大豆なども自然栽培で育てている。
化粧品の原料となるハーブに加え、米や大豆なども自然栽培で育てている。

「アムリターラ」の九州にある自社農園では、農薬を使わず自然栽培で化粧品の原料となるハーブを育成。また、農薬・化学肥料を使用せず、成分を抽出したあとの草花を肥料として畑に還す「自然環境型」の農業を行っている農園と提携することで、植物原料を調達しています。

■2:固定種・在来種の植物を使用

私たちが買っている野菜の多くが、作物の成長が早く、収穫量も安定している「F1種」。異なる品種を掛け合わせた一代交配種で、「ハイブリッド」とも呼ばれています。対して「固定種」は、親から子、子から孫へと代々同じ形質が受け継がれている種、「在来種」は固定種の一種で、その地域の気候や風土に合わせて適応してきた種をさします。

どちらも、自ら育てた作物から種子を採種しなくてはならないので、温度や湿度の管理など、とても手間がかかるうえに、サイズが不揃いで見栄えもイマイチというデメリットも。F1種の作物が多くなる中で、昔から続く固定種・在来種が急速に消滅していることに危機感を抱く「アムリターラ」では、固定種・在来種の植物を積極的に使用。

■3:真摯なものづくりをしている生産者を支援

少子高齢化に加え、地方の人口減少・過疎化によって、加速する都市と地方の格差。それにより、地域の衰退や伝統技術の担い手不足に直面し、地域の生産者たちが厳しい局面に立たされています。

「アムリターラ」では、環境に負担をかけない製法や、伝統的なものづくりを行っている地域の生産者と直接契約。また、その地域ならではの特産品や国内で希少になった原料を使用することで、地域復興につなげていきたいと考えているそう。

■4:フェアトレードの原料を使用

地球環境だけでなく、人をも犠牲にすることなく、よりよい未来につなげていくことも「サステナブルな社会」にとって大切なこと。とくに発展途上国では、低賃金労働者・児童労働・強制労働といった人権を侵害した悪影響で詐取されている労働者がいます。だれも取り残すことなく公平な社会をつくるために、適性な賃金の支払いや労働環境の整備などを通して、生産者の生活向上を目ざす仕組みを「フェアトレード」といいます。

「アムリターラ」では、フェアトレード原料を通じて、発展途上国の労働者が自らの力で貧困から脱却する支援を行っています。

■5:プラスチックの使用を減らす

ゴミとして流出したプラスチックのほとんどが最終的に行き着く場所は海。海洋汚染や生態系に影響を及ぼす海洋プラスチックゴミは、世界中で問題視されています。「アムリターラ」では、詰め替え式の容器や環境に配慮した紙のパッケージを使用し、少しでもプラスチックゴミを減らそうと心がけています。

■6:自然と調和した環境づくりを心がける

地球温暖化は世界各地に気候変動をもたらし、各国で高温や集中豪雨といった異常気象を引き起こしています。パリ協定では「産業革命後の気温上昇を2℃以内に抑える」という目標が設定され、世界では「脱炭素化」の動きが広まっていますが、日本では石炭火力発電を推進し、世界に逆行しているのが現状…。

「アムリターラハウス表参道店」では、太陽光・風力・バイオマス・地熱など自然エネルギーによって発電されたクリーン電力100%で運営。また「アムリターラ」オフィスでは、輸送に大量のエネルギーを要する外国産ではなく国内の木材を使用しています。

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この記事の執筆者
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EDIT&WRITING :
新田晃与