男はタフな道具がたまらなく好きだ。クルマの場合は、クロスカントリー性能に秀でたSUVがそれにあたる。快適性やオンロードでの直進安定性に欠けても、それを補って余りある魅力があるのだ。しかも年々SUVはオンロード志向になっていて、タフギアの象徴たるランドローバー「ディフェンダー」の新型は、悪路をしっかり走れるうえ、快適性も相当なもの。人気が出るのも当然だ。

男が「ディフェンダー」に惹かれる理由

「ディフェンダー」の始祖、「ランドローバー・シリーズI」。
「ディフェンダー」の始祖、「ランドローバー・シリーズI」。
街中での普段使いが中心で、家族を乗せることも多いなら、断然5ドア。スタイルと機能を両立させた使い方にこだわるなら3ドアがいい。
街中での普段使いが中心で、家族を乗せることも多いなら、断然5ドア。スタイルと機能を両立させた使い方にこだわるなら3ドアがいい。

ランドローバーに「ディフェンダー」というモデル名が登場したのは、今から30年前の1990年のこと。当時、ランドローバーは「レンジローバー」と「ディスカバリー」、そして「シリーズⅢ」を展開していたのだが、ブランドを明確にするため、「シリーズⅢ」の改良に合わせて「ディフェンダー」の名を与えたのだ。これによって、プレミアム部門を受け持つ「レンジローバー」、カジュアルなSUVの「ディスカバリー」、そして本格4WDの象徴としての「ディフェンダー」というキャラクターが明確になった。

「シリーズⅢ」は、1948年にローバー・モーター社がオフロード向け車両として発売した「ランドローバー・シリーズI」にはじまり、改良を加えながら進化してきた。登場以来、ワイルドな基本デザインを守りながら「道なき道を行く4WDの王者」というランドローバーのイメージを確立した、重要なモデルだった。その伝統を継いだのが、旧「ディフェンダー」なのだ。

名前が与えられた時点で、すでに半世紀あまり経過していたものの、そのクラシカルでワイルドなデザインに魅せられた信者は世界中にいた。さらに、世界一過酷なアドベンチャーレースとして知られるキャメルトロフィーでも活躍し、高い悪路走破性能を証明。2015年の12月まで生産は続けられた。

新型「ディフェンダー」が日本を含む世界中で話題となっているのは、そうした歴史があったからだ。今回もホイールベースをインチに直した数字を車名に付けるという伝統は守られ、ショートホイールベースは90(ナインティ)、ロングホイールベースは110(ワンテン)と呼ばれる。

ボディはアルミニウム製のモノコックに変更され、ランドローバー史上最もタフな構造となっているという。さらにサスペンションは前後とも独立懸架を採用するなど、すべてが最新の味付け。悪路はもとより、オンロードの乗り味も大いに期待できる。

伝統のボクシーなスタイルを現代風に解釈したところもいい。

昨年の11月からローンチエディションの先行予約が始まり、わずか4日間で初期の予約は満杯。急遽追加された特別仕様のスタートアップエディションの先行予約も人気となった。驚くべき人気を示しながら、ようやく4月9日には標準仕様の新型ディフェンダーの予約が始まり、日本でも順調にスタートした。

どのモデルがおすすめか

従来型の雰囲気を感じさせつつ、洗練されたスタイリングは、都会にも合う。
従来型の雰囲気を感じさせつつ、洗練されたスタイリングは、都会にも合う。
インテリアは激変。ラグジュアリーSUVといっても遜色ない多機能ぶりとつくりのよさを誇る。
インテリアは激変。ラグジュアリーSUVといっても遜色ない多機能ぶりとつくりのよさを誇る。

では、もっとも得意とするハードな状況での走りを存分に楽しむには3ドアショートの90にするか? 5ドアロングの110にするか? いくつかの悩ましい選択から始めなければいけない。

その前にエンジンだが、90でも110でも搭載されるエンジンは当面、300馬力の2リッター直列4気筒ガソリンターボエンジンのみ。本国には設定のあるディーゼルエンジンや400馬力の最強モデルなどの導入に関する、正式なアナウンスはまだない。

次に装備による違いだが、どちらのボディも標準、S、SE、HSE、そしてファーストエディションで分かれる。もっとも、あまり贅沢な装備を選ばなくてもディフェンダーの魅力は味わえると思う。

ではそのディフェンダーの本質な魅力とは? やはり走破性の高さを生かした軽快な走りや力強さ、扱いやすさこそがディフェンダーならではの魅力だろう。その点を重視するなら、ボディはショートがベスト。個人的に従来型時代からショートボディが好みというのもあるのだが、小回りの良さや軽快さや自在さにおいて、オフロードではショートが圧倒的に便利だ。

正直にいえば、まだロングボディの110ですらお披露目車両を見ただけであり、90などは写真でしか見ていない状況。当然、現在はまだ、どちらのボディも走らせたことはない。本来ならば試乗を済ませてからの選択でなければ行けないわけだが、ここはよりスポーティなたたずまいを見せるショートに決定である。

実際にガレージに納め、レクレーショナル・ヴィークルとして実際に使ってみたとき、お気楽さやより自在に使い倒せるツール感では、ショートボディが一歩リードするのではないだろうか。……と、考えたところでロングボディの写真を確認してみると、こちらはこちらでサイドの伸びやかなスタイルも「悪くないなぁ」という迷いが出てきた。おまけに、新型が発表されたことによって従来型の中古車相場も活況になり、専門店への問い合わせが増えているという情報も。従来型か、新型か。なんとも悩ましいクルマである。

【ランドローバー「ディフェンダー」(90・標準)】
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,853×1,995×1,969mm
車重:2,065kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:AT
直列4気筒DOHCターボ1,997cc
最高出力:221kw(300PS/5,500rpm)
最大トルク:400Nm/4,000rpm
価格:¥4,990,000(税込)

問い合わせ先

ランドローバー

TEL:0120-18-5568

この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。