特別な日や乾杯のときだけでなく、食事中に楽しむお酒としてもすっかり定着したシャンパン&スパークリングワイン。のどごしの爽やかさと、シュワッと立ち上る美しい泡は、いつだって楽しみたいもの。
本記事ではワインジャーナリスト・斉藤研一さんに知っておくと、もっと泡が楽しくなるシャンパン&スパークリングワインの知識を伺いました。
「初夏に泡を楽しむなら、飲み口のすっきりとしたキレのいいものがおすすめ。冬場は、しっかりとしたコクや深みがある華やかなものが好まれますが、爽やかな気候の初夏は、のどの渇きを潤し、余韻が軽快なものが心地よいですから」と斉藤さん。
「かつて、シャンパンやスパークリングは、パーティードリンクや食前酒として、飲みやすさや甘み、華やかさが大切とされてきました。ところが20年前くらいから、食事と一緒に楽しみたいという食中酒としての要望が増え、すっきりとした味わいの「ブリュット」と呼ばれる「辛口」タイプが多く出回るようになりました。
さらにここ数年は、ほぼゼロといっていいほど糖分を加えない、甘みを極限まで抑えた「エクストラ・ブリュット」と呼ばれる「極辛口」タイプが主軸に。ブドウの味そのものをしっかり味わってほしいというつくり手の意向、さらには昨今の健康志向も加わって、この極辛口が世界的な潮流となっています」
「また、この時期、肉料理に合わせて赤ワイン…ではちょっと重すぎるというときに、ロゼという選択もいいですね。ロゼ特有の華やかな風味は、冷しゃぶや、ハーブ、レモンなどを使った鶏や牛のグリルなど、さっぱり系の肉料理を引き立てます」
ちなみに、この時季の泡は、冷蔵庫で冷やすよりも、キンキンに冷えた氷水で冷やしたほうがキリリとした風味が際立つ、と斉藤さん。
「お好みの器に氷水を張って、ボトルの肩までしっかり浸して10分ほど。海水くらいの濃さにした塩水の氷水に浸すと時間短縮も可能です。見た目も涼しげでおすすめですよ」
知っておくと、もっと泡が楽しくなる!シャンパン&スパークリングワインQ&A
Q1:エクストラ・ブリュット、ノン・ドゼ、ブリュット・ナチュール、etc. これらの違いって?
A1:シャンパンをつくるとき、最後に糖分を加えて味を調整します。この添加作業をドザージュといいますが、糖分をほとんど加えないものを「ノン・ドゼ」「ブリュット・ナチュール」「ドザージュ・ゼロ」などと表示します。
これらは1L当たりの糖分が3g以下の「極辛口」。「エクストラ・ブリュット」は6g以下で日本語では同じく、「極辛口」表記です。
Q2:ワイン界でいう「新世界」とはなに?
A2:フランス・シャンパーニュ地方でつくられたものだけを「シャンパン」と呼ぶように、もともとワインや泡の文化はヨーロッパ発。よって、ヨーロッパ以外で、世界市場で評価を受けた産地をまとめて「新世界/ニューワールド」と呼ぶように。
1970年代のアメリカから始まって、オーストラリア、'90年代に南米や南アフリカなどが加わりました。特に今、南アフリカは注目です。ヨーロッパと赤道を挟んで南北に位置し、時差がなく季節が逆転するため、ヨーロッパの優秀な醸造技術者が自国と行き来して、いわゆる二期作を行っているためです。
Q3:「自然派シャンパン」とは?
A3:ビオロジック(有機栽培)やビオディナミ(有機栽培+天体の動きを考慮)など、農薬や化学肥料を極力使わない農法でつくられたブドウを使用したもの。「ジェローム・プレヴォー」や「ジャック・セロス」など、いいブドウを育てることにとことんこだわったつくり手が有名です。
Q4:シャンパンは、マグナムボトルのほうがおいしいって本当?
A4:シャンパンの熟成に最も適しているのがマグナム(1.5L瓶)といわれています。ボトルの容量が大きいほど熟成がゆるやかになり、容量に対してコルクとの接触面が小さいぶん、よりよい状態が保てるためです。
Q5:最近よく耳にする「アルタランガ」って?
A5:イタリアの高級スパークリングワインといえばフランチャコルタですが、近年、それと並ぶと注目されているのがアルタランガ。
ピエモンテ州南側の標高の高い山岳地帯が産地で、イタリア赤ワインの頂点、バローロやバルバレスコの名門ワイナリーが手がけるものも。規定も厳格で高品質。「コントラット」がその代表格で、締まった酸と香りが特徴です。
Q6:「カバ」の高級化が進んでいるらしい?
A6:スパークリングワインのベーシックなポジションを確立しているのがスペインの「カバ」。寒い土地で耐えて育ったブドウを使い、深みと厚みのある味わいのシャンパンに比べて、暖かい土地で育ったブドウを使うカバは、ストレートでクリスプな味わいが特徴です。
そのためカジュアルに楽しむ人が多いですが、「リョパール」など、キレのよさに加えて、厚みと深みをもたせた高級なカバに挑戦するつくり手が増えてきています。従来のカバの常識を超える味わいに、世界も注目しています。
- EDIT&WRITING :
- 田中美保、中村絵里子(Precious)