気がつけば、クルマは随分静かになった。外から聞こえるエンジン音は小さくなり、車内では外の雑音をあまり気にしなくて済む。究極の静けさを求めるなら、ハイエンドサルーンかEV(電気自動車)だ。特にEVの静けさは、その走り出しからの力強さもあって、結構ハマる。日産から登場した「キックス」はエンジンこそ積んでいるものの、その存在をあまり感じさせないという点で、EVのメリットをしっかり感じられる。魅力的なSUVだ。

日産のEVフィーリングはどんどん進化している

全長4,290mm。小さいが、存在感のあるスタイリングだ。
全長4,290mm。小さいが、存在感のあるスタイリングだ。
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ラゲッジは奥行きが90センチあり、長尺物でなければ積みやすい。
ラゲッジは奥行きが90センチあり、長尺物でなければ積みやすい。

日産から久々に新規モデルが投入された。モーターで走るSUV「キックス」だ。搭載される1.2リッター3気筒エンジンは、駆動とは完全に切り離され、完全なる発電用。これは「ノートe-POWER」と同じシステムであり、シリーズハイブリット呼ばれる形式だ。しかし、エンジンがタイヤを回すことには関わらないため、その走行フィールは完全なるEVである。

モーターは「ノートe-POWER」の109ps(80kW)より強力で129PS(95kW)あり、なかなかの加速感を見せる。

乗り出してみると最初の数分だけは充電量が足りなかったこともあり、エンジンは停車中や低速走行時も回っていた。しかし、バッテリーの充電量にゆとりが出てくると、信号待ちや低速走行時にエンジンがかかることはほとんどない。高速道路でもエンジンが回っていることをあまり気付かせることなく、静々と発電にいそしむ。

さらに「リーフ」や「ノートe-POWER」がセールスポイントとしている「ワンペダル」機能も搭載。これはアクセルペダルを離したときにモーターの回生ブレーキ(エンジンブレーキのモーター版のようなもの)を強めるもので、ペダルの踏み替えを減らすことができる。「キックス」の味つけは、それほど前につんのめるような感覚がなく、扱いやすさを感じた。

ワンペダルでカーブを曲がると、リアサスペンションを少し硬めにしたというメーカーの説明どおり、しっかりと踏ん張りの効いた感覚でクイックに駆け抜ける。モーターによる低速からトルクのある加速感と併せ、このクルマをとても軽快でスポーティなSUVに仕上げている。

よくできた空間設計のおかげで窮屈さは感じない

パネルやドアトリムの生地は高級感がある。
パネルやドアトリムの生地は高級感がある。
シートはダブルステッチ入り。試乗車はツートーンのインテリアが装備されたグレード。黒とオレンジの組み合わせだけだが、どうせなら選択肢を増やして欲しい。
シートはダブルステッチ入り。試乗車はツートーンのインテリアが装備されたグレード。黒とオレンジの組み合わせだけだが、どうせなら選択肢を増やして欲しい。
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高速道路では、本戦への合流加速でアクセルペダルを深く踏み込むため、エンジンの存在を音で感じる。ただ、それも流れに乗るまでだ。硬く感じていたサスペンションにしっとりと味が出てきて、心地の良いクルージングが続く。ホイールベースが短いため前後への揺れ、ピッチングは少々感じるものの、ロングドライブでも十分に快適な走りを楽しむことができそうだ。

試乗を終え、改めて外から「キックス」を眺める。小さな車体だが、乗っているときには前後に窮屈だったり、狭さを感じることはなかった。ラゲッジルームも奥行きが長く、荷物が積みやすい。「キックス」のパッケージングはとてもよくできている。少人数でなら、長旅も楽しいだろう。もちろん普段使いはイージーこのうえなし。完全なる電気自動車時代の到来にはまだ時間がかかりそうだが、「キックス」ならライフスタイル全般にアンテナを張るあなたの好奇心を、きっと満たしてくれる。

【日産「キックスX ツートーンインテリアエディション」】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,290×1,760×1,610mm
車両重量:1,350kg
駆動方式:2WD(前輪駆動)
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン:直列3気筒DOHC 1,198cc
最高出力:60kw(82PS/6,000rpm)
最大トルク:103Nm/3,600~5,200rpm
モーター最高出力:95kw(129PS)/4,000~8,992rpm
モーター最大トルク:260Nm/500-3,008rpm
価格:¥2,869,900(税込)

問い合わせ先

日産自動車

TEL:0120-315-232

この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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