1896年に創業した「松田和傘店」は、石川県金沢で唯一、金沢和傘をつくり続ける名店である。軽くて携帯に便利な洋傘を日常的に使う今、頑丈な竹軸を用いたずっしりと重みのある和傘が存在していること自体が、奇跡のようである。
「松田和傘店」の『助六』と『元禄蛇の目』、ずっしりとした重み
金沢和傘の美しさは、まず「用の美」にある。北陸の雪は、水気が多く重い。たいした雪でなくても、傘に降り積もれば十分な重量になる。風雪に耐えるため、丈夫な和紙を傘の生地にする。コウゾ100%で漉いた紙に、防虫防腐効果のある柿渋を塗り込み、一子相伝の配合による油をかけたのち、漆で仕上げた強靭な和紙だ。
類まれなる個性も、つくり手の配慮があるからなせるもの
傘のデザインも味わい深い。伝統的な柄を踏襲しつつ、もみじを和紙に挟んだ写真下の『助六』や、男らしい紫紺に市松模様を加えた『元禄蛇の目』などの洒落た表情が、悪天候でも憂鬱な気分にさせない。つくり手の配慮がにじみ出ている傘だ。
問い合わせ先
- 松田和傘店 TEL:076-241-2853
住所/石川県金沢市千日町7-4
営業/9:00~17:00 不定休
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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- PHOTO :
- 池田 敦(パイルドライバー)