城下町の風情が残る“飛騨の小京都”、岐阜県高山市。町なかから少し離れたビール工場の一角に、安土草多(あづちそうた)さんのガラス工房があります。ガラス作家である父・忠久氏のもとで修業した後、20代で築窯して13年。古いレンガ積みの窯を使い、成形から仕上げまで、すべての工程をひとりで行っているのです。
安土さんの技法は「型吹きガラス」。1000℃を超える高温で溶かしたガラスを棹に巻き取り、その塊に息を吹き込んでふくらませたものを、型に入れて成形します。型を使う製法をとっていますが、型から出した後で、棹を回したり揺らしたりして、形をくずすのが安土流です。
安土さんの細長いビールグラスを初めて見たとき、なぜか、すっと手に取りたくなったんです。“あ、使ってみたい”と思える心地よさと親しさがあった。シンプルなように見えて、はっきりした個性がある。女性っぽいかわいらしさと、力強さの両方がある。ひとつのグラスがいろんな表情を放つところが魅力だし、毎日ラフに使える強さも好き。実際、すごく丈夫です。ガラスシェードの照明も自宅で使っているのですが、天井や壁にうつる影がそれはもう美しくて、ガラスは影も楽しむものなんだ、と改めて思いました。
■厚みというより奥行きを感じる質感。角に丸みがあって、手に優しくなじむ形も特徴。クラック(ひびのような模様)が入ったコップは、女性の手に程よいサイズ。片口や酒器は、いわば小ぶりのピッチャー。白ワインや水を入れると、光がゆらゆらと反射して、とても魅力的。「興味がない人でも思わず心惹かれるような、“日常の美しいガラス”をつくりたい」と安土さん。
問い合わせ先
- SML/TEL:03-6809-0696
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※この情報は2016年1月1日時点のものになります。詳細はお問い合わせください。
- TEXT :
- フジヤ奈穂さん スタイリスト
- クレジット :
- 撮影/赤尾昌則 文/輪湖雅江